無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗

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6.騎士団と魔術師団

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 エクティス様とアルメリアとの話が終わり書類をまとめた私は、戻って来たフラウバッセンさんにそれを渡した。
 彼は大まかに書類に目を通した後ゆっくりと頷き笑みを浮かべて、私の作業が完了したことを示してくれる。

「ラナトゥーリ嬢、疲れてはいませんか?」
「あ、はい。大丈夫です」
「ふむ。それなら今日の内に王城内の案内を済ませておきましょうか。魔術師団の仕事の見学も兼ねてね」
「よろしくお願いします」

 フラウバッセンさんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 魔術師団は王国でもかなり有名ではあるが、正直その仕事の全容というものは私もよく知らない。
 だからそれを見せてもらえるのはありがたかった。なんというか、これからの覚悟ができるからだ。

「荷物はこちらに置いていてもらっても構いません。特に必要なものはありませんから」
「わかりました」
「さて、それではどこから行きましょうか……おっと、この時間ならまずはあそこからがいいかもしれませんね」

 フラウバッセンさんは、私に向かって笑みを浮かべた。
 それはなんというか、とても楽しそうな笑みである。
 つまりこれから行く場所は、少なくとも彼にとっては楽しい場所ということなのだろう。しかしながら、この王城にそのような場所があるのだろうか。それは少々疑問である。

「ラナトゥーリ嬢は、この王城で働く魔術師団に並ぶ組織をご存知ですか?」
「……騎士団のことですか?」
「ええ、そうです。まあ、知らない訳がありませんよね」

 フラウバッセンさんは意気揚々と歩きながら、そのようなことを言ってきた。
 騎士団といえば、魔術師団と並ぶ王国の要である。それを知らないものなんてまずいないだろう。
 それを今語るということは、これから行く場所は騎士団に関連する場所ということになるはずだ。しかしどうして魔術師団の団長である彼が、それを嬉々として語っているのだろうか。

「実の所、私は幼い頃は騎士に憧れていたのです。鉄の剣で怪物をなぎ倒す。それがなんともかっこいいと思っていました。ああ、いえ、かっこいいと思っているのは今でも変わっていませんが……」
「そうなんですか……では、何故魔術師に?」
「生憎剣の才能がからっきしでしてね……一方で、魔法の才能には秀でていたものですから、そちらの道に進んだのです」

 魔法学の権威である彼が、まさか騎士に憧れていたなんて驚きだ。
 基本的に、私は騎士団と魔術師団の折り合いはよくないと聞いている。何かと張り合うことも多いといわれていたが、そうでもないのだろうか。

「まあ、結果的にこちらの道に進んだのは正解でした。魔法を極めるのも楽しかったですし、騎士団の中に入るよりもそれを外から眺める方が楽しいということもなんとなくわかってきましたから」
「騎士団は、かなり過酷だと聞きますが……」
「ええ、過酷だと思いますよ。我々魔術師は個々の我が強いですが、騎士団は組織としての規律を重んじますからね。自由と統率といった所ですか」
「自由と統率、正反対なのですね……」
「ええ、だから折り合いも悪かったのですよ。でも今は少しだけ改善しています。まあ、魔術師団のトップが騎士団のファンですからね。少なくとも表立ってバチバチすることはなくなりました」

 フラウバッセンさんさんは、そこで足を止めた。目的地に着いたということなのだろう。
 それは目の前の光景からも理解することができた。そこでは騎士達が訓練をしている。つまりここは、修練場のような場所なのだろう。

「ここは騎士団の修練場です。騎士達が己を磨く場なので基本的にはラナトゥーリ嬢は用がないかもしれませんね」
「用がない、ですか……」

 そんな場所を一番に紹介したのかという言葉を、私はなんとか飲み込んだ。
 色々と好みは入っているが、確かに目の前で行われている訓練はかなり見事なものではある。剣と剣をぶつけ合い己を磨くその様はかっこいいと思う。それにフラウバッセンさんは、心酔しているということなのだろう。

「ただ、この時間にここに彼が来ているということは覚えておいた方がいいと思います」
「彼……?」
「ええ、まあ重鎮の動きは把握しておいた方がいいでしょう」
「ああ……」

 フラウバッセンさんが何故私をここに連れてきたのか、それがやっと理解できた。
 修練場の中にいる一人の男性は、この国において特別な立場にある人物だ。
 その名前は、ウェルド・ラーバイン。つい最近騎士団長に任命されたラーバイン王国の第二王子である。
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