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8.独身の王子
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「ああ、そうでした。ラナトゥーリ嬢、あなたのことは弟から聞いていますよ」
「エクティス様から?」
「ええ、あなたは魔法学園でも有名な方だったそうですね」
「有名……まあ、成績は良かったですから」
そこでウェルド様は、再び私に視線を向けてきた。
エクティス様が私のことを彼に話していたとは正直意外である。クラスメイトであったが、彼とは親交があまりなかった。そのためわざわざ私のことを兄に話すなんて驚きだ。
ただ考えてみれば、私の話が出るのはおかしくないのかもしれない。成績などが優秀だったため、話の種には人よりもなりやすかっただろうし。
「その優れた知識と技術をこの国のために使っていただけるなら、私としては嬉しい限りです」
「あ、はい。そのつもりです」
「ありがとうございます。王族の端くれとして感謝致します」
ウェルド様は屈強な体つきをした男性であるのだが、性格としては謙虚で真面目といった感じである。
それに少しだけ卑屈なような気もした。まあそれは、親の七光りで騎士団長になったという引け目から来ているのだろうが。
「まあ、私は騎士団長という地位ですから、魔術師団のあなたと関わる機会はそれ程ないかもしれません。しかしながら応援しています。色々と大変でしょうが、どうか頑張ってください」
「ありがとうございます、ウェルド様」
ウェルド様の穏やかながら力強い言葉に、私はゆっくりと頷いた。
お世辞の類ではあるのだが、その言葉は嬉しかった。そういう風に誰かに背中を押されるというのは、思えば今まであまりなかった経験だ。
つまらない学園生活だと思っていたが、こうしてみると案外悪くなかったようにも思える。あそこで頑張った結果、魔術師団の本拠地で働けることになったのだから。
「ああ、ラナトゥーリ嬢、ウェルド殿下のことで一つだけ言っておくべきことがあるのですが……」
「あ、はい。なんですか?」
私がそんなことを考えていると、フラウバッセンさんが少々気まずそうにしながらそのようなことを言ってきた。
恐らく、あまりいい内容の話ではないのだろう。双方の態度からそれは読み取れる。
「……平たく言ってしまえばですね、殿下はまだ独身であり、それ所か婚約者すらいないのです」
「ああ、そういえばそういった類の話は聞いたことがありませんね……」
「ラナトゥーリ嬢は、ウェルリグル侯爵家のご令嬢です。つまり……」
「……フラウバッセンさん、それ以上はやめていただきたい。それは私にとって、非常に繊細な問題です」
「む……」
ウェルド様は、フラウバッセンさんの言葉を止めた。
だが、既に彼が何を言いたかったかはわかっている。要するに、私とウェルド様が結婚するのはどうかと言いたかったのだろう。
実際の所、それはどうなのだろうか。地位としては問題ない。侯爵家の令嬢としては、願ってもないことだ。
個人としては、正直わからない。なぜなら私は、ウェルド様のことをそこまで知っている訳ではないからだ。
「ウェルド様、正直に申し上げますが、あなたもそろそろ実を固める決意を固めてお父上を安心させるべきではありませんか? 弟であるエクティス殿下は、既に妻を迎え入れる準備をしているのですよ?」
「もちろん、これが何かしらの縁であるという可能性はあるかもしれません。しかしながら、そのように勝手に話を進めないでいただきたい。確かに弟に先を越されたのは事実ですが、それを理由に今すぐに身を固めるというのは無理な話です」
魔術師団長と騎士団長は、そのように言い争いを始めてしまった。
ただこれに関しては、忠臣と第二王子との会話のようなものなので、二つの団の仲が悪いということにはならないだろう。
基本的には良好な関係である。今の魔術師団と騎士団の関係性は、概ねいいものであると考えていいだろう。
「エクティス様から?」
「ええ、あなたは魔法学園でも有名な方だったそうですね」
「有名……まあ、成績は良かったですから」
そこでウェルド様は、再び私に視線を向けてきた。
エクティス様が私のことを彼に話していたとは正直意外である。クラスメイトであったが、彼とは親交があまりなかった。そのためわざわざ私のことを兄に話すなんて驚きだ。
ただ考えてみれば、私の話が出るのはおかしくないのかもしれない。成績などが優秀だったため、話の種には人よりもなりやすかっただろうし。
「その優れた知識と技術をこの国のために使っていただけるなら、私としては嬉しい限りです」
「あ、はい。そのつもりです」
「ありがとうございます。王族の端くれとして感謝致します」
ウェルド様は屈強な体つきをした男性であるのだが、性格としては謙虚で真面目といった感じである。
それに少しだけ卑屈なような気もした。まあそれは、親の七光りで騎士団長になったという引け目から来ているのだろうが。
「まあ、私は騎士団長という地位ですから、魔術師団のあなたと関わる機会はそれ程ないかもしれません。しかしながら応援しています。色々と大変でしょうが、どうか頑張ってください」
「ありがとうございます、ウェルド様」
ウェルド様の穏やかながら力強い言葉に、私はゆっくりと頷いた。
お世辞の類ではあるのだが、その言葉は嬉しかった。そういう風に誰かに背中を押されるというのは、思えば今まであまりなかった経験だ。
つまらない学園生活だと思っていたが、こうしてみると案外悪くなかったようにも思える。あそこで頑張った結果、魔術師団の本拠地で働けることになったのだから。
「ああ、ラナトゥーリ嬢、ウェルド殿下のことで一つだけ言っておくべきことがあるのですが……」
「あ、はい。なんですか?」
私がそんなことを考えていると、フラウバッセンさんが少々気まずそうにしながらそのようなことを言ってきた。
恐らく、あまりいい内容の話ではないのだろう。双方の態度からそれは読み取れる。
「……平たく言ってしまえばですね、殿下はまだ独身であり、それ所か婚約者すらいないのです」
「ああ、そういえばそういった類の話は聞いたことがありませんね……」
「ラナトゥーリ嬢は、ウェルリグル侯爵家のご令嬢です。つまり……」
「……フラウバッセンさん、それ以上はやめていただきたい。それは私にとって、非常に繊細な問題です」
「む……」
ウェルド様は、フラウバッセンさんの言葉を止めた。
だが、既に彼が何を言いたかったかはわかっている。要するに、私とウェルド様が結婚するのはどうかと言いたかったのだろう。
実際の所、それはどうなのだろうか。地位としては問題ない。侯爵家の令嬢としては、願ってもないことだ。
個人としては、正直わからない。なぜなら私は、ウェルド様のことをそこまで知っている訳ではないからだ。
「ウェルド様、正直に申し上げますが、あなたもそろそろ実を固める決意を固めてお父上を安心させるべきではありませんか? 弟であるエクティス殿下は、既に妻を迎え入れる準備をしているのですよ?」
「もちろん、これが何かしらの縁であるという可能性はあるかもしれません。しかしながら、そのように勝手に話を進めないでいただきたい。確かに弟に先を越されたのは事実ですが、それを理由に今すぐに身を固めるというのは無理な話です」
魔術師団長と騎士団長は、そのように言い争いを始めてしまった。
ただこれに関しては、忠臣と第二王子との会話のようなものなので、二つの団の仲が悪いということにはならないだろう。
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