「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。

木山楽斗

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2.認めない者達

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「あなたが聖女なんて、信じられないわ」
「ええ、まったくです。どうしてあなたみたいな平民が聖女に選ばれるのですか?」

 前聖女であるルナメリア様の鶴の一声によって、私は次の聖女に選ばれた。
 それは本来であれば、喜ばしいことである。しかし、とても喜べるような状況ではない。私は、他の聖女候補に詰め寄られているのだ。
 彼女達は、今回の結果に納得していないらしい。その理由は、私が平民だからだ。彼女達も当然、貴族が選ばれると思っていたのだろう。

「何か不正を働いたのでしょう?」
「不正なんて、そんな……」
「普通に考えれば、あなたが聖女になるなんてあり得ません」
「いえ、私は……」

 令嬢達の言葉に、私はゆっくりと首を振った。
 平民である私が、不正なんて働ける訳がない。冷静に考えれば、それは簡単にわかりそうなものだ。いやこれは、意図的に言っていることなのだろうか。

 彼女達は私を追い詰めて、聖女を辞退させようとしているのかもしれない。
 もしくは、憂さ晴らしだろうか。どの道、まともに会話に応じてくれるとは思えない。
 できればここから逃げ出したい所だ。しかし、出入り口は塞がれている。強引に抜け出せない訳でもないが、今後のことを考えるとそれはやめておいた方がいいだろう。

「……みっともない」
「え?」

 色々と考えていると、辺りに声が響いた。
 聞こえてきた方向を見ると、そこには一人の令嬢がいる。彼女も、聖女の候補の一人だ。それも次期聖女筆頭と言われていた。
 彼女の名前は、ルナーラ・ドルメア公爵令嬢。前聖女ルナメリア様のご息女である。

「自分達の実力を棚に上げて、彼女を侮辱するなど誇りはないのですか?」
「ル、ルナーラ嬢、別に私達は……」
「あ、あなたは悔しくないのですか?」
「私は、自らの全力を持って聖女の選考に臨みました。その結果、フェルーナに敵わなかっただけのこと。お母様――いいえ、前聖女ルナメリア様の判断は何も間違っていません。聖女というのは、この国では珍しく実力で決まるものなのですから」

 ルナーラ様は、皮肉めいたことを言いながら二人の令嬢に軽蔑するような視線を向けていた。
 彼女の言葉により、私は初めて貴族の誇りというものを理解した。目の前の二人とルナーラ様は持って生まれたものが違うのかもしれない。私の頭には、そのような考えが過っていた。

「わ、私達は……」
「今すぐに、私の前から去りなさい。これ以上あなた達の顔は見たくありません」
「ひっ……!」

 ルナーラ様の言葉に、令嬢達は慌てた様子で逃げ出した。
 その様に、私は安心する。ずっと緊張していたためか、肩の力が一気に抜けていた。
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