「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。

木山楽斗

文字の大きさ
3 / 48

3.できないこと

しおりを挟む
「災難でしたね。大丈夫ですか?」
「あ、ええ、お陰様で。助けていただきありがとうございます、ルナーラ様」
「私は当然のことをしたまでです。ああいう輩は気に食わない」

 ルナーラ様は、ドアの方を見つめていた。
 二人の令嬢は、既にいなくなっている。多分、あのまま帰ったのだろう。また問い詰められることはなさそうだ。

「とはいえ、私の助けなんてなくても、あなたはあの場を切り抜けられたのでしょうけれどね」
「え? そ、そうでしょうか?」
「あなたの魔法使いとしての力は、頭一つ抜けている。それは誰もが、わかっていることでしょう。あの二人くらい、指一本でも動かせれば消し炭にできたはずです」

 そこで私は、少し面食らってしまった。
 ルナーラ様が言っていることが、あまりにも物騒だったからだ。
 そもそもそんなことは流石にできないし、仮にできたとしてもやる訳がない。色々と問題があり過ぎる。

「まあ、そんなことはしませんよ。流石に冗談です」
「じょ、冗談でしたか……」
「もっとも、あなたがその気になれば、本当にこの国一つくらいは滅ぼせるのでしょうけれどね」
「いえ、そんなことは無理ですよ」

 ルナーラ様は、私の力を過信しているようだった。
 確かに私は、この国でも有数の魔法使いではあるだろうが、一国を覆せる程ではないだろう。多勢に無勢で勝てる程、私は自分の力に自信を持つことはできない。

「ルナメリア様やルナーラ様もいる訳ですし……」
「母はともかく、私などは大したことはありません。あなたの足元にも及ばない」
「ルナーラ様は他の方よりも優れた魔法使いでした。私にはそれがわかります」

 聖女の最終選考まで残ったのは、五人である。その中でも、私が頭一つ抜けていたのは、紛れもない事実である。
 ただ、ルナーラ様とその他の候補者との間にもかなりの差はあったと思う。そこにも大きな壁があるのだ。

「まあ、褒めていただけるのは嬉しく思います。しかし私も、結局の所敗者でしかありません。これからのあなたの活躍をご期待しますよ」
「あっ……待ってください」

 ルナーラ様は、私に背を向けた。
 私の言葉が不快だったのだろうか。上から目線は良くなかったのかもしれない。
 ただ、私は彼女を引き止めなければならなかった。一つだけ、聞いておきたいことがあったからだ。他に誰に聞いていいのかもわからないし、とりあえず友好的な彼女に尋ねておきたい。

「どうかしましたか?」
「えっと、王都に安い宿などはありますか?」
「安い宿?」
「一週間後に王城に来るように言われたのですが、故郷の村は遠いですから、泊まる所を探しているんです。恥ずかしながら、そこまで持ち合わせてもいないので、安い宿などはないかと思いまして」

 このようなことを聞くのは、正直恥ずかしいものである。
 しかしこれは、聞いておかなければならないことだ。流石に故郷に帰ってもう一度来るなんてことはできないし。

「……その旨は、他に誰かに伝えましたか?」
「え? ええ、メイドさんとかに聞いてみましたが」
「まさか……」

 そこでルナーラ様は、その目を丸めていた。
 何か驚くようなことが、あるのだろうか。私は思わず、首を傾げるのだった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

わたくしを追い出した王太子殿下が、一年後に謝罪に来ました

柚木ゆず
ファンタジー
 より優秀な力を持つ聖女が現れたことによってお払い箱と言われ、その結果すべてを失ってしまった元聖女アンブル。そんな彼女は古い友人である男爵令息ドファールに救われ隣国で幸せに暮らしていたのですが、ある日突然祖国の王太子ザルースが――アンブルを邪険にした人間のひとりが、アンブルの目の前に現れたのでした。 「アンブル、あの時は本当にすまなかった。謝罪とお詫びをさせて欲しいんだ」 現在体調の影響でしっかりとしたお礼(お返事)ができないため、最新の投稿作以外の感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】

小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」  私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。  退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?  案の定、シャノーラはよく理解していなかった。  聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる
ファンタジー
公爵令嬢フランチェスカは、誕生日に婚約破棄された。 「王太子様、理由をお聞かせくださいませ」 理由はフランチェスカの先見(さきみ)の力だった。 どうやら王太子は先見の力を『魔の物』と契約したからだと思っている。 何とか信用を取り戻そうとするも、なんと王太子はフランチェスカの処刑を決定する。 両親にその報を受け、その日のうちに国を脱出する事になってしまった。 しかし当てもなく国を出たため、何をするかも決まっていない。 「丁度いいですわね、冒険者になる事としましょう」

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...