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35.予期せぬ再会
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「ラベルグ様、下ります。しっかり掴まっていてください」
「ああ、もちろんだ」
私は、ゆっくりと馬車の側まで下降した。
するとまず気付いたのは、臭いだ。焦げ臭い臭いが、辺りには広がっている。
何かが燃えた、もしくは燃えていることはわかった。ただ状況からして、それは魔法によって起こった火であるだろう。そうでなければ、燃え広がっていなければおかしいからだ。
「フェルーナ、あなたは少し下がっていてくれ。俺が開ける」
「……私の方が安全ですよ?」
「精神面の問題だ」
「――わかりました」
馬車の戸に手をかけながら、ラベルグ様は的確に中を見る危険性を伝えてきた。
私と彼とでは、踏んできた場数が違う。有事の際に重要なのは、冷静でいることだろう。中を見た私が、そうできるかはわからない。
「……あなたは」
「……お兄様?」
そんなことを考えていると、馬車の中から聞き覚えがある声が聞こえてきた。
これは、ルナーラ様の声だ。それがすぐにわかって、私は疑問を覚えた。何故彼女が、ここにいるのだろうか。この馬車に乗っているのは、ニルーア様であるはずなのに。
程なくして、馬車の中からルナーラ様が下りてきた。ラベルグ様は、まだ馬車の中を見ている。そこには一体何があるのだろうか。それはあまり、想像しない方がいいことなのかもしれない。
「フェルーナ、あなたも来ていたのですね」
「え、ええ、ルナーラ様、一体何を……」
「この国に蔓延っている悪しき意思の根源を取り除きに来たのです。もうことは終わりました」
「そうですか……」
ルナーラ様の言葉によって、私は中に何があるかを理解した。
どうやらニルーア様の干渉に備える必要は、もうないようだ。状況から考えて、他の王族からの干渉もないだろう。
「……ルナーラ様、はっきりと言ってこれは問題ですよ? 色々なことに対して、対策が必要なことです」
「その点に関してはご心配なく、お母様が協力してくれていますから」
「ルナメリア様が、ですか? なるほど、それは安心できる情報ではありますが……」
「ええ、私が王位を継ぎます」
「王位を……そうですか」
ルナーラ様は、ラベルグ様に対して割と衝撃的なことを言っていた。
ただ、彼の方はあまり驚いていない。ある程度予想していたことだったということだろうか。
実の所、それは私も同じだ。ニルーア様達王族が上に立っている限り、この国に未来などはない。この国の未来を真に案じているルナーラ様が、そのような決断をするのは必然といえるだろう。
「ああ、もちろんだ」
私は、ゆっくりと馬車の側まで下降した。
するとまず気付いたのは、臭いだ。焦げ臭い臭いが、辺りには広がっている。
何かが燃えた、もしくは燃えていることはわかった。ただ状況からして、それは魔法によって起こった火であるだろう。そうでなければ、燃え広がっていなければおかしいからだ。
「フェルーナ、あなたは少し下がっていてくれ。俺が開ける」
「……私の方が安全ですよ?」
「精神面の問題だ」
「――わかりました」
馬車の戸に手をかけながら、ラベルグ様は的確に中を見る危険性を伝えてきた。
私と彼とでは、踏んできた場数が違う。有事の際に重要なのは、冷静でいることだろう。中を見た私が、そうできるかはわからない。
「……あなたは」
「……お兄様?」
そんなことを考えていると、馬車の中から聞き覚えがある声が聞こえてきた。
これは、ルナーラ様の声だ。それがすぐにわかって、私は疑問を覚えた。何故彼女が、ここにいるのだろうか。この馬車に乗っているのは、ニルーア様であるはずなのに。
程なくして、馬車の中からルナーラ様が下りてきた。ラベルグ様は、まだ馬車の中を見ている。そこには一体何があるのだろうか。それはあまり、想像しない方がいいことなのかもしれない。
「フェルーナ、あなたも来ていたのですね」
「え、ええ、ルナーラ様、一体何を……」
「この国に蔓延っている悪しき意思の根源を取り除きに来たのです。もうことは終わりました」
「そうですか……」
ルナーラ様の言葉によって、私は中に何があるかを理解した。
どうやらニルーア様の干渉に備える必要は、もうないようだ。状況から考えて、他の王族からの干渉もないだろう。
「……ルナーラ様、はっきりと言ってこれは問題ですよ? 色々なことに対して、対策が必要なことです」
「その点に関してはご心配なく、お母様が協力してくれていますから」
「ルナメリア様が、ですか? なるほど、それは安心できる情報ではありますが……」
「ええ、私が王位を継ぎます」
「王位を……そうですか」
ルナーラ様は、ラベルグ様に対して割と衝撃的なことを言っていた。
ただ、彼の方はあまり驚いていない。ある程度予想していたことだったということだろうか。
実の所、それは私も同じだ。ニルーア様達王族が上に立っている限り、この国に未来などはない。この国の未来を真に案じているルナーラ様が、そのような決断をするのは必然といえるだろう。
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