身分違いの恋に燃えていると婚約破棄したではありませんか。没落したから助けて欲しいなんて言わないでください。

木山楽斗

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3.無駄な説得

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『身分違いの恋がしたい。そう思うのは勝手ですが、問題は正しく理解しておかなければならないと思います。まず貴族ではない人を妻に迎えると反感を買います。周囲の貴族からはもちろん、領地の者達も快く思わないでしょう。よりにもよって、相手が農民であるというなら猶更です。私個人としては、彼らを蔑ろにするような者達は快く思いませんが、世間の風潮としては、そうだと思います。お金持ちの商人なら、まだある程度体裁は保てたかもしれませんが……』

 ランドラ様の浅はかな考えを聞いた私は、そのように反論を口にした。
 それは彼のためというよりも、アルガール侯爵のためだったといえるかもしれない。彼を止めなければ、侯爵が悲しむ。そういう考えが頭の中には確かにあった。

『ふむ……別にどれだけの困難が待ち受けていようとも構わない。彼女となら乗り越えられるはずだ』
『そのルーフィアという女性のためにもならないかもしれません。あなたは、平和に暮らしている農民を貴族の世界に引き入れようとしているのです。彼女は恐らく理解していないでしょう。貴族の世界の厳しさを……』
『貧しい生活から抜け出せるのだ。それがどうして彼女のためにならないのだ?』
『ただ、抜け出せるだけなら幸福かもしれません。ですが、彼女は先程言ったように反感を買うのです。強い女性であるなら、それも乗り越えられるかもしれません。でも、きっと嫌がらせや悪評は非常に大きなものにあると思います。彼女にとって、酷な毎日になるかもしれません』
『それは、僕が支えよう』

 ランドラ様は、ことの大きさをまったく理解していない様子だった。
 改めて考えてみれば、彼は既にアルガール侯爵からその程度のことは聞いていたのかもしれない。
 なんとなく、彼には私の言葉が耳に入っていないような印象を受けた。もしかしたら、私が述べたことは彼の中では既に結論が出ていた事柄だったのかもしれない。

『話になりませんね……』
『……一つ聞いてもいいか?』
『はい? なんでしょうか?』
『君は、そんなに僕との婚約を破棄したくないのか? 今までそういう素振りはなかったが、もしかして君は僕に好意を抱いているのだろうか?』
『……なんですって?』

 長い話の末に、ランドラ様が出した結論はそのようなものだった。
 私が必死に止めているのは、自分を愛しているから。それは、なんとも自惚れた結論であった。

『あなたは、どうしてそんな風にしか考えられないのですか?』
『うむ? それは、どういうことだ?』
『もういいです。どうやら、あなたには何を言っても無駄なようですから……』

 結局、私は諦めることになった。
 何を言っても、彼は聞き入れてくれない。その段階で、それが理解できたからだ。
 恋は盲目、そんな言葉を思い出した。今のランドラ様は、正にそういった状態なのだろう。
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