5 / 46
5.報告と疑念
しおりを挟む
「なるほど、そんなことがあったのか……」
「ええ……」
オンラルト侯爵家に帰って来た私は、お父様にアルガール侯爵家であったことを伝えた。
お父様は、悲しそうな表情をしている。それは恐らく、アルガール侯爵のことを考えているからだろう。
二人は親友である。その親友がもう長くはない。それは、お父様にとっては悲しいことであるはずだ。
「ふむ……まあ、婚約破棄に関しては、実の所既に手紙が届いていた。お前がここを出てから、すぐのことだった。丁度、入れ違いになったようだな」
「ああ、アルガール侯爵はランドラ様の事情を知っていた訳ですし、そうなりますか」
「当然私も驚いたが、結局ランドラ君が意見を変えないというなら、もう仕方ないと思うしかないだろう。彼とのことは忘れて、次のことを考えるか」
お父様は、既に侯爵の顔に戻っていた。
悲しむのはやめて、現状の問題に対処するつもりなのだろう。
「アルガール侯爵から提案されたラーゼル公爵家との縁談はどうでしょうか?」
「ふむ……無論、もしも婚約することができればありがたい話ではある。とはいえ、バルギードという人物が気難しい人物であるというのは、中々気になる情報だ。婚約が決まらず公爵が悩んでいるというなら、それはつまり彼が断っているということになる。問題がある人物なのではないか?」
「確かに情報だけならそう考えることもできると思います。ですが、これを提案したのはアルガール侯爵ですから、それ程問題はないのではありませんか?」
「まあ、彼は信頼できる人物ではある。ただ、彼がどこまでバルギードのことを知っているかはわからない」
「まあ、それはそうですね……」
お父様は、バルギード様のことが気になっているようだ。
それは当たり前のことだろう。話の内容だけ聞くと、彼は結構危ない人物のように思える。
「お父様も、何度か会ったことはありますよね」
「外面は悪くなかったと記憶している。丁寧な対応をしていたような気がする。だが、それは表面上のことかもしれない」
「……結局の所、会ってみなければわからないということではないでしょうか?」
「ふむ……」
お父様は、それなりに悩んでいた。
怪しい公爵令息と私が会うことを心配しているのだろう。
実際、バルギード様はどのような人なのだろうか。婚約が中々決まらない。そこには一体どのような理由があるというのだろうか。
「まあ、あまり心配しなくてもいいと思いますよ。流石に、表立って何かするような人であるなら、噂くらいにはなっているでしょうし」
「そうだといいのだが……」
「とにかく、私は彼に会ってみようと思います。どの道、それ以外にやることがあるという訳でもありませんし」
「……仕方ないか」
結局、お父様は私の言葉にゆっくりと頷いた。
立派な貴族ではあるが、娘にはそれなりに甘い。そんなお父様の優しさに、私は思わず笑みを浮かべるのだった。
「ええ……」
オンラルト侯爵家に帰って来た私は、お父様にアルガール侯爵家であったことを伝えた。
お父様は、悲しそうな表情をしている。それは恐らく、アルガール侯爵のことを考えているからだろう。
二人は親友である。その親友がもう長くはない。それは、お父様にとっては悲しいことであるはずだ。
「ふむ……まあ、婚約破棄に関しては、実の所既に手紙が届いていた。お前がここを出てから、すぐのことだった。丁度、入れ違いになったようだな」
「ああ、アルガール侯爵はランドラ様の事情を知っていた訳ですし、そうなりますか」
「当然私も驚いたが、結局ランドラ君が意見を変えないというなら、もう仕方ないと思うしかないだろう。彼とのことは忘れて、次のことを考えるか」
お父様は、既に侯爵の顔に戻っていた。
悲しむのはやめて、現状の問題に対処するつもりなのだろう。
「アルガール侯爵から提案されたラーゼル公爵家との縁談はどうでしょうか?」
「ふむ……無論、もしも婚約することができればありがたい話ではある。とはいえ、バルギードという人物が気難しい人物であるというのは、中々気になる情報だ。婚約が決まらず公爵が悩んでいるというなら、それはつまり彼が断っているということになる。問題がある人物なのではないか?」
「確かに情報だけならそう考えることもできると思います。ですが、これを提案したのはアルガール侯爵ですから、それ程問題はないのではありませんか?」
「まあ、彼は信頼できる人物ではある。ただ、彼がどこまでバルギードのことを知っているかはわからない」
「まあ、それはそうですね……」
お父様は、バルギード様のことが気になっているようだ。
それは当たり前のことだろう。話の内容だけ聞くと、彼は結構危ない人物のように思える。
「お父様も、何度か会ったことはありますよね」
「外面は悪くなかったと記憶している。丁寧な対応をしていたような気がする。だが、それは表面上のことかもしれない」
「……結局の所、会ってみなければわからないということではないでしょうか?」
「ふむ……」
お父様は、それなりに悩んでいた。
怪しい公爵令息と私が会うことを心配しているのだろう。
実際、バルギード様はどのような人なのだろうか。婚約が中々決まらない。そこには一体どのような理由があるというのだろうか。
「まあ、あまり心配しなくてもいいと思いますよ。流石に、表立って何かするような人であるなら、噂くらいにはなっているでしょうし」
「そうだといいのだが……」
「とにかく、私は彼に会ってみようと思います。どの道、それ以外にやることがあるという訳でもありませんし」
「……仕方ないか」
結局、お父様は私の言葉にゆっくりと頷いた。
立派な貴族ではあるが、娘にはそれなりに甘い。そんなお父様の優しさに、私は思わず笑みを浮かべるのだった。
9
あなたにおすすめの小説
妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った
ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。
昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。
しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。
両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。
「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」
父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた
ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。
だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
婚約破棄させたいですか? いやいや、私は愛されていますので、無理ですね。
百谷シカ
恋愛
私はリュシアン伯爵令嬢ヴィクトリヤ・ブリノヴァ。
半年前にエクトル伯爵令息ウスターシュ・マラチエと婚約した。
のだけど、ちょっと問題が……
「まあまあ、ヴィクトリヤ! 黄色のドレスなんて着るの!?」
「おかしいわよね、お母様!」
「黄色なんて駄目よ。ドレスはやっぱり菫色!」
「本当にこんな変わった方が婚約者なんて、ウスターシュもがっかりね!」
という具合に、めんどくさい家族が。
「本当にすまない、ヴィクトリヤ。君に迷惑はかけないように言うよ」
「よく、言い聞かせてね」
私たちは気が合うし、仲もいいんだけど……
「ウスターシュを洗脳したわね! 絶対に結婚はさせないわよ!!」
この婚約、どうなっちゃうの?
お前との婚約は、ここで破棄する!
ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」
華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。
一瞬の静寂の後、会場がどよめく。
私は心の中でため息をついた。
【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません
すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」
他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。
今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。
「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」
貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。
王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。
あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!
婚約破棄されてすぐに新しい婚約者ができたけど、元婚約者が反対してきます
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私ミレッサは、婚約者のウルクに罪を捏造されて婚約破棄を言い渡されてしまう。
私が無実だと友人のカインがその場で説明して――カインが私の新しい婚約者になっていた。
すぐに新しい婚約者ができたけど、元婚約者ウルクは反対してくる。
元婚約者が何を言っても、私には何も関係がなかった。
婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~
ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された
「理由はどういったことなのでしょうか?」
「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」
悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる
それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。
腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる