44 / 46
44.適切な人物
しおりを挟む
「……さて、アルガール侯爵から頂いていた遺産は、勝手ながらランドラ様の借金の返済に使わせていただきました。これは、あなたとお腹の子を守るためには必要な措置ですので、どうかご了承ください」
「いえ、感謝の気持ちしかありません。本当に、ありがとうございました」
「それでですね。実は預かっていたお金が少しだけ残ったのです。今日は、それをあなたにお渡ししたいと思い、ここまでやって来たのです」
「そ、そうでしたか……」
私の言葉に、ルーフィアは驚いたような表情をした。
しかし、その表情はすぐに険しいものになる。
「……ですが頂けません。もしも私に渡していただけるというなら、私はそれをあなた様にお返ししたいと思っています」
「……それは、どうしてですか?」
「私はご迷惑をおかけしました。あなたにも、アルガール侯爵様にも……だから、そのお金をいただく権利が私にはないと思うのです」
「なるほど……」
ルーフィアは、とても真面目な女性であるようだ。
いや、真面目な女性になったと言った方が正しいだろうか。ランドラ様の一件が、彼女を成長させたように私には思える。
「……時にルーフィアさん、あなたにはご家族はいらっしゃいますか?」
「……いえ、両親は少し前に亡くなりました」
「そうですか……あなたは、この辺りでは上手くやっていけていますか?」
「……色々とありましたから」
「そうでしょうね……」
ルーフィアは、貴族と結婚してその貴族を没落させて帰って来た。
そんな彼女に対する風当たりは、当然強いだろう。もしかしたら、村の人々の手を借りられていないかもしれない。
そんな中で生きていくために必要なのは、お金であるだろう。あまり好きな考え方ではないが、やはりお金は色々なことを解決してくれるものである。
「ならば、こうしましょうか。私はあなたではなく、その子にお金を渡します」
「……え?」
「ランドラ様にもあなたにも、悪い点はありました。ですが、その子に非はありません。そして、その子はアルガール侯爵の正当なるお孫さんです。私が預かっているものを渡す相手として、これ以上適切な人はいないと思います」
「それは……」
「その子のためにも、どうか遺産を使ってください。その子の未来を守るために、手段を選ぶ必要なんて、ないじゃありませんか」
「……わかりました」
ルーフィアは、私の言葉にしっかりと頷いた。
彼女の表情は、今までとは違う。今の彼女は母親なのだろう。それがとてもよく理解できた。
「……もしも、何か困ったことがあったら私の父を頼ってください」
「いえ、それは……」
「父はアルガール侯爵と親友だったのです。きっと彼の孫の顔が見たいでしょうから」
「……はい。わかりました」
色々とあったが、多分これでいいのだろう。
今までのことは水に流して、私はただアルガール侯爵のお孫さんとその母親の幸せを願うのだった。
「いえ、感謝の気持ちしかありません。本当に、ありがとうございました」
「それでですね。実は預かっていたお金が少しだけ残ったのです。今日は、それをあなたにお渡ししたいと思い、ここまでやって来たのです」
「そ、そうでしたか……」
私の言葉に、ルーフィアは驚いたような表情をした。
しかし、その表情はすぐに険しいものになる。
「……ですが頂けません。もしも私に渡していただけるというなら、私はそれをあなた様にお返ししたいと思っています」
「……それは、どうしてですか?」
「私はご迷惑をおかけしました。あなたにも、アルガール侯爵様にも……だから、そのお金をいただく権利が私にはないと思うのです」
「なるほど……」
ルーフィアは、とても真面目な女性であるようだ。
いや、真面目な女性になったと言った方が正しいだろうか。ランドラ様の一件が、彼女を成長させたように私には思える。
「……時にルーフィアさん、あなたにはご家族はいらっしゃいますか?」
「……いえ、両親は少し前に亡くなりました」
「そうですか……あなたは、この辺りでは上手くやっていけていますか?」
「……色々とありましたから」
「そうでしょうね……」
ルーフィアは、貴族と結婚してその貴族を没落させて帰って来た。
そんな彼女に対する風当たりは、当然強いだろう。もしかしたら、村の人々の手を借りられていないかもしれない。
そんな中で生きていくために必要なのは、お金であるだろう。あまり好きな考え方ではないが、やはりお金は色々なことを解決してくれるものである。
「ならば、こうしましょうか。私はあなたではなく、その子にお金を渡します」
「……え?」
「ランドラ様にもあなたにも、悪い点はありました。ですが、その子に非はありません。そして、その子はアルガール侯爵の正当なるお孫さんです。私が預かっているものを渡す相手として、これ以上適切な人はいないと思います」
「それは……」
「その子のためにも、どうか遺産を使ってください。その子の未来を守るために、手段を選ぶ必要なんて、ないじゃありませんか」
「……わかりました」
ルーフィアは、私の言葉にしっかりと頷いた。
彼女の表情は、今までとは違う。今の彼女は母親なのだろう。それがとてもよく理解できた。
「……もしも、何か困ったことがあったら私の父を頼ってください」
「いえ、それは……」
「父はアルガール侯爵と親友だったのです。きっと彼の孫の顔が見たいでしょうから」
「……はい。わかりました」
色々とあったが、多分これでいいのだろう。
今までのことは水に流して、私はただアルガール侯爵のお孫さんとその母親の幸せを願うのだった。
11
あなたにおすすめの小説
妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った
ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。
昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。
しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。
両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。
「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」
父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた
ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。
だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。
婚約破棄させたいですか? いやいや、私は愛されていますので、無理ですね。
百谷シカ
恋愛
私はリュシアン伯爵令嬢ヴィクトリヤ・ブリノヴァ。
半年前にエクトル伯爵令息ウスターシュ・マラチエと婚約した。
のだけど、ちょっと問題が……
「まあまあ、ヴィクトリヤ! 黄色のドレスなんて着るの!?」
「おかしいわよね、お母様!」
「黄色なんて駄目よ。ドレスはやっぱり菫色!」
「本当にこんな変わった方が婚約者なんて、ウスターシュもがっかりね!」
という具合に、めんどくさい家族が。
「本当にすまない、ヴィクトリヤ。君に迷惑はかけないように言うよ」
「よく、言い聞かせてね」
私たちは気が合うし、仲もいいんだけど……
「ウスターシュを洗脳したわね! 絶対に結婚はさせないわよ!!」
この婚約、どうなっちゃうの?
【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません
すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」
他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。
今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。
「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」
貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。
王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。
あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!
婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~
ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された
「理由はどういったことなのでしょうか?」
「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」
悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる
それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。
腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。
お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?
サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。
「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」
リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。
出ていけ、と言ったのは貴方の方です
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
あるところに、小さな領地を治める男爵家がいた。彼は良き領主として領民たちから慕われていた。しかし、唯一の跡継ぎ息子はどうしようもない放蕩家であり彼の悩みの種だった。そこで彼は息子を更生させるべく、1人の女性を送りつけるのだったが――
※コメディ要素あり
短編です。あっさり目に終わります
他サイトでも投稿中
では、復讐するか
らがまふぃん
恋愛
ロットタニア王国王太子リスラン・ノーサテリテ・ロットタニアには、一つ年下のワーテラー公爵次女、ユセフィラ・サウロ・ワーテラーというとても評判の良い婚約者がいる。
そんな二人の関係は、学園に入ってから陰りが見える。
伯爵令嬢スウィーディー・オプトとリスランやその側近たちとの様々な憶測が囁かれていたある日、隣国に留学していた子爵令息のコノア・クルードが学園に編入してきた。
コノアは、噂の伯爵令嬢スウィーディーから聞かされる。
みんなはユセフィラに騙されている、だからリスランから離さないといけない、という内容だった。
周辺国にまで評判の良いユセフィラの噂は、隣国にいたコノアの耳にも当然入っている。
一方、スウィーディーの学園での評判は悪いものばかり。
評判の悪い自分は信じてもらえないことはわかっている、と自身の学園での評価も理解しているスウィーディー。
自分の見たものを信じるコノアは、スウィーディーと行動を共にすることになるのだが――。
※ご都合主義です。ポンコツ作者の作品ですので残念感がすごいですが、鼻で笑ってくだされば。幕間含め全二十四話+番外編でお届けいたします。番外編は、気まぐれに投稿します。よろしかったらお付き合いください。
※R6.7/9HOTランキング入りしておりました!ひとつ前の作品 精霊の使い?いいえ、違います。 に続いての快挙です。連載中の作品がランキング入りをするのが初めてで、続きがある状態でたくさんの方々の目に触れる機会に恵まれ嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、いいねを本当にありがとうございます。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/3に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる