18 / 19
18
しおりを挟む
身勝手な主張をするクードム様に、ケルド様は怒っていた。その鋭い視線からは、威圧感のようなものが伝わってくる。
こんな彼は、今まで見たことがない。優しい彼でも、怒ると結構怖いようだ。
「け、ケルド……お前、誰に向かって……」
「彼女を貶めていたあなたが、今更彼女を再婚約できるなどと思うな」
「なっ……」
「あなたは、最低な人間だ。それを認識しろ」
「く、くそっ……」
ケルド様の言葉に、クードム様は逃げ出した。
絶対に勝てないと本能が悟ったのだろう。口論だとか議論だとか、そういうものは必要なかった。威圧だけで、クードム様は既に敗北してしまったのである。
「……申し訳ありません。僕の兄が、あなたに迷惑をかけてしまって」
「ケルド様が、謝ることではありません。あれは、彼の問題です」
「いえ、兄のような人間が身内にいることを恥ずかしく思います。彼を作り出し、好きなようにさせていたことを深く謝罪します……本当に、申し訳ありませんでした」
「そんなに謝らないでください。ケルド様は、クードム様ではありません。家族のことだからといって、あなたが謝るのはおかしいですよ」
ケルド様は、私に謝ってきた。
でも、私は彼からの謝罪を必要としていない。あんな人のために、彼が頭を下げるなんて、絶対に間違っているのだ。
「……ケルド様、一つお願いしたいことがあるんですけど、聞いてもらえますか?」
「お願い? なんですか?」
そこで、私はあることを思いついた。
クードム様のような人は、他にもいるかもしれない。私を婚約することで、甘い汁が吸える。そういう人間は、少なくないだろう。
そんな人達を避ける方法はいくつかある。だが、一番早くて、私が一番納得できる方法は、ただ一つだ。
「私と……婚約してもらえませんか?」
「え?」
「婚約者がいれば、クードム様のような人も近寄ってきません。でも、それは表面的な理由でしかないんです。本当の所、私はあなたのことが……好きなんです」
私の言葉に、ケルド様は目を丸めていた。突然の告白だ。その反応も仕方ないだろう。
だが、これが私の今の素直な気持ちである。私のために、私のような人間のために動いてくれる彼に、私は惹かれているのだ。
「……そうでしたか。そう思っていただいたことを、僕は光栄に思います。あなたのような素晴らしい人に思われていたなんて、嬉しいです」
「えっと……」
「僕も、素直な気持ちを返します。あなたのような女性に、僕は傍にいてもらいたいと思っていました。驚くかもしれませんが、はっきりとそう思ったのは先程からですけど……」
「え?」
ケルド様の言葉は、とても嬉しいものだった。
ただ、同時に少し驚くべきものでもあった。先程から、そう思っていたという事実は、とても衝撃的なものである。
「あなたは、優しく強い。力を得て、自分のような人達のためにその力を使いたいと思うあなたを、僕は素晴らしいと思いました。こんな人に傍にいて欲しい……つまり、僕もあなたのことが好きだということですね」
「ケルド様……」
ケルド様は、私を見て笑ってくれた。
彼は、本当にどこまで優しい人である。好きな人まで、他者を思いやれるかどうかで決めているのだから、それは間違いないだろう。
私がそういう人間なのかどうかは、正直よくわからない。でも、彼がそう思っているのだから、それは受け入れるべきだろう。
「……さて、話はまとまったということでいいですよね? そろそろ、時間ですから、まとまっていなくても動かなければなりませんけど」
「あ、そういえば、そうでしたね。国王様は待たせられませんから、早く行かないと行けません」
「僕も一緒に行きますよ。父上に、色々と言わなければならないことができましたからね」
「助かります。私一人だと、流石に緊張しそうですから……」
色々と話している内に、時間が来ていた。
私は、国王様に聖なる力を見せるためにここに来たのだ。その目的を果たさなければならない。
ただ、当初の目的以上に大切なこともできた。国王様とは、色々と話さなければならないだろう。
「さて、これから、色々とあると思いますが、頑張っていきましょう」
「ええ……」
私は、ケルド様とともに歩いていく。
こうして、私は彼とともに王国を変えていく決意を固めるのだった。
こんな彼は、今まで見たことがない。優しい彼でも、怒ると結構怖いようだ。
「け、ケルド……お前、誰に向かって……」
「彼女を貶めていたあなたが、今更彼女を再婚約できるなどと思うな」
「なっ……」
「あなたは、最低な人間だ。それを認識しろ」
「く、くそっ……」
ケルド様の言葉に、クードム様は逃げ出した。
絶対に勝てないと本能が悟ったのだろう。口論だとか議論だとか、そういうものは必要なかった。威圧だけで、クードム様は既に敗北してしまったのである。
「……申し訳ありません。僕の兄が、あなたに迷惑をかけてしまって」
「ケルド様が、謝ることではありません。あれは、彼の問題です」
「いえ、兄のような人間が身内にいることを恥ずかしく思います。彼を作り出し、好きなようにさせていたことを深く謝罪します……本当に、申し訳ありませんでした」
「そんなに謝らないでください。ケルド様は、クードム様ではありません。家族のことだからといって、あなたが謝るのはおかしいですよ」
ケルド様は、私に謝ってきた。
でも、私は彼からの謝罪を必要としていない。あんな人のために、彼が頭を下げるなんて、絶対に間違っているのだ。
「……ケルド様、一つお願いしたいことがあるんですけど、聞いてもらえますか?」
「お願い? なんですか?」
そこで、私はあることを思いついた。
クードム様のような人は、他にもいるかもしれない。私を婚約することで、甘い汁が吸える。そういう人間は、少なくないだろう。
そんな人達を避ける方法はいくつかある。だが、一番早くて、私が一番納得できる方法は、ただ一つだ。
「私と……婚約してもらえませんか?」
「え?」
「婚約者がいれば、クードム様のような人も近寄ってきません。でも、それは表面的な理由でしかないんです。本当の所、私はあなたのことが……好きなんです」
私の言葉に、ケルド様は目を丸めていた。突然の告白だ。その反応も仕方ないだろう。
だが、これが私の今の素直な気持ちである。私のために、私のような人間のために動いてくれる彼に、私は惹かれているのだ。
「……そうでしたか。そう思っていただいたことを、僕は光栄に思います。あなたのような素晴らしい人に思われていたなんて、嬉しいです」
「えっと……」
「僕も、素直な気持ちを返します。あなたのような女性に、僕は傍にいてもらいたいと思っていました。驚くかもしれませんが、はっきりとそう思ったのは先程からですけど……」
「え?」
ケルド様の言葉は、とても嬉しいものだった。
ただ、同時に少し驚くべきものでもあった。先程から、そう思っていたという事実は、とても衝撃的なものである。
「あなたは、優しく強い。力を得て、自分のような人達のためにその力を使いたいと思うあなたを、僕は素晴らしいと思いました。こんな人に傍にいて欲しい……つまり、僕もあなたのことが好きだということですね」
「ケルド様……」
ケルド様は、私を見て笑ってくれた。
彼は、本当にどこまで優しい人である。好きな人まで、他者を思いやれるかどうかで決めているのだから、それは間違いないだろう。
私がそういう人間なのかどうかは、正直よくわからない。でも、彼がそう思っているのだから、それは受け入れるべきだろう。
「……さて、話はまとまったということでいいですよね? そろそろ、時間ですから、まとまっていなくても動かなければなりませんけど」
「あ、そういえば、そうでしたね。国王様は待たせられませんから、早く行かないと行けません」
「僕も一緒に行きますよ。父上に、色々と言わなければならないことができましたからね」
「助かります。私一人だと、流石に緊張しそうですから……」
色々と話している内に、時間が来ていた。
私は、国王様に聖なる力を見せるためにここに来たのだ。その目的を果たさなければならない。
ただ、当初の目的以上に大切なこともできた。国王様とは、色々と話さなければならないだろう。
「さて、これから、色々とあると思いますが、頑張っていきましょう」
「ええ……」
私は、ケルド様とともに歩いていく。
こうして、私は彼とともに王国を変えていく決意を固めるのだった。
123
あなたにおすすめの小説
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
天使のように愛らしい妹に婚約者を奪われましたが…彼女の悪行を、神様は見ていました。
coco
恋愛
我儘だけど、皆に愛される天使の様に愛らしい妹。
そんな彼女に、ついに婚約者まで奪われてしまった私は、神に祈りを捧げた─。
【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】
聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。
「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」
甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!?
追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。
【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます
コトミ
恋愛
セラフィナは、実の親と、妹によって、家から追い出されることとなった。セラフィナがまだ幼い頃、両親は病弱なカタリナのため設備環境が良い王都に移り住んだ。姉のセラフィナは元々両親とともに住んでいた田舎に使用人のマーサの二人きりで暮らすこととなった。お金のない子爵家な上にカタリナのためお金を稼がなくてはならないため、子供二人を王都で暮らすには無理があるとセラフィナだけ残されたのだ。そしてセラフィナが19歳の時、3人が家へ戻ってきた。その理由はカタリナの婚約が上手くいかず王宮にいずらくなったためだ。やっと家族で暮らせると心待ちにしていたセラフィナは帰宅した父に思いがけないことを告げられる。
「お前はジェラール・モンフォール伯爵と結婚することになった。すぐに荷物をまとめるんだ。一週間後には結婚式だ」
困惑するセラフィナに対して、冷酷にも時間は進み続け、結婚生活が始まる。
妹に婚約者を奪われたので、田舎暮らしを始めます
tartan321
恋愛
最後の結末は??????
本編は完結いたしました。お読み頂きましてありがとうございます。一度完結といたします。これからは、後日談を書いていきます。
魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす
三谷朱花
恋愛
ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。
ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。
伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。
そして、告げられた両親の死の真相。
家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。
絶望しかなかった。
涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。
雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。
そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。
ルーナは死を待つしか他になかった。
途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。
そして、ルーナがその温もりを感じた日。
ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる