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私の目の前に現れたのは、とても扱いやすくて都合がいい令嬢であるフェルムーナ・エルキアードでした。
彼女は、どうでもいい大義を抱いているちょっと鬱陶しい人です。かつて、私とは聖女の地位をかけて争った人で、未だに聖女になることを諦めていない熱心な人なのです。
そんな熱心な人が言ってくる言葉は、いつも同じです。
「シャルリナ・ラーファン、よくわかりませんが、私と勝負しなさい! 私が勝ったなら、聖女の地位を明け渡してもらいます!」
彼女は、こういう風に聖女の地位をかけた勝負を仕掛けてきます。
この私には、何一つメリットのない提案は、いつも断っていました。相手するだけ、面倒だからです。
もちろん、今日もこの提案を受け入れるつもりはありません。勝負なんて面倒なことをするつもりはないのです。
ですが、今日はいつもとは少し違います。私は、彼女にある提案をするつもりなのです。
「フェルムーナ・エルキアードさん、今日はあなたにある提案があります」
「え? なんですの? 急に?」
「聖女をやっていただけませんか? 私、もうこの仕事やりたくないんですよ」
「は?」
私の言葉に、彼女はびっくりしたようです。
口を開けて、目を見開いて、結構間抜けな表情ですね。
でも、笑っている場合ではありません。彼女に、きちんと事情を説明しなければなりませんから。
「どういうことですの?」
「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」
「なっ……正気ですか?」
「正気ですよ」
彼女は、なんだか信じられないというような表情をしています。
聖女に憧れを抱いている彼女にとっては、それを譲るということは理解できないのでしょうかね。
現実を知った時に、彼女はどういう表情をするでしょうか? 大義を抱いている人ですから、あんな激務でも大丈夫なのでしょうか? それは、少しだけ興味がありますね。
「聖女という地位が、どれ程のものか本当にわかっていますの?」
「わかっていますよお」
「わかっていて、それを譲ろうというのですか?」
「ええ」
何故、彼女はここで食い下がってくるのでしょうか?
聖女になりたいなら、私の提案を素直に受け入れてくださいよ。面倒くさい人ですね、本当に。
「あのですね。私は、あなたのように大義などということを抱いていないのです」
「え?」
「才能があって、聖女になりましたが、なってみてわかりました。やはり、この仕事は大義を持った人が相応しいのです」
「そ、そうなのですか?」
「ええ、あなたのような人こそ、聖女には相応しい。私はそう思います。ですから、私の提案を受け入れてもらえませんか?」
「……わかりました。あなたの思いに応えさせてもらいますわ」
私の提案を、彼女はきらきらとした目で受け入れてくれました。
相変わらず、乗せやすい人です。こういう扱いやすい人がいてくれたのは、私にとってとても幸福なことです。
さて、これで私は晴れて自由の身になりました。これで、聖女とかいう大変な仕事はおさらばです。
彼女は、どうでもいい大義を抱いているちょっと鬱陶しい人です。かつて、私とは聖女の地位をかけて争った人で、未だに聖女になることを諦めていない熱心な人なのです。
そんな熱心な人が言ってくる言葉は、いつも同じです。
「シャルリナ・ラーファン、よくわかりませんが、私と勝負しなさい! 私が勝ったなら、聖女の地位を明け渡してもらいます!」
彼女は、こういう風に聖女の地位をかけた勝負を仕掛けてきます。
この私には、何一つメリットのない提案は、いつも断っていました。相手するだけ、面倒だからです。
もちろん、今日もこの提案を受け入れるつもりはありません。勝負なんて面倒なことをするつもりはないのです。
ですが、今日はいつもとは少し違います。私は、彼女にある提案をするつもりなのです。
「フェルムーナ・エルキアードさん、今日はあなたにある提案があります」
「え? なんですの? 急に?」
「聖女をやっていただけませんか? 私、もうこの仕事やりたくないんですよ」
「は?」
私の言葉に、彼女はびっくりしたようです。
口を開けて、目を見開いて、結構間抜けな表情ですね。
でも、笑っている場合ではありません。彼女に、きちんと事情を説明しなければなりませんから。
「どういうことですの?」
「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」
「なっ……正気ですか?」
「正気ですよ」
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現実を知った時に、彼女はどういう表情をするでしょうか? 大義を抱いている人ですから、あんな激務でも大丈夫なのでしょうか? それは、少しだけ興味がありますね。
「聖女という地位が、どれ程のものか本当にわかっていますの?」
「わかっていますよお」
「わかっていて、それを譲ろうというのですか?」
「ええ」
何故、彼女はここで食い下がってくるのでしょうか?
聖女になりたいなら、私の提案を素直に受け入れてくださいよ。面倒くさい人ですね、本当に。
「あのですね。私は、あなたのように大義などということを抱いていないのです」
「え?」
「才能があって、聖女になりましたが、なってみてわかりました。やはり、この仕事は大義を持った人が相応しいのです」
「そ、そうなのですか?」
「ええ、あなたのような人こそ、聖女には相応しい。私はそう思います。ですから、私の提案を受け入れてもらえませんか?」
「……わかりました。あなたの思いに応えさせてもらいますわ」
私の提案を、彼女はきらきらとした目で受け入れてくれました。
相変わらず、乗せやすい人です。こういう扱いやすい人がいてくれたのは、私にとってとても幸福なことです。
さて、これで私は晴れて自由の身になりました。これで、聖女とかいう大変な仕事はおさらばです。
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