刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗

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94.騎士団長との戦い⑥

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「お母さん」
「リルフ、兄貴はどう?」
「大丈夫、傷は塞いだよ。ただ、体力が尽きたみたいで……治療している最中に、眠ったよ」
「そっか……」

 兄貴の治療が終わり、リルフが私の隣に来てくれた。私は、この子を待っていたのだ。
 リルフがいれば、こちらの戦力は何倍にも跳ね上がる。精神的にも、安心感があって、盤石の構えだ。

「竜が加わったか……」
「悪いけど、二対一で行かせてもらうよ」
「構わん。元より、そのつもりだった」

 ローディスは、再び剣を構えた。リルフが加わっても、その表情はまったく変わっていない。本当に、何事にも動じない人だ。

「リルフ、私がローディスの元に突っ込むから、サポートをお願いできる?」
「うん。わかったよ……チェンジ、ウィンドドラゴン」

 私の言葉を受けて、リルフはその姿を変えた。ウィンドドラゴン、この姿ならば、強力な風の攻撃魔法が使える。
 その攻撃魔法は、流石のローディスも喰らいたくはないだろう。だから、それで牽制しながら、私が攻めるというのがいいはずだ。

「はっ!」
「ストーム・ブレス!」

 私が駆け出すのと同時に、リルフが竜巻を放った。それを躱すために、ローディスは大きく後退していく。
 私は、そんな彼を追いかける。リルフの攻撃が来るかもしれないという事実は、ローディスにとって、かなり厄介なものだろう。

「おおおっ!」
「ぬうっ!」

 ローディスは、私の攻撃を受け止めてきた。だが、その意識は私の方に向いていない。
 恐らく、リルフの動向が気になっているのだろう。その心の隙は、私にとってとても優位に働いてくれる。

「はあっ!」
「うぐっ……!」

 私の攻撃で、ローディスの体が後退していく。通常なら、これはあり得ないことだ。
 ローディスは、いつでもリルフの攻撃に対処できるような体勢を取らざるを得ない。そんな状態では、私の攻撃を受け止めることもままならないのだ。
 ただ、彼は私の攻撃からは逃げられない。私の攻撃に逃げると、リルフの攻撃をそこに合わせられてしまう。それを避けるために、彼は非常に中途半端な状態で、私に対処しなければならないのだ。

「あまり……」
「え?」
「舐めないでもらおうか」
「なっ……!」

 そこで、ローディスは剣から左手を離した。彼は、その左手を大きく引いていく。
 その瞬間、私は判断を迷った。このまま押し切るか、それとも一度退却するか、それは一瞬で判断しなければならないことだった。

「くっ……!」
「ふん……」

 結果的に、私は後退を選んだ。その直後、ローディスの拳が空を切る。
 あれを受けていると、一気に体勢が崩れていた。そうなると、ローディスからさらなる攻撃を受けるだろう。そう思って、ここは後退するべきだと判断したのだ。

「……ストーム・ブレス!」
「ぬうっ……」

 その少し後、リルフの竜巻が放たれた。あの拳には、リルフの攻撃も間に合わなかった。やはり、後退の判断は間違っていなかっただろう。
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