刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

９５．騎士団長との戦い⑦

「……やはり、お前達は強くなっているようだな。以前対峙した時と比べて、かなり強くなっている」
「急にどうしたのさ？」
「素直に賞賛しただけだ。この俺が、ここまで追い詰められるとは正直思っていなかった。この俺も、少々特殊な手に頼らなければならないようだ」
「え？」

　そこで、私はあることに気づいた。
　ローディスの近くには、一人の男性がいる。それは、副団長のウェルデインだ。状況から考えて、彼は兄貴に倒されたのだろう。
　今までは、そんなことはあまり気にしていなかった。流石兄貴だということくらいしか思っていなかったのだ。
　だが、ここでローディスが彼の近くまで来たということには、何か意図がある気がした。私達に追い詰められて、偶々ウェルデインの近くに行く。その可能性がない訳ではないが、彼に対してそんな甘い考えはできない。

「ウェルデイン、お前の力を貸してもらうぞ」
「なっ……」

　ローディスは、ウェルデインから剣を取った。自身の剣と、ウェルデインの剣をそれぞれの手に握り、彼はゆっくりと構える。

「二刀流……」
「ここからは、俺も手数を増やさせてもらう」
「くっ……」

　ローディスの二刀流には、とても迫力があった。今までの戦いから考えて、二本の剣を使われるというのはまずい。
　彼は、私の剣を片腕でもぎりぎり捌ける。その隙に、もう一本の剣で攻められたら一たまりもない。

「でも……」

　しかし、同時に私はあることを思っていた。
　二刀流というのは、本来ならば両手で扱うものを、片手で扱う。そのため、通常よりも疲労するはずだ。
　つまり、ここはどちらかというと防御するつもりでいた方がいいだろう。相手の攻撃を耐え切れば、こちらはかなり有利になるはずだ。

「リルフ、引き続き、牽制をお願い」
「うん、任せて」

　私は、ローディスの元に向かって行く。すると、彼も私に向かって来た。
　私は、当初の予定通り、防御するつもりだ。リルフの牽制も合わせれば、きっとローディスの攻撃を凌げるだろう。

「ふん！」
「くっ……！」

　ローディスは、早速二本の剣で私を攻撃してきた。その攻撃を、私はなんとか受け止める。

「え……？」

　次の瞬間、私は驚いていた。ローディスが剣を引いてきたからである。
　そのまま、彼は私を置いて駆け出していく。その方向には、リルフがいる。
　そこで、私は彼の意図を理解した。彼は、私を怯ませてから、リルフに狙いを変えることにしたのだ。
　リルフの牽制がある限り、彼は自由に動けない。だから、私よりも先にリルフを叩くことにしたのだろう。