刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗

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96.騎士団長との戦い⑧

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「リルフ!」
「ふん!」
「ストーム・ブレス!」

 リルフの竜巻を、ローディスは躱した。いくら強力な竜巻でも、その軌道は読めない訳ではない。騎士団長の彼にとって、それはそれ程難しいことではないはずだ。
 ローディスは、二本の剣をリルフに向けて振るう。私も必死に追ってはいるが、これは間に合わない。

「リルフ!」
「うっ……!」
「何!?」

 そこで、リルフはその姿を変化させた。人間の姿になったのである。
 巨大な体だった竜の姿と違い、その姿はとても小柄だ。そのため、ローディスの剣は空を切るだけだった。
 そのような回避方法があるとは、私も思っていなかった。恐らく、ローディスもそうだろう。
 とにかく、これでとりあえず安心だ。またリルフを狙われないように、今度はローディスを逃がさないようにしなければならない。

「はあっ!」
「ぬうっ……」

 やっと追いついた私の攻撃を、ローディスは片方の剣で受け止めてきた。つまり、剣はもう一本残っている。このままでは、その攻撃を受けることになってしまう。

「ふん!」
「くっ……!」

 そのため、私は一度後退するしかなかった。しかし、その隙をローディスは見逃さない。今度は私に狙いを定めて、しっかりと追って来る。
 やはり、二刀流というのはかなり厄介だ。特に、相手が片手で私の剣を受け止められるというのが、とてもまずい。

「お母さん!」
「むっ……!?」
「えっ!?」

 次の瞬間、私もローディスも驚くことになった。突如、辺り一面が暗くなったからである。
 私達は、同時に空を見上げた。そこには、黒い雲が広がっている。それは、先程まではまったくなかったものだ。
 あの雲は、一体なんなのだろうか。そう思った直後、私は強い光と轟音が辺りに響くのを認識する。

「何っ……!?」
「うわあっ!」

 その現象には、見覚えがあった。何度も見たことがある自然現象と酷似していたからだ。
 空から降り注いでくる光。人は、それを雷と呼ぶ。先程の現象は、雷ととても似ているのだ。

「リルフ……」
「はあ、はあ……」

 そこで、私はリルフの方を見ていた。恐らく、今のはリルフが発動した魔法なのだろう。
 こんなにも急に雲が現れて、雷が降って来る訳はない。そんな現象をできるとしたら、魔法しかないだろう。
 この場で魔法を使えるのは、リルフだけだ。つまり、あの雷のようなものは、リルフが発生させたということになる。

「まさか……あの魔法まで使えるとはな……」
「え?」

 そんな私の耳に、ローディスの声が聞こえてきた。どうやら、彼は先程の魔法のことを知っているようだ。
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