そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗

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2.私の生まれ

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 私は、エルシエット伯爵家の長女として生まれた。
 しかし私の誕生は、それ程祝福された訳ではなかったようだ。
 政略結婚をした父と母の仲は、最悪であった。念のため後継ぎになる子供は作ったが、息子が欲しかった父にとって私は疎ましい存在であったようだ。

 母の方は、私に真っ当に愛情を注いでくれていたように思う。
 ただ、彼女が時折見せる不快そうな顔は、今でも覚えている。きっと私のどこかに父親の陰を感じていたのだろう。今となっては、母のそんな気持ちがよくわかる。

 私が七歳になった時に、母は亡くなった。
 流行り病にかかって、そのまま亡くなってしまったのである。元々体が弱かったらしいが、そのあまりにも呆気ない死に、私は中々実感を得ることができなかった。

 そんな私に対して、父は追い打ちのように再婚の報告をしてきた。
 彼が連れてきたのは、母とは違うタイプの女性であった。それが恐らく、父の本来の好みであったのだろう。二人は恋愛関係にあったらしい。

「アルシエラ、彼女が私の新しい妻だ。そしてその隣にいるのが、お前の妹なのだ」
「妹? どういうことですか?」
「イフェリアは、私の子だ。イエネアと私の間にできた大切な子供なのだよ」

 母が亡くなってすぐであるというのに、父と女性の間には子供がいた。
 それはつまり、不義の子である。父は浮気して別の女性との間に子供を作り、その相手を妻と娘にしたのだ。

「あの女が亡くなったのは、本当に幸運だったよ。はっはっはっ、これでやっと私は幸せになることができるのだ」
「そ、そんな馬鹿なことを……」
「いいか。お前はこの家に置いておいてやる。しかし、私に逆らうことは許さんぞ。逆らったら追い出してやる。お前のような力のない子供が追い出されたらどうなるかわかるだろうな?」
「そ、それは……」

 再婚してから、父は私に対して横暴に振る舞うようになった。
 それはきっと、私を母が亡くなったからそう感じるようになったのだろう。きっと母は、今までずっと父から私を守ってくれていたのだ。

「ふん、あんな汚らわしい女の子供なんて、本来であれば追い出してやりたい所ですが……この子にも、まだまだ利用できる所がありますものね?」
「ああ、そうだとも。こんな奴でもエルシエット伯爵家の血を継いでいる。利用しない手はないだろう?」
「素晴らしい考えですね。傀儡として、この子はいつまでも利用してやりましょう」

 継母であるイエネアは、父と同じように悪辣な人間であった。
 似たもの夫婦に囲まれて、私はこれからの未来が暗いということを悟った。
 しかしながら、その時はそれでもそこにいるしかないと思っていた。まだ非力だった私は、世界に羽ばたいていける勇気など持ち合わせていなかったのだ。
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