そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗

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36.わかったこと

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「し、失踪?」
「ああ、そうみたいなんだ……つい先日、いなくなってしまったらしい」

 ギルバートからの報告に、私はひどく驚いていた。
 エルシエット伯爵家の財政が火の車であること、それがディクソンの悪癖によるものだったということ。それらももちろん、衝撃的なことではある。
 ただ最も驚いたのが、ディクソンが失踪したということだ。事情はわからないが、エルシエット伯爵家に婿入りした彼はいなくなってしまったらしい。その消息は、まったく掴めていないようだ。

「話に聞いた所によると、結構あくどい所からお金を借りていたみたいだからね……」
「それが怖くて、逃げ出したということかしら?」
「もしくは、連れて行かれたのかもしれないね。どちらにしても、ディクソン・エルシエットという人間が再び姿を現す可能性は低そうだ」

 ギルバートの言葉に、私は少し震えてしまった。
 ディクソンは今一体、どこで何をしているのだろうか。果たして生きているのだろうか。彼の末路を考えると、気分が悪くなってくる。

「まあ、何はともあれ、これでエルシエット伯爵家がお金の無心をしてきた理由は判明した訳だ……それで、どうするつもりだい?」
「どうするつもりと言われてもね。縁を切っておいて、今更頼ってくるなと思ってしまうけれど」
「それが当然の反応だろうさ。それなら、丁重にお断りしようか? それとも、こんな手紙は届かなかったということにするかい?」
「返信くらいは、出しておいた方がいいのかもしれないわね。どちらにしても角は立つでしょうし、それならこちらの意思を伝えておいた方がいいように思えるわ。それに無視というのはなんだか子供っぽいしね?」

 ギルバートの言葉に、私はそのように返答した。
 元親族として、最低限の礼節は弁えた方がいいだろう。感情に任せるよりも、そちらの方が私好みだ。ここはあくまで、大人の対応をするとしよう。

「問題なのは、借金をしたあくどい所かしら? その人達が、こっちに来る可能性はないとは言い切れないわよね?」
「それは確かにそうかもしれないね。親族だからと返済を要求してくるかもしれない」
「それは正直な所、面倒ね。それに腹が立つわ」
「縁を切ったと言って納得してもらえるといいんだけど、それは恐らく難しいだろうね」

 早速手紙を書き始めながら、私はギルバートとそんな会話を交わした。
 こちらに借金取りが訪ねて来るかもしれない。それは私にとって、非常に億劫なことだった。
 どうにかして、それを回避したいとは思う。だが、それもまた中々に難しいことである。

「……相談するべきかしらね」
「相談?」

 そこで私は、ゆっくりと筆を止めた。
 これからの人生のためにも、過去から続く因縁は断ち切っておかなければならない。
 そのために私は、行動を開始するのだった。
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