28 / 40
28.変わらないこと
しおりを挟む
「……セディルスさんも、悩んだのですか?」
「……悩みましたね。自分という存在が、どんどんとわからなくなっていきました」
セディルスさんの境遇は、私と同等かそれ以上に厳しいものであるだろう。
自分が異国の王家の血を引いている。その事実を受け止めるのは、難しかったはずだ。
しかし今彼は、笑顔を浮かべている。それはその件について、ある程度の決着をつけられていなければ、出ないものであるだろう。
「よく乗り越えられましたね」
「乗り越えたかどうかは、自分でもよくわかっていません」
「え?」
「ただ私は、私でしかないということに気付いたのです。自分のルーツがどこにあろうとも、変わらないものが――変えられないものがあると思うようになったのです。それは諦めのようなものかもしれませんが」
「……」
セディルスさんの言葉に、私はこの王城に招かれた時のことを思い出していた。
あの時の私は、自分が王家の一員であるという事実に戸惑いながらも、なるようにしかならないと考えていたような気がする。
あの時の私は、今よりもずっと強かだったといえるだろう。私はその強さを取り戻さなければならない。
そもそもの話、王家という強大な渦の中で私がもがいた所で、何かできる訳ではないのだ。それに関しては、ここに来てからずっと変わっていないことである。
悩んだ所で仕方ない。私は事実を受け止めて、前に進むしかないのだ。ここで後ろ向きになった所で、事態が好転するなんてあり得ないのだから。
「セディルスさん、ありがとうございます。お陰で大切なことを思い出すことができました」
「……お役に立てたというなら、何よりです」
「あなたという友人がいてくれて、幸いでした。これは中々、誰かに相談できることという訳でもなかったので」
「私で良ければ、いつでも相談に乗りますよ」
「助かります。これからも頼らせていただきますね」
セディルスさんと話せたことは、私にとってとても幸運なことだったといえるだろう。お陰で私は持ち直すことができた。
心機一転して、これからも頑張っていけそうだ。もっとも、私が頑張らなければならないようなことがある訳でもないのだが。
「さてと、私はそろそろ仕事に戻ります」
「仕事……そうですよね。私も戻らなければなりません。これでも一応、アゼルト殿下のお世話係ですからね」
セディルスさんは、色々なことがあった訳だが、今は騎士見習いとして務めている。そんな彼のことを、私は少し見習うべきかもしれない。
今の私は、アゼルトお兄様のお世話係だ。表向きの役職に過ぎないといっても、それが今の私が務めるべきことだろう。少しやる気も出てきたし、頑張ってみるのも良いかもしれない。
「……悩みましたね。自分という存在が、どんどんとわからなくなっていきました」
セディルスさんの境遇は、私と同等かそれ以上に厳しいものであるだろう。
自分が異国の王家の血を引いている。その事実を受け止めるのは、難しかったはずだ。
しかし今彼は、笑顔を浮かべている。それはその件について、ある程度の決着をつけられていなければ、出ないものであるだろう。
「よく乗り越えられましたね」
「乗り越えたかどうかは、自分でもよくわかっていません」
「え?」
「ただ私は、私でしかないということに気付いたのです。自分のルーツがどこにあろうとも、変わらないものが――変えられないものがあると思うようになったのです。それは諦めのようなものかもしれませんが」
「……」
セディルスさんの言葉に、私はこの王城に招かれた時のことを思い出していた。
あの時の私は、自分が王家の一員であるという事実に戸惑いながらも、なるようにしかならないと考えていたような気がする。
あの時の私は、今よりもずっと強かだったといえるだろう。私はその強さを取り戻さなければならない。
そもそもの話、王家という強大な渦の中で私がもがいた所で、何かできる訳ではないのだ。それに関しては、ここに来てからずっと変わっていないことである。
悩んだ所で仕方ない。私は事実を受け止めて、前に進むしかないのだ。ここで後ろ向きになった所で、事態が好転するなんてあり得ないのだから。
「セディルスさん、ありがとうございます。お陰で大切なことを思い出すことができました」
「……お役に立てたというなら、何よりです」
「あなたという友人がいてくれて、幸いでした。これは中々、誰かに相談できることという訳でもなかったので」
「私で良ければ、いつでも相談に乗りますよ」
「助かります。これからも頼らせていただきますね」
セディルスさんと話せたことは、私にとってとても幸運なことだったといえるだろう。お陰で私は持ち直すことができた。
心機一転して、これからも頑張っていけそうだ。もっとも、私が頑張らなければならないようなことがある訳でもないのだが。
「さてと、私はそろそろ仕事に戻ります」
「仕事……そうですよね。私も戻らなければなりません。これでも一応、アゼルト殿下のお世話係ですからね」
セディルスさんは、色々なことがあった訳だが、今は騎士見習いとして務めている。そんな彼のことを、私は少し見習うべきかもしれない。
今の私は、アゼルトお兄様のお世話係だ。表向きの役職に過ぎないといっても、それが今の私が務めるべきことだろう。少しやる気も出てきたし、頑張ってみるのも良いかもしれない。
447
あなたにおすすめの小説
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。
リストラされた聖女 ~婚約破棄されたので結界維持を解除します
青の雀
恋愛
キャロラインは、王宮でのパーティで婚約者のジークフリク王太子殿下から婚約破棄されてしまい、王宮から追放されてしまう。
キャロラインは、国境を1歩でも出れば、自身が張っていた結界が消えてしまうのだ。
結界が消えた王国はいかに?
婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ
青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。
今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。
婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。
その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。
実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。
醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました
つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。
けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。
会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……
【完結】悪女を押し付けられていた第一王女は、愛する公爵に処刑されて幸せを得る
甘海そら
恋愛
第一王女、メアリ・ブラントは悪女だった。
家族から、あらゆる悪事の責任を押し付けられればそうなった。
国王の政務の怠慢。
母と妹の浪費。
兄の女癖の悪さによる乱行。
王家の汚点の全てを押し付けられてきた。
そんな彼女はついに望むのだった。
「どうか死なせて」
応える者は確かにあった。
「メアリ・ブラント。貴様の罪、もはや死をもって以外あがなうことは出来んぞ」
幼年からの想い人であるキシオン・シュラネス。
公爵にして法務卿である彼に死を請われればメアリは笑みを浮かべる。
そして、3日後。
彼女は処刑された。
殿下は婚約破棄した私を“横領犯”として追放しましたが、私が“王国の財布”だとご存じなかったのですか?
なかすあき
恋愛
王太子の婚約者であるレティシアは、愛ではなく“王国の財布”に選ばれた内政官だった。
干ばつ救済基金を管理し、徴税と支出の流れを整え、国が崩れないように回してきたはずなのに。
舞踏会の夜。
聖女セシルの涙と王太子の言葉が、レティシアを一瞬で“横領犯”に仕立て上げる。
反論しても届かない。空気が判決を下す場所で、レティシアは追放された。
落とされた先は、干ばつに喘ぐ辺境。
水のない井戸、荒れた配給所、怒りの列。
レティシアは泣く代わりに、配給と水路と記録を整えた。奇跡ではなく、段取りで。
やがて王都は、レティシアがいなくなった穴から静かに壊れ始める。
支払いは止まり、責任は溶け、聖女の“物語”だけが空回りする。
呼び戻しの使者が来ても、レティシアは従わない。戻る条件はひとつ。
――公開監査。
記録水晶が映し出すのは、涙では隠せない日付と署名、そして“誰が何を決めたか”という事実。
この逃げ場のない復讐劇の先に残るのは、王都の再起ではなく、辺境の明日だった。
これは、道具として捨てられた内政官が、二度と道具に戻らず、“責任を固定する”ことで国を救い、自分の居場所を選び直す物語。
「いらない」と捨てられた令嬢、実は全属性持ちの聖女でした
ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・エヴァンス。お前との婚約は破棄する。もう用済み
そう言い放ったのは、五年間想い続けた婚約者――王太子アレクシスさま。
広間に響く冷たい声。貴族たちの視線が一斉に私へ突き刺さる。
「アレクシスさま……どういう、ことでしょうか……?」
震える声で問い返すと、彼は心底嫌そうに眉を顰めた。
「言葉の意味が理解できないのか? ――お前は“無属性”だ。魔法の才能もなければ、聖女の資質もない。王太子妃として役不足だ」
「無……属性?」
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる