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27.彼の出自は
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「セディルスさん、あなたは一体……」
「……お察しの通りです。私も少々出自が特別なのです。それを知ったのは、今からニ年程前のことですが」
「それは……」
セディルスさんは、遠くを見つめていた。
そんな彼に対して、私は言葉を詰まらせる。彼に特別な出自について、聞いていいものかわからなかったからだ。普通に考えたら、それは秘密にしなければならないことだろうし。
「私はこの国で平民として生まれ育ちました。実家は農家です。騎士を志したのは、村で問題が起こった時に助けてくれたのを見たからで……私の人生は、二年前までそこまで特別なものという訳でもなかったと思います」
「……私と同じようなものですね」
「ええ、そうでしょうね。しかし私は二年前、ある人から告げられたのです。自分に特別な血が流れていることを……」
セディルスさんの表情は、少し険しくなっていた。
彼にとって、それは語りたくないことなのだろう。それを話させるのは、少し心苦しい。
ただ私にとって、それは知りたいことでもあった。だから私は、申し訳ないと思いながらも、彼の言葉を待つ。
「事実を告げられてから、私は母に尋ねました。すると教えてくれました。私には育ててくれた父とは別に父親がいることを……母はかつて、別の国で使用人をしていたようなのです」
「それでは、セディルスさんはまさか……」
ある可能性について思い至った私は、目を丸めることになった。
セディルスさんは、苦笑いを浮かべる。その表情から、私は自分の予想が間違っていないということを悟った。
「……私の本当の父は、私のことを認めていません。しかし母曰く、間違いないそうです。それをどこで知ったのかはわかりませんが、こちらの国王陛下は私に対して、敬意を持ってくださっています。色々と気に掛けてもらっていて、感謝していますよ」
セディルスさんは、他国の高貴な人の血を引いているらしい。国王様が敬意を持つとなると、彼の父はきっと相当な地位の人物だろう。
国王様ならクロードお兄様のことをもあって、その辺りに敏感になっているだけかもしれない。だがセディルスさんの口振りからしても、恐らく彼の父親はどこかの国の王族に類する人なのだろう。
ウルティナ姫も、笑う訳だ。バルキス様は、なんとも恐ろしい二人に喧嘩を売っていたものである。
しかし笑っていたということは、ウルティナ姫は事実を知っていたということだろうか。少なくとも王族の間では、事実は周知されているということなのかもしれない。
私が彼と関わっていると知っているアゼルトお兄様などは、特に何も教えてくれなかった訳だが、流石に知らなかったということはないだろう。
「……お察しの通りです。私も少々出自が特別なのです。それを知ったのは、今からニ年程前のことですが」
「それは……」
セディルスさんは、遠くを見つめていた。
そんな彼に対して、私は言葉を詰まらせる。彼に特別な出自について、聞いていいものかわからなかったからだ。普通に考えたら、それは秘密にしなければならないことだろうし。
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「ええ、そうでしょうね。しかし私は二年前、ある人から告げられたのです。自分に特別な血が流れていることを……」
セディルスさんの表情は、少し険しくなっていた。
彼にとって、それは語りたくないことなのだろう。それを話させるのは、少し心苦しい。
ただ私にとって、それは知りたいことでもあった。だから私は、申し訳ないと思いながらも、彼の言葉を待つ。
「事実を告げられてから、私は母に尋ねました。すると教えてくれました。私には育ててくれた父とは別に父親がいることを……母はかつて、別の国で使用人をしていたようなのです」
「それでは、セディルスさんはまさか……」
ある可能性について思い至った私は、目を丸めることになった。
セディルスさんは、苦笑いを浮かべる。その表情から、私は自分の予想が間違っていないということを悟った。
「……私の本当の父は、私のことを認めていません。しかし母曰く、間違いないそうです。それをどこで知ったのかはわかりませんが、こちらの国王陛下は私に対して、敬意を持ってくださっています。色々と気に掛けてもらっていて、感謝していますよ」
セディルスさんは、他国の高貴な人の血を引いているらしい。国王様が敬意を持つとなると、彼の父はきっと相当な地位の人物だろう。
国王様ならクロードお兄様のことをもあって、その辺りに敏感になっているだけかもしれない。だがセディルスさんの口振りからしても、恐らく彼の父親はどこかの国の王族に類する人なのだろう。
ウルティナ姫も、笑う訳だ。バルキス様は、なんとも恐ろしい二人に喧嘩を売っていたものである。
しかし笑っていたということは、ウルティナ姫は事実を知っていたということだろうか。少なくとも王族の間では、事実は周知されているということなのかもしれない。
私が彼と関わっていると知っているアゼルトお兄様などは、特に何も教えてくれなかった訳だが、流石に知らなかったということはないだろう。
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