まさか私が王族の一員であることを知らずに、侮辱していた訳ではありませんよね?

木山楽斗

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26.事実を知って

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「はあ……」

 王城のベランダにて、私はゆっくりとため息をついた。
 国王様と王妃様から伝えられた事実は、私の胸に重くのしかかっている。

 今まで父と思っていた人は兄で、祖父と思っていた人が父、それからアゼルトお兄様達との関係も変わってくる。彼らは私にとって、甥や姪ということになるのだ。
 その事実の変化に、私の心は追いついていない。王族である事実は揺るがないにしても、王家における位置の変化は、私にとって大きなものだった。

「……どうされたのですか? そんな風にため息をついて」
「え?」

 私が大きなため息をついていると、聞き覚えがある声が聞こえてきた。
 後ろを振り返ってみると、そこにはセディルスさんがいた。彼はこちらに歩いてきて、私の隣まで歩いて来る。

「何か悩みごとですか?」
「あ、それはその……」
「私で良ければ、相談に乗りますよ。どれ程力になれるのかは、わかりませんが」
「えっと……」

 セディルスさんの言葉に、私はどうするべきか少し考える。
 彼は私のことを心配して、声をかけてくれたのだろう。それは非常に、ありがたいことである。
 ただ私が悩んでいることは、人に話せるようなことではない。それは私が国王様の隠し子であるという公然の秘密とは違って、本当に秘密なことなのだ。

「なんというか……自らのアイデンティティについて、悩んでいまして」
「……なるほど」

 結局私は、とても曖昧に悩みをセディルスさんに伝えることにした。
 彼はゆっくりと、頷いてくれている。私の公然の秘密の方は知っているため、もしかしたらそれについて悩んでいると取られたかもしれない。

「……あなたの気持ちがわかるなどというのは、きっと思い上がったことなのでしょうね」
「え?」
「しかしそれでも、私にはその気持ちが少しだけわかります。以前も言ったかもしれませんが、私にも色々とありますから」
「色々……ですか」

 セディルスさんの言葉には、なんだか実感が籠っているような気がした。
 ただ私と話を合わせてくれている訳ではない。それがその言葉からは感じられた。

 そういえば、ウルティナ姫はセディルスさんのことを見て、笑っていた。あの笑みが何だったのかは、気になっていた所だ。
 それはもしかしたら、彼の出自に何かあるからなのかもしれない。その可能性はある。

 思えば、彼はずっと猪突猛進であった。正義感が強いからといっても、貴族に正面から立ち向かうなんて、いくらなんでも無茶な話だ。
 しかし、貴族を抑え込める要素があったなら話は変わってくる。彼は私と同じように、特別な何かがあるのだろうか。
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