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32.物悲しき事実
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「……何かしら?」
「……とりあえず、その手をどうかお下げください」
手を振り上げていた令嬢は、私の言葉にゆっくりとその手を下ろした。
ただそれは、私の願いを聞き入れてくれたからではないだろう。不快極まりないといった風に歪んだ彼女の表情から、それが伝わってきた。
それを見ながら私は考えていた。彼女に対して、何を言うべきなのかと。
正直な所、決意に任せてほとんど何も考えずに声をかけてしまった。何をするにしても、もう少し算段を立てた方が良かったかもしれない。私は自身の短絡さを少し後悔していた。
「あなた、何者?」
「……メルフィナと申します。一応、この王城に勤める使用人です」
「身分は?」
「平民、ですね……」
「へえ……」
私の言葉に対して、令嬢は口の端を釣り上げた。
私が平民とわかったからなのか、彼女には余裕ができたようだ。
しかし名前を聞いてもこの反応ということは、彼女も私のことは知らないということだろうか。
王城においては、公然の秘密となっている訳だが、案外私のことは知られていないのかもしれない。それとも、知っているなら見たら逃げていくから、私と関わらないというだけだろうか。
いや、そもそもレシリア様もバルキス様も彼女も、天下の王城で人目をはばからず問題を起こしている。
普通の人なら、まずそれがあり得ないのかもしれない。ここで問題を起こしている時点で、相手がまともな貴族なんて考えは捨てるべきなのだろう。
「この子の同類という訳ね。道理で薄汚いと思ったわ。私にはわかるのよ。高貴な血を引いている者と引いていない者の違いが」
「……」
「王城の使用人の質も落ちたものね。腹立たしいことこの上ないわ。私を誰だと思っているのかしら? トリシア・ダンバー男爵令嬢よ?」
意気揚々と名乗った彼女の地位は、そこまで高いものという訳でもなかった。
男爵家の令嬢となると、この王城でも使用人として働いているくらいだ。それ以上の令嬢も働いているため、彼女は私の身分を確認したということだろう。
なんというか、少し小物めいている。だからこそ平民に過激と、考えることもできるだろうか。
「この私に逆らうというなら、こちらもそれなりの対応をさせてもらうわ。どういうことか、わかるかしら? いや、あなたのような下賤な女には、わからないものかしら?」
「……」
「な、何よ?」
私は、何も言わずにトリシア様の方を見つめていた。
彼女の言葉の数々は、そのまま彼女を追い詰めていくことになる。トリシア様は何もわかっていないのかもしれないが、私はそういう存在だ。
それが少し物悲しくもあった。ただトリシア様を許す訳にはいかない。私は彼女に、厳正な処罰を下さなければならないのだろう。
「……とりあえず、その手をどうかお下げください」
手を振り上げていた令嬢は、私の言葉にゆっくりとその手を下ろした。
ただそれは、私の願いを聞き入れてくれたからではないだろう。不快極まりないといった風に歪んだ彼女の表情から、それが伝わってきた。
それを見ながら私は考えていた。彼女に対して、何を言うべきなのかと。
正直な所、決意に任せてほとんど何も考えずに声をかけてしまった。何をするにしても、もう少し算段を立てた方が良かったかもしれない。私は自身の短絡さを少し後悔していた。
「あなた、何者?」
「……メルフィナと申します。一応、この王城に勤める使用人です」
「身分は?」
「平民、ですね……」
「へえ……」
私の言葉に対して、令嬢は口の端を釣り上げた。
私が平民とわかったからなのか、彼女には余裕ができたようだ。
しかし名前を聞いてもこの反応ということは、彼女も私のことは知らないということだろうか。
王城においては、公然の秘密となっている訳だが、案外私のことは知られていないのかもしれない。それとも、知っているなら見たら逃げていくから、私と関わらないというだけだろうか。
いや、そもそもレシリア様もバルキス様も彼女も、天下の王城で人目をはばからず問題を起こしている。
普通の人なら、まずそれがあり得ないのかもしれない。ここで問題を起こしている時点で、相手がまともな貴族なんて考えは捨てるべきなのだろう。
「この子の同類という訳ね。道理で薄汚いと思ったわ。私にはわかるのよ。高貴な血を引いている者と引いていない者の違いが」
「……」
「王城の使用人の質も落ちたものね。腹立たしいことこの上ないわ。私を誰だと思っているのかしら? トリシア・ダンバー男爵令嬢よ?」
意気揚々と名乗った彼女の地位は、そこまで高いものという訳でもなかった。
男爵家の令嬢となると、この王城でも使用人として働いているくらいだ。それ以上の令嬢も働いているため、彼女は私の身分を確認したということだろう。
なんというか、少し小物めいている。だからこそ平民に過激と、考えることもできるだろうか。
「この私に逆らうというなら、こちらもそれなりの対応をさせてもらうわ。どういうことか、わかるかしら? いや、あなたのような下賤な女には、わからないものかしら?」
「……」
「な、何よ?」
私は、何も言わずにトリシア様の方を見つめていた。
彼女の言葉の数々は、そのまま彼女を追い詰めていくことになる。トリシア様は何もわかっていないのかもしれないが、私はそういう存在だ。
それが少し物悲しくもあった。ただトリシア様を許す訳にはいかない。私は彼女に、厳正な処罰を下さなければならないのだろう。
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