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8.長い旅を経て
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私にとって長旅というものは、そこまで苦という訳ではない。オルファン侯爵家に属していた時も、遠出というものはあった。故に慣れているし、旅の過程は私にとっては数少ない心休まる場というものだ。
ただ今回の旅というのは、気が気ではなかった。お母様の体調というものが、悪化するか心配だったのだ。
しかし結果としては、特に問題はなかった。もしかしたらお母様にとっては、オルファン侯爵家から離れられるという事実は、かなり良いことなのかもしれない。
「なるほど、それでオルファン侯爵家を抜け出してきた訳ですか」
「はい、そうなのです」
「それは賢明な判断でしたね。そのまま留まっていたとしても、あなたにとってもその子もとっても、良いことは起こらなかったでしょう」
そんな長い旅を終えた私とお母様は、バルフェルト伯爵家の屋敷に来ていた。
私達の目の前には、バルフェルト伯爵夫人であるラメール様がいる。彼女は私のお母様の母親、つまりは私のお祖母様の親友であるそうだ。もっとも、私は初めて会うのだが。
「代替わりしてから、オルファン侯爵家のことは常々耳にしていました。あなたのことを気に掛けていたということもありますが、それを抜きにしてもよく噂を聞きました。もちろん、悪い噂です」
「……そうですね。夫は褒められた人ではなかったと思います。お義父様はアルティアも含めてよくしてくれたのですが」
「先代のオルファン侯爵は、立派な方だったと記憶しています。とはいえ、息子の教育については失敗したようですね」
バルフェルト伯爵夫人は、お祖父様のことを述べながら苦笑いを浮かべていた。
それに関しては、理解できる。あれだけ立派だったお祖父様の元で育ったはずのお父様が、ああなったというのは不思議なものだ。
ただその辺りについては、私所かお母様もよく知らない部分である。色々とあったのかもしれない。もっとも、何があってもお父様を許すつもりなんてないが。
「まあ、オルファン侯爵家がどうなるかは見物といえるでしょうね。別にまだまだ、持ち返す方法はあります。オルファン侯爵としての手腕が問われますね」
「……アルティアとも話しましたが、オルファン侯爵家はこれから厳しい道を歩むことになるのですよね」
「ええ、まず間違いなくそうなるでしょう。ですが心配はありません。あなた達のことは、私が責任を取って預かります」
「ラメール様、すみません……」
「気にする必要はありません。これは、亡き親友との約束ですからね」
お母様の言葉に、バルフェルト伯爵夫人は笑顔を浮かべていた。
少なくとも彼女は、私達のことを歓迎してくれているようだ。私はそのことに安心しながら、これからのことを考えるのだった。
ただ今回の旅というのは、気が気ではなかった。お母様の体調というものが、悪化するか心配だったのだ。
しかし結果としては、特に問題はなかった。もしかしたらお母様にとっては、オルファン侯爵家から離れられるという事実は、かなり良いことなのかもしれない。
「なるほど、それでオルファン侯爵家を抜け出してきた訳ですか」
「はい、そうなのです」
「それは賢明な判断でしたね。そのまま留まっていたとしても、あなたにとってもその子もとっても、良いことは起こらなかったでしょう」
そんな長い旅を終えた私とお母様は、バルフェルト伯爵家の屋敷に来ていた。
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「ええ、まず間違いなくそうなるでしょう。ですが心配はありません。あなた達のことは、私が責任を取って預かります」
「ラメール様、すみません……」
「気にする必要はありません。これは、亡き親友との約束ですからね」
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