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7.娘のために
「お母様、突然ですみません。オルファン侯爵家から出て行きましょう」
「それは……」
私は、お母様の部屋に来ていた。
私がまだ小さな頃から、お母様は体調を崩しがちであった。故に大抵の場合は、自室で休んでいるのだ。
それは、お父様のせいだといえる。あの人は、望まぬ結婚相手であったお母様に対して、いつも厳しい態度だったのだ。
お祖父様がいなくなってからは、その対応というものは加速していた。
お父様はホラリーナとその娘であるイルミナをオルファン侯爵家の屋敷に招き入れて、夫人としてのお母様の立場を亡き者にしたのも、その一環といえるだろう。
そういった心労が重なって、お母様の体調は悪くなる一方だった。
「もちろん、私も出て行くつもりです。イルミナがミルガス様と婚約したので、オルファン侯爵家に留まっておく意味は、最早ありません」
「そう……そういうことなら、私も安心することができるわ」
正直な所、オルファン侯爵家に留まらせておくことは、お母様にとって良いこととは言い難かっただろう。それでもここにいてくれたのは、私のためであったといえる。
オルファン侯爵家において、私の味方はほぼいない。使用人達は、私の肩を持ってくれることはあっても、結局は正式な雇用主であるお父様には逆らえない立場であった。
お母様がいなければ、私はほぼ孤立していただろう。実際に、お母様の存在というものは心強かった。一人きりなら、ここまで戦い抜けなかったかもしれない。
「バルフェルト伯爵を頼りましょう。お母様は、伯爵夫人と懇意にされているのですよね?」
「ええ、より正確には私の母がバルフェルト伯爵夫人と友達で、その縁で私も良くしてもらっているわ。オルファン侯爵家に嫁ぐにあたっても、心配してくれて……」
お母様は、実家でもあまり良い立場ではなかったそうだ。私と同じく、母親くらいしか味方がおらず、その私にとってお祖母様にあたる人も早くに失った。
結果として実家との繋がりは、ほぼないようである。オルファン侯爵家と協力するためだったはずの婚約も、お父様が家を継いでからは意味がなくなったそうだ。
そんなお母様が唯一頼れるのが、バルフェルト伯爵夫人である。お母様にとっては、もう一人の母親と言える程の人物であるそうだ。
「迷惑をかけるのは申し訳ないけれど、今はそのようなことを言っている場合ではないわね」
「そうですね。頼れる者はなんでも頼るべきです……体調の方は、どうですか? 良いようなら、すぐにでもここから抜け出したいのですが」
「今は調子もいいわ」
「わかりました。それなら準備しますから、少々お待ちを」
お母様に言葉をかけてから、私は家を出る準備を始めた。
とにかく今は、このオルファン侯爵家から抜け出さなければならない。お父様達のことだ。時間をかければ何かしらの妨害をすることも考えられる。故に迅速な行動が、必要であるといえるだろう。
「それは……」
私は、お母様の部屋に来ていた。
私がまだ小さな頃から、お母様は体調を崩しがちであった。故に大抵の場合は、自室で休んでいるのだ。
それは、お父様のせいだといえる。あの人は、望まぬ結婚相手であったお母様に対して、いつも厳しい態度だったのだ。
お祖父様がいなくなってからは、その対応というものは加速していた。
お父様はホラリーナとその娘であるイルミナをオルファン侯爵家の屋敷に招き入れて、夫人としてのお母様の立場を亡き者にしたのも、その一環といえるだろう。
そういった心労が重なって、お母様の体調は悪くなる一方だった。
「もちろん、私も出て行くつもりです。イルミナがミルガス様と婚約したので、オルファン侯爵家に留まっておく意味は、最早ありません」
「そう……そういうことなら、私も安心することができるわ」
正直な所、オルファン侯爵家に留まらせておくことは、お母様にとって良いこととは言い難かっただろう。それでもここにいてくれたのは、私のためであったといえる。
オルファン侯爵家において、私の味方はほぼいない。使用人達は、私の肩を持ってくれることはあっても、結局は正式な雇用主であるお父様には逆らえない立場であった。
お母様がいなければ、私はほぼ孤立していただろう。実際に、お母様の存在というものは心強かった。一人きりなら、ここまで戦い抜けなかったかもしれない。
「バルフェルト伯爵を頼りましょう。お母様は、伯爵夫人と懇意にされているのですよね?」
「ええ、より正確には私の母がバルフェルト伯爵夫人と友達で、その縁で私も良くしてもらっているわ。オルファン侯爵家に嫁ぐにあたっても、心配してくれて……」
お母様は、実家でもあまり良い立場ではなかったそうだ。私と同じく、母親くらいしか味方がおらず、その私にとってお祖母様にあたる人も早くに失った。
結果として実家との繋がりは、ほぼないようである。オルファン侯爵家と協力するためだったはずの婚約も、お父様が家を継いでからは意味がなくなったそうだ。
そんなお母様が唯一頼れるのが、バルフェルト伯爵夫人である。お母様にとっては、もう一人の母親と言える程の人物であるそうだ。
「迷惑をかけるのは申し訳ないけれど、今はそのようなことを言っている場合ではないわね」
「そうですね。頼れる者はなんでも頼るべきです……体調の方は、どうですか? 良いようなら、すぐにでもここから抜け出したいのですが」
「今は調子もいいわ」
「わかりました。それなら準備しますから、少々お待ちを」
お母様に言葉をかけてから、私は家を出る準備を始めた。
とにかく今は、このオルファン侯爵家から抜け出さなければならない。お父様達のことだ。時間をかければ何かしらの妨害をすることも考えられる。故に迅速な行動が、必要であるといえるだろう。
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