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75.揺れる妹
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「……まさか、お姉様が私のお見舞いに来るなんて、思っていませんでした」
「……お見舞いというよりも、付き添いだったのだけれど、ね」
病院の病室にて、私はエムリーと対峙していた。
彼女は、以前のような憎まれ口を叩いている。それが、今の彼女がかつての彼女であるということを表していた。
それに対して、私は微妙な気持ちになっている。少し前まで、同じ顔をしていた彼女と仲良くしていたのだから、それはもう仕方ないことだろう。
「しかも、殿方が同伴なんて」
「同伴というよりも、同じ所にいたというか……」
「まあ、その辺りは些細なことです」
この場には、マグナード様もいる。ブライト殿下が、そのように取り計らってくれたのだ。
そのブライト殿下は、ロダルト様の方にあたっている。捕まった彼の様子を見てくれているのだ。
「理解しているのか理解していないのかはわからないけれど、あなたは記憶を失っていたのよ」
「……」
私の言葉に、エムリーはゆっくりと目をそらした。
記憶喪失について、彼女はどう認識しているのだろうか。それは実の所、あまりわかっていない。
その件については、お医者様からも伝えてくれているはずなのだが、それに対する反応は曖昧なものだったそうだ。
「記憶喪失の間のことを、記憶を取り戻した時に覚えていないということはあるらしいけれど、あなたもそうだということなのかしら?」
「……いえ、覚えていますよ」
「え?」
私の疑問に対して、エムリーの返答はおかしかった。
彼女の声のトーンが、先程までとは変わっているのだ。なんというか、少し高くなっている。
「あがっ……」
「エ、エムリー?」
「な、なんですか?」
「あ、あれ?」
しかし次に話しかけた時には、元のエムリーに戻っていた。
その変化に、私とマグナード様は顔を見合わせる。
「マグナード様、これは一体……」
「さて、どういうことなのでしょうか?」
「うぷっ……」
私達の会話の横で、エムリーは気持ち悪そうに口元を手で覆った。
傷が痛んだりしているのだろうか。だとしたら大変だ。お医者様を呼ばなければならないかもしれない。
「エムリー、大丈夫? お医者様を呼んだ方がいいかしら?」
「いえ、大丈夫……ああ、もう、うるさいっ」
「うるさい?」
「あ、ごめんなさい、お姉様。少し以前の……私がっ!」
エムリーの様子は、明らかにおかしかった。
なんというか、自分で自分と争っているかのようだ。その様子からは、ある程度の推測を立てることができる。
「エムリー、まさかあなたの中には……」
「ええ、私はこの夏休みにお姉様と過ごしたエムリーです……そして私が、以前のエムリー――って、私に勝手に喋らせないで!」
エムリーは、にこにこ笑った後に怒り始めた。
あのような別れ方をした訳だが、あのエムリーは消えた訳ではないらしい。もう一つの人格として、エムリーの中に残っているようだ。
「……お見舞いというよりも、付き添いだったのだけれど、ね」
病院の病室にて、私はエムリーと対峙していた。
彼女は、以前のような憎まれ口を叩いている。それが、今の彼女がかつての彼女であるということを表していた。
それに対して、私は微妙な気持ちになっている。少し前まで、同じ顔をしていた彼女と仲良くしていたのだから、それはもう仕方ないことだろう。
「しかも、殿方が同伴なんて」
「同伴というよりも、同じ所にいたというか……」
「まあ、その辺りは些細なことです」
この場には、マグナード様もいる。ブライト殿下が、そのように取り計らってくれたのだ。
そのブライト殿下は、ロダルト様の方にあたっている。捕まった彼の様子を見てくれているのだ。
「理解しているのか理解していないのかはわからないけれど、あなたは記憶を失っていたのよ」
「……」
私の言葉に、エムリーはゆっくりと目をそらした。
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その件については、お医者様からも伝えてくれているはずなのだが、それに対する反応は曖昧なものだったそうだ。
「記憶喪失の間のことを、記憶を取り戻した時に覚えていないということはあるらしいけれど、あなたもそうだということなのかしら?」
「……いえ、覚えていますよ」
「え?」
私の疑問に対して、エムリーの返答はおかしかった。
彼女の声のトーンが、先程までとは変わっているのだ。なんというか、少し高くなっている。
「あがっ……」
「エ、エムリー?」
「な、なんですか?」
「あ、あれ?」
しかし次に話しかけた時には、元のエムリーに戻っていた。
その変化に、私とマグナード様は顔を見合わせる。
「マグナード様、これは一体……」
「さて、どういうことなのでしょうか?」
「うぷっ……」
私達の会話の横で、エムリーは気持ち悪そうに口元を手で覆った。
傷が痛んだりしているのだろうか。だとしたら大変だ。お医者様を呼ばなければならないかもしれない。
「エムリー、大丈夫? お医者様を呼んだ方がいいかしら?」
「いえ、大丈夫……ああ、もう、うるさいっ」
「うるさい?」
「あ、ごめんなさい、お姉様。少し以前の……私がっ!」
エムリーの様子は、明らかにおかしかった。
なんというか、自分で自分と争っているかのようだ。その様子からは、ある程度の推測を立てることができる。
「エムリー、まさかあなたの中には……」
「ええ、私はこの夏休みにお姉様と過ごしたエムリーです……そして私が、以前のエムリー――って、私に勝手に喋らせないで!」
エムリーは、にこにこ笑った後に怒り始めた。
あのような別れ方をした訳だが、あのエムリーは消えた訳ではないらしい。もう一つの人格として、エムリーの中に残っているようだ。
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