不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?

木山楽斗

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76.思い出したこと

「私がやったことは、全て思い出しました。思い返してみると、お姉様にはひどいことばかりしていたのですね。本当に申し訳ありません」
「え、えっと、それはまあ、あなたのせいではないというか……いいえ、あなたとエムリーを切り離して考えるのが正しいのかはわからないのだけれど」
「……申し訳ないなんて、思っていません。私はただ、自分の野望のために努力していただけで――なんて言っていますけれど、もう一人の私も反省していますから」

 最近のエムリーと過去のエムリーは、お互いに主導権を握ろうとしていた。
 そのように争うのは、精神的に大丈夫なのだろうか。その点に関して、私は心配だ。

「もう一人の私にも、私の記憶は残っていますからね。まあ、今はそれを素直に言い表せないというだけで――そんなことは、決してありま――ふふ」

 何故だかよくわからないが、過去のエムリーの立場は弱かった。
 エムリーとして過ごした時間は、過去の方が長いはずであるというのに、主導権を完全に握られている。

「さてと、そんなことよりも重要なことがあります。今回の事件を起こしたロダルト様です」
「ロダルト様?」
「全てを思い出したことによって、私はわかりました。彼はお姉様に執着しているのだと」

 ついに過去のエムリーが完全に抑え込まれて、最近のエムリーが話を始めた。
 彼女の話は、中々に気になるものだ。これは聞いておく方がいいだろう。

「執着……覚えがない訳ではないわね」
「やはり、そうなのですか?」
「ええ、でも、あなたとの件があるまで、そんな感じではなかったのだけれどね……」
「ですが、彼は私との婚約の時にも、お姉様のことに触れていました。私と婚約したのもきっと、お姉様の気を引くためだったのではないかと思うのです。もっとも、それは今思えばそうだ、ということではありますが」

 ロダルト様は、私がマグナード様と話していたことに怒っていた。
 その怒りから考えると、彼が私に対してそれなりに重たい思いを抱いていたのは、間違いないと考えていいだろう。

「はっきりと言って、彼は危険な人物です。私はそれを感じ取っていましたが、お姉様には伝えていませんでした」
「まあ、それは仕方ないことね。今こうして伝えてくれただけでも充分だわ」

 ムドラス伯爵令息とヴォルダン伯爵令息が襲われたことを聞いて、エムリーはそれをしそうな人物のことを思い出した。
 それによって記憶が刺激されて、記憶を取り戻すことになった。恐らく、そういうことなのだろう。
 何はともあれ、エムリーが記憶を取り戻せたことは良かったことだ。私にとっては最近のエムリーの人格が残ったこともいいことよりではあるし、今はそれを喜ぶとしよう。
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