八つ当たりで、聖女をクビになりました。失恋した王子の乱心によって、王国は危機的状況です。

木山楽斗

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第17話 魔神の流儀

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 現れた魔神の行動に、私達は驚いていた。
 人間とほとんど変わらない見た目をした魔神は、自らを目覚めさせたスルーガ様と悪魔達を掃討してしまったのである。
 魔神は、私達には攻撃してこない。悪魔を倒して、その攻撃をやめたのだ。

「……あなたは、一体何者なのですか?」

 その沈黙を打ち破ったのは、セルトス様だった。
 彼は、少しだけ怒っている。悪人だったとはいえ、兄を傷つけた魔神に怒りを覚えているのだろう。

「私は、魔神……悪魔を統べる者」
「悪魔を統べる……」
「だが、私は悪魔が嫌いなのだ。より正確にいえば、悪しき心を持った者が嫌いという方が正しいだろうか……」
「なんですって?」

 悪魔の言葉に、私達は驚いていた。
 悪しき心を持った者が嫌い。悪魔を統べる者が、そんな考えを持っているなど思ってもいなかったからだ。
 悪魔というものは、残忍で残虐な存在だと認識していた。そのため、目の前にいる魔神の考えは、信じられないものなのである。
 だが、同時に納得もできた。悪しき心を持った者を倒したというのは、先程の彼の行動を裏付けているからだ。

「兄……そこで倒れているスルーガと悪魔を傷つけたのは、悪しき心を持っていたからだというのですか?」
「ああ、その通りだ。私は、悪しき心を見抜く力を持っている。そして、その者を裁く力もだ」
「つまり、倒されなかった者は、悪しき心を持っていなかったということですか?」
「少し違うなお前達も悪しき心を持っていないという訳ではない。その心より、正しき心の方が勝っていたというだけだ」

 スルーガ様は、悪しき心を持っていた。
 そう言われると、納得できてしまう。彼は失恋で、暴走した。それで色々な人に迷惑をかけているので、悪しき心が大きいといえるだろう。
 一方、ここにいる他の人間は優しい王子や王国の精鋭である騎士達だ。その人達が正しき心を持っているという話も納得することはできる。

「……こういうのは変なのかもしれませんが、あなたは、悪い魔神ではないようですね」
「私が悪い魔神でないかどうかは、お前達が判断すればいい」
「あなたは悪い魔神ではない。ただ、そこにいるのは私の兄です。悪人であっても、それは変わりません」
「なるほど、義があるという訳か。なばら、私を切ってもいいだろう」
「……」
「切れないか……やはり、お前は正しき心を持っているようだな」

 セルトス様は、悪魔に刃を向けられなかった。
 スルーガ様と悪魔を倒した魔神を、大義によって切ることはできなかったようだ。
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