八つ当たりで、聖女をクビになりました。失恋した王子の乱心によって、王国は危機的状況です。

木山楽斗

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第18話危機の訪れ

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　私達は、スルーガ様によって目覚めさせられた魔神と対峙していた。
　魔神は、悪しき心を持つ者が嫌いであるそうだ。悪魔を統べる者でありながら、悪魔が嫌い。それは、かなり変わっているように思える。

「さて、私を切らないというなら、話を進めさせてもらおうか」
「話を進める？」
「私が目覚めたということは、ただそれだけでは留まらない。この私の封印が解き放たれたということは、次の魔神の目覚めに関係しているのだ」
「次の魔神……？」

　魔神の言葉に、私達はまたも驚くことになった。
　魔神というのは、目の前にいる彼一人を指す言葉だと思っていた。しかし、どうやら、その認識は違ったようである。魔神という存在は、まだ他にもいるらしい。

「詳しい話は省くが、魔神は複数存在する。かつて、人間と争っていたのだが、その魔神は封印されていった。最後に封印されたのが、私ということだ」
「そんな話は……聞いたことがありません」
「魔神の力は強大だ。その力を利用しようとする者が現れないように、もみ消したのだろう。だが、そんなものはどうでもいいことだ。問題は、その封印は全ての魔神を封じ込めることで強固になっているということだ」
「……あなたが目覚めて、封印が弱まったということですか？」
「ああ、このままでは、次の魔神が目覚めてしまう。そいつは、私とは違い、人間に友好的ではない。目覚めれば大戦が起こるだろう」

　魔神は複数存在する。その情報は、とても恐ろしいものだった。
　その魔神が目覚めようとしている。それは、なんとしても食い止めなければならないことだ。
　目の前の魔神をどこまで信用できるかという問題がない訳ではない。だが、悪魔を倒してくれた彼は、充分信頼できるはずだ。
　だから、彼の言葉は真実であるだろう。そんな彼に、私は問いかけることにする。

「……その魔神の目覚めを、食い止める方法があるのですか？」
「……その方法を、お前はわかっているようだな？」
「……あなたを封印すれば、いいということでしょうか？」
「ああ、そういうことになる」

　話を聞いて、私はそれを理解していた。
　彼を封印すれば、魔神の封印は再び強固なものになる。そして、それをできるのは、恐らく私であるはずだ。

「あなたは……それでいいんですか？」
「魔神が目覚めることの方が、私にとっては嫌なことだ。奴らの悪しき心は、ここで倒れている者達とは比べものにならない。そんなもの達がはびこる世の中を、私は許容することはできない」
「お礼を……」
「礼はいらん。これは、私の望みでもある。そもそも、封印というものは案外心地いいものだ」
「それでも、ありがとうございます。あなたのおかげで、私達はまた失わないで済みます」
「……なるほど、ならば礼は受け取っておこう」

　私は、魔神にゆっくりと頭を下げた。
　大戦が起これば、また多くの人が犠牲になる。それを避けられることは、私にとって何よりも幸福なことだ。
　それを成し遂げさせてくれる彼には、感謝するべきだと思った。彼がお礼を欲していなくても、それを示すことが必要だと思ったのだ。

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