おしどり夫婦を演じていたら、いつの間にか本当に溺愛されていました。

木山楽斗

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17.大切な人

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「ラフィティアは、自慢の妻です」

 私とアルフェルグ様は、とある舞踏会にやって来ていた。
 そこで会った人達に、私の夫は高々とそう宣言している。その文言は、以前までと同じだ。
 ただ、その言葉に籠っている想いは違う。それが伝わってきたため、私は思わず笑みを浮かべてしまいそうになった。

「私の力なんて、微々たるものです。アルフェルグ様自身が努力しているからこそ、結果が伴っているのだと認識しています」

 とりあえず、私は作り物の笑みを浮かべておいた。
 本当の笑みは、この場に似つかわしくないからだ。気が抜けた笑みなんて浮かべたら、嘲笑の的になりかねない。

「お二人は、仲が良いのですね。いや、結構なことだ」
「おしどり夫婦と呼ばれるだけのことはありますわね。少し羨ましいような気もします」
「おいおい、私達だって負けていないだろうさ」
「あらあら、そうでしょうか?」

 話し相手の伯爵夫妻は、私達の言葉に豪快に笑っていた。
 見た所、この二人も仲は良さそうだ。まあ、以前までの私達のように、対外的にそうしているだけなのかもしれないが。
 とはいえ、二人が以前までの私達と同じだとしたら、結局は仲が良いということになるだろうか。そんな下らないことを考えている内に、夫妻との会話は終わっていた。

「ふう……」
「アルフェルグ様、大丈夫ですか? 少し疲れた様子ですけれど」
「いや、大丈夫だ……ありがとう」
「いえいえ」

 舞踏会という場に、アルフェルグ様は未だに慣れていないようだった。
 そういうことなら、そんな彼を支えるのが私の役目だ。

「……いつも自慢の妻だと豪語している訳だが、それは本当に事実としか言いようがないな。君がいてこその俺だ。本当にいつも感謝している」
「アルフェルグ様……それはなんというか、大袈裟ですよ。私の力なんて、本当に微々たるものなのですから」
「そんなことはないさ」

 私達は、小声でそのような会話を交わしていた。
 なんというか、とてもいい雰囲気である。ただ残念ながら、ここは公共の場だ。いくら雰囲気が良くても、このまま会話を続ける訳にはいかない。

「……少し早く帰りたくなってしまったな」
「それは……この場が苦しいということでしょうか?」
「そういう訳ではないさ。君と二人きりになりたいと、そう思ったのだ」
「……私も同じ気持ちですよ。でも、面と向かってそういうのは少し恥ずかしくて」
「そういうものか」
「だからこそ、アルフェルグ様がそう言ってくれて、嬉しいと思っています。まあ、後の楽しみのために、今は頑張りましょう」

 私とアルフェルグ様は、お互いに苦笑いを浮かべていた。
 とりあえず、この場を乗り切らなければならない。故に、この会話は一時中断だ。
 こうして私達は、再び舞踏会でやるべきことを果たすのだった。
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