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3.侯爵家に招かれて
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私の婚約というものは、あっという間になくなってしまった。
そのことに対して、伯父様や伯母様、それからルドリフやローレリアは憤っている。ベルガール伯爵家であったことは包み隠さず話したのだが、それが良くなかったのかもしれない。
伯父様はラナフィス伯爵家として、ベルガール伯爵家に抗議している。つい先日まで一つにまとまろうとしていた二家は、ここにきて対立することになってしまったのだ。
「……この度は、遠路遥々ご苦労であった。君の来訪を感謝しよう、ラナーシア嬢」
「ありがとうございます、セルナード侯爵」
そんな中、私はセルナード侯爵家の屋敷に招かれることになった。
その理由は実の所、よくわかっていない。伯父様からも特に何も告げられず、とにかくここに行くように言われたのだ。
とりあえずセルナード侯爵は、私を笑顔で迎え入れてくれている。悪いことで呼び出された訳ではなさそうなのだが、未だにわからないことは多い。
「スヴェルツ、お前も挨拶を……」
「ラナーシア嬢、お久し振りですね」
「ええ、スヴェルツ様、お久し振りです」
セルナード侯爵家の長男であるスヴェルツ様とも、私は挨拶を交わした。
社交界に身を置いているため、セルナード侯爵家の方々とも面識はある。といっても、仲が良いとかそういったことはない。挨拶を交わしたことがあるといった程度の関係性だ。
「スヴェルツ、後のことはよろしく頼む。少し準備が必要でな。ラナーシア嬢を客室に案内しておいてくれ。という訳だ、ラナーシア嬢。すまないが少しだけ待っておいてくれ」
「……ラナーシア嬢、こちらへどうぞ」
「あ、はい」
スヴェルツ様に指示を出した後、セルナード侯爵は早足で去っていた。
それを見ながら私は、疑問符を浮かべる。準備とは一体、なんなのだろうか。
ここに来てから、いや来る前から謎だらけだ。そろそろ私が招かれた理由を、知りたい所なのだが。
「スヴェルツ様、質問してもよろしいでしょうか?」
「……なんでしょうか? 私に答えられる範囲であるなら答えます」
「私は何故招かれたのでしょうか? 実の所、まだ誰からも理由を教えていただいていないのです」
「……なるほど」
とりあえず私は、スヴェルツ様に質問をしてみた。
すると彼からは、神妙な面持ちが返ってくる。もしかして、私の勘は外れていたのだろうか。スヴェルツ様の表情からは、これから良いことが起こるとは思えない。
「残念ながら、その質問には答えることができません」
「えっと、それは秘密ということですか?」
「いえ、そうではありません。私も知らされていないのです」
「え?」
「父上から、大方の段取りは伺っています。しかしその理由を尋ねても、答えてもらえませんでした。あなたの訪問、それは実に奇妙なものなのです」
スヴェルツ様は、神妙な面持ちのまま質問に対して返答してくれた。
どうやら私と彼が知っていることは、それ程変わらないらしい。スヴェルツ様の言う通り、なんとも奇妙な状況である。
そのことに対して、伯父様や伯母様、それからルドリフやローレリアは憤っている。ベルガール伯爵家であったことは包み隠さず話したのだが、それが良くなかったのかもしれない。
伯父様はラナフィス伯爵家として、ベルガール伯爵家に抗議している。つい先日まで一つにまとまろうとしていた二家は、ここにきて対立することになってしまったのだ。
「……この度は、遠路遥々ご苦労であった。君の来訪を感謝しよう、ラナーシア嬢」
「ありがとうございます、セルナード侯爵」
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とりあえずセルナード侯爵は、私を笑顔で迎え入れてくれている。悪いことで呼び出された訳ではなさそうなのだが、未だにわからないことは多い。
「スヴェルツ、お前も挨拶を……」
「ラナーシア嬢、お久し振りですね」
「ええ、スヴェルツ様、お久し振りです」
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「……ラナーシア嬢、こちらへどうぞ」
「あ、はい」
スヴェルツ様に指示を出した後、セルナード侯爵は早足で去っていた。
それを見ながら私は、疑問符を浮かべる。準備とは一体、なんなのだろうか。
ここに来てから、いや来る前から謎だらけだ。そろそろ私が招かれた理由を、知りたい所なのだが。
「スヴェルツ様、質問してもよろしいでしょうか?」
「……なんでしょうか? 私に答えられる範囲であるなら答えます」
「私は何故招かれたのでしょうか? 実の所、まだ誰からも理由を教えていただいていないのです」
「……なるほど」
とりあえず私は、スヴェルツ様に質問をしてみた。
すると彼からは、神妙な面持ちが返ってくる。もしかして、私の勘は外れていたのだろうか。スヴェルツ様の表情からは、これから良いことが起こるとは思えない。
「残念ながら、その質問には答えることができません」
「えっと、それは秘密ということですか?」
「いえ、そうではありません。私も知らされていないのです」
「え?」
「父上から、大方の段取りは伺っています。しかしその理由を尋ねても、答えてもらえませんでした。あなたの訪問、それは実に奇妙なものなのです」
スヴェルツ様は、神妙な面持ちのまま質問に対して返答してくれた。
どうやら私と彼が知っていることは、それ程変わらないらしい。スヴェルツ様の言う通り、なんとも奇妙な状況である。
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