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4.招かれた理由は
客室に通された私は、スヴェルツ様と対面して座っていた。
準備が終わるまで、私の話し相手となる。それが彼に与えられた使命であるらしい。
紅茶をお菓子を出されているが、それに口をつける気にはあまりなれなかった。それはスヴェルツ様も同じであるらしく、私達は二人で表情を強張らせている。
「スヴェルツ様、あなたは本当に何も聞かされていないのですか?」
「……ええ、本当です。私に言い渡されていることは、ラナーシア嬢を退屈させないように努める、ただそれだけのことです」
結局私は、自身の訪問に関する話をスヴェルツ様に振っていた。
彼は私からの質問に対して、端的に明瞭な答えを返してくれる。その表情は、明るいものとは言い難い。彼もこの状況に関しては、色々と気になっているようだ。
「もう一つ父上から言い渡されたのは、あなたをこの部屋――より正確にはこの屋敷から出さないということでしょうか。万が一でも帰られたら困るというのが、父上の見解です」
「もちろん、そのようなことをするつもりはありません。しかし正直な所不安なのです。これから良いことが起こる気もしませんから。その、私は色々と厄介な出自です。そのことについて、何かあるのでしょうか? つい最近、婚約破棄されたばかりですし……」
とりあえず私は、自分の特異な点が関係しているのではないかと予想していた。
セルナード侯爵家は、王家からの信頼が厚い家だと聞いたことがある。もしかしたら私の存在が社交界において不穏なものであり、それが裁かれようとしているのだろうか。セルナード侯爵が王家からそれを命じられて私が呼び出された、などということがあるかもしれない。
「婚約破棄、ですか……あの件については、あなたに非があることではありません。ベルガール伯爵家、とりわけハウガス伯爵令息が愚行を犯したまでのこと」
「ですが私は……」
「あなたの出自に関しても、別段咎められるようなものではありません。貴族において、それ程珍しいことではない。そもそもあなたは、既にラナフィス伯爵夫妻の子供として国から認められています。事実として伯爵家の血も引いている。そのことで咎められるなどということは、まずあり得ないことでしょう」
スヴェルツ様は、私の言葉を全て否定してくれた。
彼の声色は優しい。どうやらハウガス様から婚約破棄されたという事実を受けて、気遣ってくれているようだ。
それは私にとって、とてもありがたいものだった。ただ彼の言うことは、鵜呑みにできるようなことではない。
ハウガス様に限らず、私のことを快く思っていない貴族は多くいる。直接言われたことは数える程しかないが、それでも雰囲気などから感じ取れていた。
貴族というものは、体裁を気にするものだ。その中で私の出自というものは、やはり印象が悪い。皆がスヴェルツ様のようではないのだから、可能性を排除することはできないだろう。
「父上があなたを出自のことで糾弾しようというなら、私が止めます。そのようなことが許されていいはずはありません」
「スヴェルツ様……あら?」
「噂をすれば……」
スヴェルツ様は、私に対してとても心強い言葉をかけてくれた。
それに感動していた私だったが、部屋の戸を叩く音にそれを中断する。セルナード侯爵の準備が、できたということだろうか。
私とスヴェルツ様は、部屋の戸の方に視線を向けた。するとその戸は、開かれていた。こちらの返答を待つこともなく。
それが何故であるかは、すぐにわかった。戸を開けた人は、焦っていたのだ。早く客室に入る必要があったということだろう。その顔を見て、私はそう理解した。
「あ、あなたは……」
「……国王陛下が、何故ここに?」
私とスヴェルツ様は、目を丸めていた。
そこに立っているのが、我が国アルゼル王国の国王様であったからだ。
そのことに私は混乱する。何故、国王様がここにいるのだろうか。意識ははっきりしているのに、夢でも見ているのではないかと私は錯覚する程に動揺するのだった。
準備が終わるまで、私の話し相手となる。それが彼に与えられた使命であるらしい。
紅茶をお菓子を出されているが、それに口をつける気にはあまりなれなかった。それはスヴェルツ様も同じであるらしく、私達は二人で表情を強張らせている。
「スヴェルツ様、あなたは本当に何も聞かされていないのですか?」
「……ええ、本当です。私に言い渡されていることは、ラナーシア嬢を退屈させないように努める、ただそれだけのことです」
結局私は、自身の訪問に関する話をスヴェルツ様に振っていた。
彼は私からの質問に対して、端的に明瞭な答えを返してくれる。その表情は、明るいものとは言い難い。彼もこの状況に関しては、色々と気になっているようだ。
「もう一つ父上から言い渡されたのは、あなたをこの部屋――より正確にはこの屋敷から出さないということでしょうか。万が一でも帰られたら困るというのが、父上の見解です」
「もちろん、そのようなことをするつもりはありません。しかし正直な所不安なのです。これから良いことが起こる気もしませんから。その、私は色々と厄介な出自です。そのことについて、何かあるのでしょうか? つい最近、婚約破棄されたばかりですし……」
とりあえず私は、自分の特異な点が関係しているのではないかと予想していた。
セルナード侯爵家は、王家からの信頼が厚い家だと聞いたことがある。もしかしたら私の存在が社交界において不穏なものであり、それが裁かれようとしているのだろうか。セルナード侯爵が王家からそれを命じられて私が呼び出された、などということがあるかもしれない。
「婚約破棄、ですか……あの件については、あなたに非があることではありません。ベルガール伯爵家、とりわけハウガス伯爵令息が愚行を犯したまでのこと」
「ですが私は……」
「あなたの出自に関しても、別段咎められるようなものではありません。貴族において、それ程珍しいことではない。そもそもあなたは、既にラナフィス伯爵夫妻の子供として国から認められています。事実として伯爵家の血も引いている。そのことで咎められるなどということは、まずあり得ないことでしょう」
スヴェルツ様は、私の言葉を全て否定してくれた。
彼の声色は優しい。どうやらハウガス様から婚約破棄されたという事実を受けて、気遣ってくれているようだ。
それは私にとって、とてもありがたいものだった。ただ彼の言うことは、鵜呑みにできるようなことではない。
ハウガス様に限らず、私のことを快く思っていない貴族は多くいる。直接言われたことは数える程しかないが、それでも雰囲気などから感じ取れていた。
貴族というものは、体裁を気にするものだ。その中で私の出自というものは、やはり印象が悪い。皆がスヴェルツ様のようではないのだから、可能性を排除することはできないだろう。
「父上があなたを出自のことで糾弾しようというなら、私が止めます。そのようなことが許されていいはずはありません」
「スヴェルツ様……あら?」
「噂をすれば……」
スヴェルツ様は、私に対してとても心強い言葉をかけてくれた。
それに感動していた私だったが、部屋の戸を叩く音にそれを中断する。セルナード侯爵の準備が、できたということだろうか。
私とスヴェルツ様は、部屋の戸の方に視線を向けた。するとその戸は、開かれていた。こちらの返答を待つこともなく。
それが何故であるかは、すぐにわかった。戸を開けた人は、焦っていたのだ。早く客室に入る必要があったということだろう。その顔を見て、私はそう理解した。
「あ、あなたは……」
「……国王陛下が、何故ここに?」
私とスヴェルツ様は、目を丸めていた。
そこに立っているのが、我が国アルゼル王国の国王様であったからだ。
そのことに私は混乱する。何故、国王様がここにいるのだろうか。意識ははっきりしているのに、夢でも見ているのではないかと私は錯覚する程に動揺するのだった。
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