王家の血を引く私との婚約破棄を今更後悔しても遅いですよ。

木山楽斗

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12.伯爵の決断

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「陛下、この度はこのような機会を設けていただき感謝いたします」
「ふむ……ベルガール伯爵、お主には色々と言いたいことはあるが、まずはその言い分を聞かせてもらうとしようか」

 玉座に座る国王様の眼下には、ベルガール伯爵がいる。ハウガス様の父親である彼は、神妙な顔をしていた。彼を取り巻く情勢はなんとも厳しいものなのだから。
 しかしそれでも、ベルガール伯爵は前を向く。その姿からは、確かな威厳が感じられる。わかっていたことではあるが、彼はハウガス様とは違うらしい。

「陛下、既にご存知のこととは思いますが、ベルガール伯爵家の財政は良いものとは言えません。それを打開するために、ラナフィス伯爵家と婚約を結びました。しかし倅は愚かにも、その婚約を破棄してしまった……」
「ラナーシア嬢との婚約のことか。その件については、王家としても抗議したい所だ。当時は事実を公表していなかったとはいえ、正直な所快いものではない」
「……もちろん、わかっております」

 私が出自のことでセルナード侯爵家の屋敷や王城を訪ねている間に、伯父様の婚約破棄に対する抗議にベルガール伯爵は答えていたそうだ。
 彼の返信は、真摯なものであったと伯父様は言っていた。そこには彼の人柄が表れていたということだろう。
 ハウガス様の教育に関しては失敗したのかもしれないが、ベルガール伯爵本人は誠実な方だ。私は改めてそれを実感していた。

「婚約破棄というものは、貴族に属する者にとって許されることではありません。倅にはよく言って聞かせました。それが聞き入れられているのかはわかりませんが……」
「ラナフィス伯爵家から、ベルガール伯爵家から補償などがあると聞いているが、それは間違いではないのだろうか? それはあって然るものではあるが、ベルガール伯爵家にそんな余裕があるのかは怪しい所だ」
「……そのことについて提案したいことがあります」

 国王様の言葉に、ベルガール伯爵は背筋を伸ばした。彼の目には、決意のようなものが宿っているような気がする。
 国王様もそう思ったのか、その表情を強張らせている。辺りは静けさに包まれており、誰もがベルガール伯爵の言葉を待っていた。

「私は陛下に、爵位を返上したいと思っています」
「……そうか」

 ベルガール伯爵の口から出たのは、端的な言葉であった。
 その言葉に、国王様は深いため息をつく。ベルガール伯爵家の存続、それはやはり王家にとっては望ましいものではないのだろう。
 しかしそれは最早、避けられないことであるようだ。ハウガス様の婚約破棄、その影響はなんとも多大なものだった。
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