貧乏伯爵家の妾腹の子として生まれましたが、何故か王子殿下の妻に選ばれました。

木山楽斗

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7.(ゼルーグ視点)

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 予想していた通り、女性は天幕の中に運ばれてきていた。
 僕はそんな彼女が看病される様子を少し離れた場所で見ている。
 ここに僕がいるのも、民へのアピールになるはずだ。倒れた女性を心配する王子という図は、この状況に合致している。

「結果的に、僕は特に何も考えることなく体を休められるが……」
「ゼルーグ殿下、どうかされましたか?」
「いえ、なんでもありません。ローガスさん、彼女はどうでしたか?」
「どうやら、栄養失調と過労によって倒れたようです」
「そうですか……」

 女性が倒れた理由は、概ね予想していた通りの理由だった。
 この場において、それはそこまで驚くような理由ではない。というよりも、どんな理由でもこの場では起こり得るので、それで動じることはない。

「助かりそうですか?」
「ええ、恐らくは問題ないかと。医師が同行してきていたのが、功を奏しました」
「こういう事態は、想定されていた訳ですね」
「そうですね」

 ローガスさんの言葉に、僕は少し安心した。最悪の場合も、想定していたからだ。
 僕は改めて、女性の様子を窺ってみる。周りにいる医師らしき人が穏やかな笑みを浮かべているため、本当にもう大丈夫そうだ。

「ローガスさん、落ち着いたら彼女と話しても構いませんか?」
「彼女と、ですか?」
「ええ、激励をするべきでしょう? パフォーマンスにもなります」
「確かにそれはそうかもしれません。しかし、危険ではありませんか。彼女は、殿下に怪訝な視線を向けていました」

 僕の提案に、ローガスさんは少し表情を強張らせた。
 確かに、彼女と話すことは少々危険かもしれない。僕に敵意のようなものを向けていた彼女が、危害を加えてくるという可能性はある。
 ただ、もしも彼女が僕に何か思う所があるなら聞いてみたい。彼女が何を思ってあのような視線を向けたのか、その理由を知る方が今後のために重要だと思うのだ。
 もちろん、容体のこともあるのでそれは考慮する必要がある。そのため確実に話を聞くことができるという訳ではないが、そもそも何もしないという選択は避けたい所だ。

「もちろん、安全は確保するつもりです。僕には護衛をつけて、彼女が妙な動きをした場合は止めてもらいましょう」
「しかし、ここにいる護衛では心もとないかと」
「心もとない?」
「彼女の視線に、彼らは気付かなかった訳ですから」
「辛辣ですね……」

 ローガスさんは、かなりの心配性だった。
 いや、それは当然かもしれない。僕に何かあった場合、彼も危ない立場にある。安全に安全を重ねるのは、当たり前のことなのだろう。

「ローガスさんの主張はわかります。ですが、ここで助かった彼女に何も言わずに帰るというのは、少々心証が悪いでしょう。そうする方が利益があると、僕は王族の一人としてそう思っています」
「つまり、命令ということですか?」
「ええ、そうですね。これは、王族としての僕の判断です。それをあなたに覆すことはできませんよね?」
「わかりました。それでは、最善を尽くします」
「ありがとうございます」

 そこで僕は、強権を行使することにした。
 こういう言い方をすれば、彼は従うしかない。僕は王族で、彼がそれに仕える者である以上、強引な手段も取れてしまうのだ。
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