私が聖女になったからって、男と出て行ったあなたが今更母親面しないでください。

木山楽斗

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18.望みを叶えて

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 外堀を固めるということは、重要なことなのだろう。
 民衆からの支持が、国王様からの支持をもたらし、キルスタインさんの家であるヴァンダム伯爵家も認めさせた。とんとん拍子で、私とキルスタインさんの婚約が結ばれたのである。

「……まさか、このようなことになるとは」
「キルスタインさんは、私との婚約が嫌ですか?」
「いや、嫌という訳ではない。君は素敵な女性ではあると思っている。思っているが、私よりも相応しい男がいると思っているというだけで……」

 キルスタインさんは、状況にかなり困惑しているようだった。
 それについては、少し申し訳ないと思っている。この作戦は、彼の気持ちをことごとく無視するものだった。強引過ぎたといえるかもしれない。
 ただ、強引でなければキルスタインさんは受け入れてくれなかっただろう。これに関しては、仕方ないことだといえる。

「キルスタインさんは、基本的に私のことを子供として見ているのですね」
「……事実として、君はまだ子供だ」
「まあ、いいです。その認識はこれから変えていけばいいんですからね」
「君がそう言うと、本当に変えられてしまいそうで怖いな」
「怖がらなくてもいいんじゃないんですか?」

 キルスタインさんは、基本的に真面目な人だ。そんな彼がこの婚約を心から認めてくれるまでは、時間がかかるだろう。
 ただ、充分に勝算はあると思っている。なんだかんだ私と彼との付き合いは長いので、きっと大丈夫だ。私なら、きっとやれる。

「しかし、婚約が決まったからには、私は君を幸せにするつもりだ。そのことだけでは、誓っておこう。私は君を守る」
「それに関しては、今までと変わっていないような気がしますね」
「……それもそうか」

 初めて出会った時から、キルスタインさんとは私のことを守ってくれていた。
 孤児院に入ってからも、訪ねる度に私のことを気にしてくれていたし、彼はずっと守ってくれていたのだ。
 考えてみれば、それはかなりずるいような気もする。そんなことをされたら、惚れない訳がないのだから、今回の件は彼にも責任があるといえるのではないだろうか。

「でも、キルスタインさんは誰にでも優しいですからね……これから私は、気をつけなければなりません」
「何を言っているんだ?」
「いえ、なんでもありません。まあとにかく、幸せにしてください、ね?」

 私は、キルスタインさんに笑顔を向けた。すると彼は、力強く頷いてくれる。
 こうして私は、母との過去を切り捨て、愛する人と結ばれることになったのだった。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

北極星
2024.04.14 北極星

毅然とした態度で、追い返したのはキルスタインさんやんけ!?
あらすじだとキルステインになってるけど。

2024.04.15 木山楽斗

ご指摘ありがとうございます。
修正させていただきます。

解除

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