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17.聖女の評判

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「キルスタインさんには、改めて感謝しなければなりませんね。本当にありがとうございます。お陰様で、無事に事態を乗り切れました」
「……まあ、それが私の役目だったからな」

 母が私の前に現れてから数日後、私はキルスタインさんに改めて感謝の言葉をかけていた。
 彼のお陰で、私の評価は特に下がることがなかった。むしろ、悲しい過去を乗り越えて聖女まで上り詰めたと、民衆からの評価が高まったくらいだ。

 貴族の方々は、元々平民である私が聖女であるということに対して、多少なりとも反感があった。今回の件でそれはまた高まっただろう。
 しかしそれでも、表立って私を下げることはしないはずだ。民からの人気が高い私を、国王様は高く評価してくれている。その私に何かをして、王族を刺激するなんてことは避けたいはずだ。
 結果として、私の地位は盤石なものになっている。それは私にとって、嬉しいことだ。

「私の評価もそうですけれど、キルスタインさんの評価も上がりましたね。聖女を支える補佐が注目されるようになるなんて、王国でも初めてのことみたいですけれど」
「……それは私の望んでいたことではないな。正直、とても困っている。あることないこと言われてしまっているからな」
「あることないこと、ですか……」

 私は、私やキルスタインさんのことが書かれている記事に目を通していた。
 そこには、確かに色々なことが書かれている。私と彼との関係を、疑っている記事もある。

「立場を越えた関係性、ですって」
「民衆というものは、そういうのが好きだな……」
「でも、いいんじゃありませんか? キルスタインさんは貴族であるというのに、未だに婚約の一つもしていない訳ですし」
「……君は、何を言っているんだ?」

 キルスタインさんは、私の言葉に眉をひそめていた。
 彼は、ひどく面食らっている様子だ。しかし、すぐにその表情は強張った。

「待て。よく考えてみれば、君はあの時私のことをキルスタインさんと呼んだか。なんというか、全体的に親しそうな態度だったような気もするな……あれは、意図的だったのか?」
「そこまでわかっているなら、私の気持ちはおわかりですよね?」
「いやしかし、私と君は年も離れているだろう」
「そんなに離れてはいませんよ。七歳とか、そのくらいですよね?」
「身分が違う……訳ではないのか」

 私の言葉に対して、キルスタインさんは頭を抱えていた。
 助けてもらった時から、彼に対する憧れはあった。ただ、キルスタインさんは中々に堅物なので、その想いが叶う可能性は低いと思っていたのだ。
 しかしこの状況は、私の想いを叶えるのに打ってつけの状況である。これに関しては、母が唯一私にもたらしてくれた良いことだといえるかもしれない。
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