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14.好感を覚えて
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「セルーグ殿下、私は……」
「イルネシア嬢、僕はあなたと婚約することは悪い話ではないと思っています。ウェーデル伯爵家は、コークス公爵家の身内である訳ですからね。親族間の結束というものを、今よりももっと強めることができるはずです」
私が質問を投げかけるよりも前に、セルーグ殿下は答えてくれた。
彼は真っ直ぐに私の目を見ている。その真剣な表情からは、彼の真摯さというものが伝わって来るような気がした。
「ウェーデル伯爵家の実情というものを、セルーグ殿下はご存知なのですか?」
「ええ、聞いています」
「私達はもしかしたら、呪われているのかもしれません。ここ数年で、多くのものを失いましたから……また不幸が起こるかもしれません」
私は、ゆっくりと言葉を紡いでいた。
本当はそんなことを言いたくはない。だけど、言っておかなければならないと思った。ウェーデル伯爵家に相次いで不幸が起こっていることは、確かなことなのだから。
それを聞いたセルーグ殿下は、言葉を紡ぐ。なんと言うべきか、思案しているのだろうか。その表情は、少し暗い。
「イルネシア嬢、僕はやはりあなたと婚約したいと思います」
少しの沈黙の後、セルーグ殿下は言葉を発した。
彼の目は、私の目をしっかりと見据えている。やはり彼は、誠実な人なのだろう。それはその目から、しっかりと伝わってきた。
「今の言葉で、イルネシア嬢のことがよくわかりました。あなたは僕のことも思いやってくれる優しい方です。そんなあなたを僕は好ましく思いました」
「そ、そう思っていただけたなら、嬉しく思います」
セルーグ殿下が思っている程に、私が立派な人間であるかはわからない。
ただそう思ってくれているのなら、それを否定する必要はないと思った。彼との婚約というものは、私にとっては魅力的なものだ。できることなら、この婚約は成立させたい。
セルーグ殿下の立場を抜きにしても、彼ならウェーデル伯爵家を任せることができると、私は思っていた。つまり私も、彼を好ましく思っているということなのだろう。
「セルーグ殿下、私もあなたと婚約したいと思っています。あなたなら、ウェーデル伯爵家の未来を明るくできると、思いましたから」
「ええ、かつての栄華を二人で取り戻していきましょう」
「……待ってもらおうか」
私とセルーグ殿下が言葉を交わした直後に、部屋に鋭い声が響いた。
それは、カルードお義兄様の声である。声が聞こえてきた方向に視線を向けると、表情を強張らせたお義兄様がいた。
どうやら彼としては、私の婚約者としてセルーグ殿下は適切ではないらしい。これ程の優良物件なんてそうないだろうに、それでも不満ということなのだろうか。
「イルネシア嬢、僕はあなたと婚約することは悪い話ではないと思っています。ウェーデル伯爵家は、コークス公爵家の身内である訳ですからね。親族間の結束というものを、今よりももっと強めることができるはずです」
私が質問を投げかけるよりも前に、セルーグ殿下は答えてくれた。
彼は真っ直ぐに私の目を見ている。その真剣な表情からは、彼の真摯さというものが伝わって来るような気がした。
「ウェーデル伯爵家の実情というものを、セルーグ殿下はご存知なのですか?」
「ええ、聞いています」
「私達はもしかしたら、呪われているのかもしれません。ここ数年で、多くのものを失いましたから……また不幸が起こるかもしれません」
私は、ゆっくりと言葉を紡いでいた。
本当はそんなことを言いたくはない。だけど、言っておかなければならないと思った。ウェーデル伯爵家に相次いで不幸が起こっていることは、確かなことなのだから。
それを聞いたセルーグ殿下は、言葉を紡ぐ。なんと言うべきか、思案しているのだろうか。その表情は、少し暗い。
「イルネシア嬢、僕はやはりあなたと婚約したいと思います」
少しの沈黙の後、セルーグ殿下は言葉を発した。
彼の目は、私の目をしっかりと見据えている。やはり彼は、誠実な人なのだろう。それはその目から、しっかりと伝わってきた。
「今の言葉で、イルネシア嬢のことがよくわかりました。あなたは僕のことも思いやってくれる優しい方です。そんなあなたを僕は好ましく思いました」
「そ、そう思っていただけたなら、嬉しく思います」
セルーグ殿下が思っている程に、私が立派な人間であるかはわからない。
ただそう思ってくれているのなら、それを否定する必要はないと思った。彼との婚約というものは、私にとっては魅力的なものだ。できることなら、この婚約は成立させたい。
セルーグ殿下の立場を抜きにしても、彼ならウェーデル伯爵家を任せることができると、私は思っていた。つまり私も、彼を好ましく思っているということなのだろう。
「セルーグ殿下、私もあなたと婚約したいと思っています。あなたなら、ウェーデル伯爵家の未来を明るくできると、思いましたから」
「ええ、かつての栄華を二人で取り戻していきましょう」
「……待ってもらおうか」
私とセルーグ殿下が言葉を交わした直後に、部屋に鋭い声が響いた。
それは、カルードお義兄様の声である。声が聞こえてきた方向に視線を向けると、表情を強張らせたお義兄様がいた。
どうやら彼としては、私の婚約者としてセルーグ殿下は適切ではないらしい。これ程の優良物件なんてそうないだろうに、それでも不満ということなのだろうか。
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