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18.手を取り合って
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「……愛しています」
「……え?」
「私はあなたを愛しています」
キルクス伯爵令息は、なんとも端的に言葉を発していた。
それにシェリリアは、目を丸めている。私とリオレス殿下も同じだ。そのあまりに唐突な言葉には、驚きを隠せない。
彼の思いに関しては、知っていた。王城を訪ねて来た日に、その旨は聞いていたからだ。
ただまさか、いきなりそれを言うとは思っていなかった。これは彼なりの戦略であるということなのだろうか。
「婚約してから、あなたとは何度かお話ししましたね。その中で私は、あなたに惹かれていきました。それをお伝えしておきたかったのです」
「……そ、そうでしたか」
流石のシェリリアも、キルクス伯爵令息の言葉に動揺しているようだ。彼女にしては珍しく、目を丸めて私やリオレス殿下の方にも視線を向けている。
その中でキルクス伯爵令息は、なんとも冷静な顔をしていた。愛の告白をしたというのに、彼は照れてなどいない。その視線は、真っ直ぐにシェリリアを見つめている。
「父上は、セルダン子爵家との婚約を破棄しました。それはラウヴァン殿下の差し金でした」
「え、ええ、それは聞いています……」
「そのことについては、申し訳ありません。セルダン子爵家に対して、カウタス伯爵家は不義理を働きました。父上に代わってお詫びいたします」
「その件については、お気になさらず。当家に所属するソネリアの意思も絡んでいたことですから……」
キルクス伯爵令息の冷静な態度に、シェリリアも段々と落ち着いてきたようだった。
彼女は、目の前にいる元婚約者をしっかりと見つめている。愛の告白などという大それたことをされたのだ。その思いに関して、ある程度は応えようということだろうか。
そもそも彼女から、婚約者について悪評などは聞いたことはない。シェリリアがそういったことを主人たる私に言わないというだけだったとも考えられたが、少なくとも彼女はキルクス伯爵令息に好感くらいは抱いていたのではないだろうか。
「……セルダン子爵家に許していただけるなら、カウタス伯爵家はまた婚約をしたいと思っています」
「それは……」
「ラスタード王国は、今混乱しています。我々はその混乱の一端を担っていた。それなら責任を取らなければなりません。しかしそれは、命を捨てるということではないはずです。どうか私の手を取ってくださいませんか?」
「キルクス様……」
キルクス伯爵令息から差し出された手を、シェリリアは見つめていた。
それから彼女は、私の方を見る。問いかけてきているのだろう。それに応えて良いのかどうかということを。
私は、ゆっくりと頷いた。キルクス伯爵令息の言っていることはもっともだ。責任を取るというなら、元通りの方法で取ってもらいたいものである。
ヤウダン公爵家の腹心として、ラスタード王国の貴族と手を取り合う。セルダン子爵家には、そういう形で責任を取ってもらうとしよう。
「……え?」
「私はあなたを愛しています」
キルクス伯爵令息は、なんとも端的に言葉を発していた。
それにシェリリアは、目を丸めている。私とリオレス殿下も同じだ。そのあまりに唐突な言葉には、驚きを隠せない。
彼の思いに関しては、知っていた。王城を訪ねて来た日に、その旨は聞いていたからだ。
ただまさか、いきなりそれを言うとは思っていなかった。これは彼なりの戦略であるということなのだろうか。
「婚約してから、あなたとは何度かお話ししましたね。その中で私は、あなたに惹かれていきました。それをお伝えしておきたかったのです」
「……そ、そうでしたか」
流石のシェリリアも、キルクス伯爵令息の言葉に動揺しているようだ。彼女にしては珍しく、目を丸めて私やリオレス殿下の方にも視線を向けている。
その中でキルクス伯爵令息は、なんとも冷静な顔をしていた。愛の告白をしたというのに、彼は照れてなどいない。その視線は、真っ直ぐにシェリリアを見つめている。
「父上は、セルダン子爵家との婚約を破棄しました。それはラウヴァン殿下の差し金でした」
「え、ええ、それは聞いています……」
「そのことについては、申し訳ありません。セルダン子爵家に対して、カウタス伯爵家は不義理を働きました。父上に代わってお詫びいたします」
「その件については、お気になさらず。当家に所属するソネリアの意思も絡んでいたことですから……」
キルクス伯爵令息の冷静な態度に、シェリリアも段々と落ち着いてきたようだった。
彼女は、目の前にいる元婚約者をしっかりと見つめている。愛の告白などという大それたことをされたのだ。その思いに関して、ある程度は応えようということだろうか。
そもそも彼女から、婚約者について悪評などは聞いたことはない。シェリリアがそういったことを主人たる私に言わないというだけだったとも考えられたが、少なくとも彼女はキルクス伯爵令息に好感くらいは抱いていたのではないだろうか。
「……セルダン子爵家に許していただけるなら、カウタス伯爵家はまた婚約をしたいと思っています」
「それは……」
「ラスタード王国は、今混乱しています。我々はその混乱の一端を担っていた。それなら責任を取らなければなりません。しかしそれは、命を捨てるということではないはずです。どうか私の手を取ってくださいませんか?」
「キルクス様……」
キルクス伯爵令息から差し出された手を、シェリリアは見つめていた。
それから彼女は、私の方を見る。問いかけてきているのだろう。それに応えて良いのかどうかということを。
私は、ゆっくりと頷いた。キルクス伯爵令息の言っていることはもっともだ。責任を取るというなら、元通りの方法で取ってもらいたいものである。
ヤウダン公爵家の腹心として、ラスタード王国の貴族と手を取り合う。セルダン子爵家には、そういう形で責任を取ってもらうとしよう。
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