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20.帰ってきた男
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「これは……」
「まさか……」
私とリオレス殿下は、目の前の光景に目を丸めていた。
広い客室の一室の中には、一人の男性がいる。その男性のことは、よく知っていた。無精ひげが生えているし、髪はぼさぼさで服はボロボロであるが、彼は間違いなくラウヴァン殿下だ。
「……久し振りだな、二人とも」
ラウヴァン殿下は、なんとも不機嫌そうに言葉を発してきた。
それは当然のことだろう。彼は現在、縄で拘束されている。周りには兵士に囲まれていて、とても身動きが取れる状況ではない。
「……ナシャール王国から、帰って来ていたようなのだ」
「父上、それは……」
「色々と上手くいかなかったらしい」
国王様は、ゆっくりと首を横に振った。
それは恐らく、ラウヴァン殿下の行動に呆れ果てているのだろう。駆け落ちしておいて、上手くいかなかったら戻ってきた。彼がここにいるのは、おおよそ最低の理由からだった。
「父上、これは一体どういうことなのですか? 何故僕が拘束されなければならないのです」
「……兄上、それがわからない程あなたは愚かなのですか?」
「リオレス? それはどういうことだ?」
ラウヴァン殿下は、なんとも乱暴な口調であった。
王太子であった頃の彼は、もう少し紳士的だったのだが、変わってしまったのだろうか。それともこちらが本性なのかもしれないが。
「兄上は、ソネリア嬢と駆け落ちしたのですよ。ユーリア嬢を裏切り、身勝手にも国を出て行った。それがどれだけ恥知らずなことが……」
「黙れ! 僕はこの国の王太子なのだぞ?」
「寵愛していた侍女と駆け落ちした王太子殿下が今更戻ってきた所で、受け入れられるとお思いですか? ラウヴァン殿下、もうこの国にあなたの居場所などないのですよ」
「な、なんだと……?」
私とリオレス殿下は、ラウヴァン殿下に言葉をかけた。
すると彼の勢いは弱まっていく。どうやら、何もわかっていないという訳でもないらしい。
「虚勢を張っていたという訳ですか……兄上、あなたという人は……」
「そんな目で僕を見るな……くそっ、こんなはずじゃ……ナシャール王国で上手くいってさえすれば……」
「ラウヴァン、これ以上恥を晒すな……安心しろ。お前に待っている道は、ナシャール王国で待ち受けていたものよりも余程良いものだ。無論、お前という存在は抹消されるし自由もない。それでも命が助かっただけでも、ましだと思え」
「ううっ……」
国王様の言葉に、ラウヴァン殿下は項垂れていた。
これから彼は、国の所有する離島に送られるだろう。そしてそこから、二度と戻って来ることはない。王家の監視の元で、自由を奪われ一生を終えるのだ。
それに反発した場合、王家はすぐに非常な判断を下す。ラウヴァン殿下とて、それがわからない程愚かではないだろう。
とはいえそれは、そこまで嘆くようなことではないといえる。少なくとも生きて、衣食住は保証されるのだから、しでかしたことから考えればなんとも恵まれているものだ。もちろん苦しいこともあるのだろうが。
「まさか……」
私とリオレス殿下は、目の前の光景に目を丸めていた。
広い客室の一室の中には、一人の男性がいる。その男性のことは、よく知っていた。無精ひげが生えているし、髪はぼさぼさで服はボロボロであるが、彼は間違いなくラウヴァン殿下だ。
「……久し振りだな、二人とも」
ラウヴァン殿下は、なんとも不機嫌そうに言葉を発してきた。
それは当然のことだろう。彼は現在、縄で拘束されている。周りには兵士に囲まれていて、とても身動きが取れる状況ではない。
「……ナシャール王国から、帰って来ていたようなのだ」
「父上、それは……」
「色々と上手くいかなかったらしい」
国王様は、ゆっくりと首を横に振った。
それは恐らく、ラウヴァン殿下の行動に呆れ果てているのだろう。駆け落ちしておいて、上手くいかなかったら戻ってきた。彼がここにいるのは、おおよそ最低の理由からだった。
「父上、これは一体どういうことなのですか? 何故僕が拘束されなければならないのです」
「……兄上、それがわからない程あなたは愚かなのですか?」
「リオレス? それはどういうことだ?」
ラウヴァン殿下は、なんとも乱暴な口調であった。
王太子であった頃の彼は、もう少し紳士的だったのだが、変わってしまったのだろうか。それともこちらが本性なのかもしれないが。
「兄上は、ソネリア嬢と駆け落ちしたのですよ。ユーリア嬢を裏切り、身勝手にも国を出て行った。それがどれだけ恥知らずなことが……」
「黙れ! 僕はこの国の王太子なのだぞ?」
「寵愛していた侍女と駆け落ちした王太子殿下が今更戻ってきた所で、受け入れられるとお思いですか? ラウヴァン殿下、もうこの国にあなたの居場所などないのですよ」
「な、なんだと……?」
私とリオレス殿下は、ラウヴァン殿下に言葉をかけた。
すると彼の勢いは弱まっていく。どうやら、何もわかっていないという訳でもないらしい。
「虚勢を張っていたという訳ですか……兄上、あなたという人は……」
「そんな目で僕を見るな……くそっ、こんなはずじゃ……ナシャール王国で上手くいってさえすれば……」
「ラウヴァン、これ以上恥を晒すな……安心しろ。お前に待っている道は、ナシャール王国で待ち受けていたものよりも余程良いものだ。無論、お前という存在は抹消されるし自由もない。それでも命が助かっただけでも、ましだと思え」
「ううっ……」
国王様の言葉に、ラウヴァン殿下は項垂れていた。
これから彼は、国の所有する離島に送られるだろう。そしてそこから、二度と戻って来ることはない。王家の監視の元で、自由を奪われ一生を終えるのだ。
それに反発した場合、王家はすぐに非常な判断を下す。ラウヴァン殿下とて、それがわからない程愚かではないだろう。
とはいえそれは、そこまで嘆くようなことではないといえる。少なくとも生きて、衣食住は保証されるのだから、しでかしたことから考えればなんとも恵まれているものだ。もちろん苦しいこともあるのだろうが。
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