入れ替わりのモニター

廣瀬純七

文字の大きさ
22 / 32

やんちゃな園児

しおりを挟む
翌日も、保育園では元気いっぱいの子どもたちが走り回っていた。  

沙織(拓也の体)は、昨日のママのおっぱいが飲みたいと突然泣きだした園児の「ママのおっぱい事件」で母性を発揮したことを少し気にしながらも、今日も保育士として奮闘していた。  

——が、この日はいつも以上に手強い相手がいた。  

「あはははは!!」 

「うわっ、ちょ、待てっ! ユウキ!! 廊下を走るな!!」  

そう叫ぶ沙織(拓也の体)の前を、園児のユウキくん(4歳)が猛ダッシュで駆け抜けていった。  

彼はこの保育園の最強のやんちゃ坊主だ。  

先生の話は聞かない、注意されてもケラケラ笑って逃げる、さらには登ってはいけない場所に登る——と、まるで動物園のチンパンジーのような自由奔放さだった。  

「うわーい!!」  

ユウキくんはさらに加速して、教室の隅にあった積み木のタワーに向かって突進。  

**ドガシャーン!!**  

「「あぁぁぁ!!」」  

他の園児たちが悲鳴をあげる中、積み木のタワーは無残にも崩れ落ちた。  

「こらぁ!! ユウキ!! みんなが頑張って作ったやつを壊すなー!!」  

「えへへへ、先生捕まえてみてよー!」  

「こ、この……!」  

沙織(拓也の体)は、完全に彼のペースに巻き込まれていた。  

(**な、なんだこいつ……俺が保育士になってから、こんな手強いガキは初めてだぞ!?**)  

自分の体は女性になっているとはいえ、中身は筋トレもしている男の拓也。  

本気を出せば4歳児なんて軽く捕まえられる——と考えていたが、**ユウキくんの動きは異常なほど素早い**。  

(ま、負けるわけにはいかん!!)  

沙織(拓也)は本気で追いかけ始めた。  

「待てぇぇ!!」  

「わーい、鬼ごっこだー!」  

「鬼ごっこじゃねえ! ユウキを捕まえるだけだ!!」  

「えーい!」  

ユウキくんは逃げながら、机の下に潜り込んだり、他の先生の影に隠れたり、時にはジャンプして方向転換するなど、まるでミニサイズの忍者のような動きで逃げ続ける。  

(くそっ、男の体だったらすぐに捕まえられるのに!!)  

元々運動神経がいい拓也だったが、今の体は女性の沙織のもの。  

男性の時よりも走るのが少し遅く、体力の減りも早い。  

「はぁ……はぁ……」  

「先生、もう疲れたの? だっさ~!」  

「ぐぬぬ……!」  

**こんな4歳児に煽られるとは……!!**  

「よし……なら作戦変更だ!」  

沙織(拓也)は急に背筋をピンと伸ばして、冷静な表情を作った。  

そして、落ち着いた声で——  

「ユウキ……先生、本当に怒ったぞ」

「えっ?」  

「もう、ユウキは遊びたくても、先生は知らないよ。先生は怒った時、話をしなくなるんだよ……」  

「……う、うそだー!!」  

「本当に怒ったら、目も合わせないし、もう遊んであげないよ」  

「……え……」  

「さようなら……」

そう言って、沙織(拓也)はフイッと背を向けた。  

——すると。  

「や、やだ!! 先生!! ぼく、いい子になるから遊んでよ!!」  

ユウキくんが泣きそうな顔で飛びついてきた。  

「先生、怒らないでぇぇ!!」  

「……ふふっ、じゃあ、先生の話をちゃんと聞ける?」  

「き、聞く……!」  

「よし、じゃあ今日はもう走らない約束ね?」  

「うん……!」  

(よし! 言葉の駆け引きで勝った!!)  

沙織(拓也)は、心の中でガッツポーズをした。  

子ども相手には体力勝負より、心理戦の方が有効。  

この調子で、やんちゃキッズたちを少しずつコントロールしていこう——そう誓うのだった。  

——
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

リアルメイドドール

廣瀬純七
SF
リアルなメイドドールが届いた西山健太の不思議な共同生活の話

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

未来への転送

廣瀬純七
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

ボディチェンジウォッチ

廣瀬純七
SF
体を交換できる腕時計で体を交換する男女の話

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

処理中です...