リボーン&リライフ

廣瀬純七

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下校のふたり

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放課後の校門前。
日が傾きはじめ、オレンジ色に染まる坂道。
生徒たちは部活や塾、あるいはコンビニに向かって三々五々散っていく中――

「……おい」

不意に背後から声をかけられて、優衣はビクッとした。

(え、え? この声は――)

振り返ると、そこにはさっきまで教室で黙々と弁当を食べていた男子――\*\*中島優斗(オリジナル)\*\*が立っていた。肩にカバンを引っかけ、表情はぶっきらぼう。いつもより少し目つきが鋭い。

「お、おつかれさま……?」

とりあえず優衣はそう言ってみるが、優斗は前置きもなく切り込んできた。

「お前さあ、俺の家の隣に引っ越して来たんだけど……前はどこに住んでたんだよ?」

(はあああああ!?!?)

心臓が凍りつく。
よりによって、**よりによって**だ。
確かに今の優衣の住所は“中島優斗”が昔住んでいた家の隣――つまり、**実家の隣**。
当然、向こうにとっては「新しく越してきた女子」扱いになる。

(うわやべぇこれ完全に詰んでる案件じゃん……!!)

顔に出すわけにもいかず、とりあえず笑ってみる。

「あー、えっとね……ちょっと遠くて……」

「“ちょっと”ってどこだよ。県内? 県外?」

(ちょっ、お前昔からそういうところだけ妙に鋭いよな!?)

「うーん……まあ、県……外だったかも?」

「……は?」

「でも、ほらほら、引っ越しってさ、親の都合とかいろいろあるしさ!」

(苦しい! でも引き返せない!!)

優斗は眉をひそめてじーっと優衣を見つめる。

(やばいやばいやばい、目を合わせたらバレる気がする……ってバレたら何? いや中身が30歳の元自分とか絶対信じてもらえないしホラー案件だし……!)

そのとき、優斗がぽつりとこぼした。

「……お前、ちょっと変だよな」

「へ、変ってなにが?」

「なんか……話し方とか、妙に“大人”っぽい。クラスの女子と、なんか違う」

「えっ、それって褒めてる? それともディスってる?」

優衣が焦りながら冗談めかして聞き返すと、優斗はむすっとした顔のまま、そっぽを向いた。

「……別に。気になっただけ」

そう言って、ふいにくるりと背を向けた。

「あ、ちょっと、どこ行くの?」

「……家。お前も、どうせあっちだろ」

そう言って坂道を下っていく後ろ姿。

優衣はその背を見送りながら、ため息をついた。

(まったく……あの頃の俺、ほんとにめんどくさい奴だったな……)

けれど、どこか――胸の奥が少しだけあたたかかった。

自分と向き合うということは、過去の自分の“ややこしさ”にも付き合っていくこと。
それでも、たぶん今の自分なら――うまくやれる気がした。

「……はあ、今日も命綱ギリギリだった」

つぶやきながら、優衣もまた、静かに坂を下っていった。

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