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姉の優美
しおりを挟む「……ただいまー……」
靴を脱ぎながら、優衣は思わず今日一日の疲れを息にこめて吐き出した。
(はー……中身30歳とは思えないほど、今日も青春したな……)
かつて自分だった男子・中島優斗との昼食、放課後の質問攻め。しかもその後、なぜか**一緒に坂道を帰ってきた**というイベントまで発生して――
(うっかり距離縮まっちゃってるよなあ、これ……)
そう思いながら廊下を歩いていると、リビングの方からけたたましく声が飛んできた。
「おっかえりー! あらあら、妹ちゃん、今日は一段とお疲れ顔ですねぇ~?」
(うわ、出た)
リビングのソファに寝そべっていたのは、優衣の姉・**中島優美(20)**。
大学生で、テンション高め、ノリ軽め、人の恋路(妄想込み)に首を突っ込みがちな性格。
「ねぇねぇ~、ちょっと聞いていい~?」
優美はにやにやと悪魔のような笑みを浮かべながらリモコンを置いた。
「今日さ、下校のとき玄関の窓から見ちゃったんだけど……優衣ちゃん、男の子と二人で帰ってたよね~? しかも、ちょっと後ろ歩きつつも、なんか距離近くない? ね? 彼氏? 初日で彼氏??」
「ち、ちがっ、ちがうよ!! そういうんじゃないし!」
「へぇ~~~?」
優美はソファから起き上がり、スリッパをパタパタと鳴らしながら迫ってくる。
「だってさ~、相手の子、背もちょうどいいし、な~んか君、うっすら笑ってたじゃん?」
「いやいやいやいや!! あれは別に……その……えっと、たまたま隣の家だし、偶然一緒に帰る流れになって……」
「ん? 隣の家? それって、もしかして――中島くん? 男の子の?」
「うわっ、名前までチェックしてるの!?」
「ふふーん♪ 親が『同じクラスになったらしいよ~』って言ってたし~。しかも同じ苗字とか運命じゃん?」
(※ちなみに、元々の“実家の隣”なので、実際には運命でもなんでもない)
優美はさらに顔を近づけてきて、あからさまな声色で言った。
「ねぇ~、優衣ぃ~……もう彼氏できたんだぁ……?」
「ちっ、ちがうったら!! もうやめてよっ!」
優衣は顔を真っ赤にして、リビングから逃げるようにして自分の部屋に駆け込んだ。
「青春っていいねぇ~~~!!」
姉の声が背後から響く。
(やかましいわ……!!)
ベッドに顔から突っ伏しながら、優衣は枕を殴った。
(よりによって姉に冷やかされるなんて……いや、でも確かに、今日はちょっとドキドキしたかも……)
優斗の無愛想で不器用な態度。けれど、どこか目が離せない自分。
(あの頃の自分に、こんな気持ちになるなんて……なんか、いろいろ複雑すぎるんだけど)
そして――
(この先、どうなるんだろ……私と、優斗)
ほんの少しだけ、胸が高鳴るのを、優衣は否定できなかった。
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