リボーン&リライフ

廣瀬純七

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優衣の決意

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向かい合わせに座って昼食を食べるふたり。
教室の中では、あちこちで笑い声やお箸の音が鳴っているが――このテーブルだけは、やけに静かだった。

優斗は相変わらず、無言で弁当をつついている。
いや、彼なりに気を使っているのか、たまに「うん」とか「へぇ」とか反応はある。
でもそれが全部、\*\*過去の自分の「テンプレ反応」\*\*であることを、優衣は知っている。

(うわ~、こいつほんとにしゃべんないな~。ていうか、これ俺だったんだけどさ!)

黙ってても気まずいし、かといって話しすぎると逆に引かれるのも分かる。

(これ、難易度高すぎない? 自分と仲良くなるって、つまり自分のクセ全部知ってるから、対処が超めんどくさい……!)

それでも、今の優衣は、ひとつだけ信じていた。

(この子は――いや、“私は”、誰かに話しかけてもらうのをずっと待ってたんだ)

だからこそ、声をかけたのだ。

「……ねえ、中島くんって、さ。夢とか、ある?」

突然の質問に、優斗は箸を止めた。
しばらく沈黙があって、ボソッと返ってきたのは――

「……ない」

「即答かぁ……」

「いや、考えたことはあるけど……何かになりたいとか、特に思ったことなくて。目立つのも得意じゃないし……うまくやれる気もしないし……」

そこまで言って、ふと口を閉じる。

(あ~~~!!! それな~~!!!)

内心、めちゃくちゃ分かる。というか、**それ全部、自分の過去の脳内そのままだから!**
でも、それを言ってしまえば元も子もない。

「……でもさ、なんかひとつくらい、“やってみたい”って思うこと、なかった?」

優斗は少し考えて――目線をそらしながら、ぽつりと漏らした。

「……もし、生まれ変われるなら……なんか、別の自分になってみたかったなって」

(……ッ!!)

優衣の手が、思わずスプーンを握りしめる。
心の奥を、グサリと突かれたような感覚。

(それ、今の私じゃん……)

まさに、今その願いを叶えてこうしてここにいる、自分。
思わず言葉に詰まりかけたが、優衣は優しく微笑んで言った。

「……そっか。そういうのって、案外叶ったりするかもよ?」

「……は?」

「なんでもないっ」

バレないように笑顔でごまかす。
自分で自分に人生アドバイスをするこの妙な構図。だが、それでも――

「……なんか、変な子だな、君」

優斗がポツリと漏らしたその言葉に、優衣はニヤリと笑った。

「よく言われる。中身、おっさんってね」

「え?」

「冗談だよ~ん☆」

そんなこんなで、沈黙ばかりだった机の上には、ようやくひとつの笑い声が生まれた。

---

優衣は決めた。
この優斗に、昔の自分に、少しずつ寄り添っていくことを。
ただ見守るだけじゃなくて、ちゃんと**友達として、導いてあげることを**。

それは、かつてできなかった“自分への救済”であり――
いま、彼女自身が新たな未来へ踏み出す第一歩でもあった。

---
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