リボーン&リライフ

廣瀬純七

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ランチタイム

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昼休み。教室のざわめきの中、優衣はお弁当を開く手を止めて、視線だけをこっそり斜め後方へと向けた。

(……いる)

窓際、後ろから二番目の席。
あの場所にはやはり、\*\*中島優斗(オリジナルVer.)\*\*がいた。
誰とも話さず、スマホも出さず、机に突っ伏してじっとしている。相変わらずの“透明人間スキル”を発揮中だ。

(ああもう、懐かしすぎてツッコミたくなる……お前、高校入学したてなんだからもうちょっと元気出せよ……)

そう思いながらも、なぜか胸がざわついていた。

(あれが“昔の自分”だと思うと、なんか放っておけないな……)

それに――今、自分は「他人」として、彼と接することができる。
自分で自分にアドバイスを送るようなこともできるかもしれない。

(これはチャンスかも……!)

決心した優衣は、お弁当をそっと閉じて席を立った。
できるだけ自然に、でも慎重に歩み寄る。

(心臓バクバクなんだけど……なにこれ、緊張する……)

「ね、ねえ……」

呼びかけると、優斗はびくっと肩を跳ねさせた。
顔を上げ、きょとんとした目で優衣を見つめる。

「……なに?」

(うわ、うわ、しゃべった。自分の声、こんなだったわ……)

「えっと……よかったら、いっしょにお昼食べない?」

「……俺と?」

驚いたように眉を上げる優斗。
その反応が、まるで数年前の自分と寸分違わなくて、優衣は思わず笑ってしまった。

「あ、いや……別に変な意味じゃなくてさ。私も、あんまりまだ友達多くないし……なんか、一人で食べてるの見てたら、ちょっと気になっちゃって」

(うわあ……めっちゃ“距離を詰める女子”してる!)

「……別に、いいけど」

「ほんと? よかった~」

そう言いながら、優衣は優斗の向かいの席にちょこんと座った。

優斗はまだ少し警戒したような表情をしていたが、おそるおそる自分の弁当箱を開けた。

「……ていうか、君、名前なんだっけ?」

「あ、あたし? 中島……優衣」

「……えっ」

優斗の手がピタッと止まる。

「え、なに?」

「……いや、なんか……名字、同じだなって」

「へぇ~! じゃあ、もしかして親戚かもね~!」

(おおお落ち着け自分。動揺を誤魔化すギャルノリは危険だ)

優斗は「ふーん」と曖昧に返し、またもくもくと食べ始めた。

会話はぎこちない。でも、優衣の心の中は妙な充実感で満たされていた。

(この子が、数年後ああなるのか……いや、させない。あたしが、この子にちゃんと関わってあげる。今度こそ、自分を救ってやるんだ)

そう、これは単なる興味じゃない。
“自分自身への救済”という、ちょっとおかしくて、でも誰より本気な使命感。

それは、やり直し人生の中で生まれた――新しい感情だった。

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