かわいそうな欲しがり妹のその後は ~ 王子様とは結婚しません!

柚屋志宇

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78話 王宮女官(3)

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「結婚……」

 カトレア夫人は深く考え込むような難しい表情を浮かべました。

 カトレア夫人は父の愛人でしたので、デイジーという子はいますが未婚です。
 結婚には複雑な思いがあるのかもしれません。

「いえ……私はもうこの歳ですし……結婚は難しいでしょうから……」

 カトレア夫人は自分を卑下するかのようにモジモジとしながらも、結婚の話に興味がありそうな素振りを見せました。

 すかさずバジル様がそこに切り込みました。

「王宮には独身の男性もいますから、カトレア夫人ほどお美しければ結婚相手はいくらでも見つかると思います。カトレア夫人が縁談をお望みであれば、私から母に頼みましょう。すぐにでもご紹介できると思います」
「え?! すぐに?!」
「はい!」
「で、でも……独身の男性は、お若いお方ばかりなのでしょう?」
「いいえ、仕事漬けで、婚期を逃してしまった文官や武官はそれなりに居るのです。釣り合う相手がいれば結婚したいと望んでいる独身の男性は何人もおります」

 バジル様は自信に満ち溢れた朗らかな笑顔で、カトレア夫人に言いました。

「私の母は、婚期を逃した文官や武官との縁談を、女官に紹介して、お見合いをさせることもあります。母は何組ものご夫婦の結婚のお手伝いをしております」
「……っ!」

 バジル様のお話に、カトレア夫人の目が爛々と輝き始めました。

「もしカトレア夫人がお望みなら、すぐにでも母に縁談を探してもらいましょう」
「そ、そんな……私なんかが……」

 カトレア夫人は口では遠慮しながらも、満更でもない顔をしました。

「王宮女官は、王家が身元を確認した女性となりますので、結婚に際して身元を怪しまれることはありません。良い家との縁談にも有利に働くでしょう」

「……」

 カトレア夫人は野望に燃えているかのような瞳で、考え込みました。

「……結婚……」

 真剣な表情で考えを巡らせている様子のカトレア夫人に、デイジーがおずおずと質問しました。

「……母さん、結婚するの?」
「私も一度くらい結婚してみたいのよ。この歳じゃ厳しいと思っていたけれど、王宮女官の看板があれば……行けるかも!」

 カトレア夫人はぐっと拳を握りしめました。

「そうですとも!」

 ここぞとばかりにバジル様は言いました。

「王宮には独身の男性は多くおります。武官も文官も王宮に仕えていますから身元が確かな者ばかりです。出入りしている商人たちも一流です。彼らも結婚相手には、身元が確かで教養のある女性を求めていますから、女官となれば縁談はいくらでもあります」

 カトレア夫人は決意を固めたような表情で顔を上げました。

「その話、乗ったわ!」
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