43 / 219
第4章 突撃! 魔界統一編 前編
第43話 鬼神 エルガ
しおりを挟む闘いの場に辿り着いてみると、そこには村長がいた。
「どうだ? 闘っているのは……ドウムか」
「これは……、ソウ様に隠し事は出来ませぬな。えぇ、ドウムが闘っているのですが、形勢が良くありませんでな。ワシも心配で見に来たのですじゃ」
「フム、敵にそれほどの実力者がいたのか」
「それですじゃ。彼奴は魔王軍六大将の一人、鬼神のエルガと申しまして……、かつてこの魔界では格闘戦において随一と言われておりました」
「かつて?」
「今はソウ様がいらっしゃいますからな。それに、ドウムがあれだけ闘えているのですじゃ。ワシだって抵抗くらいは出来ますし、二人がかりなら倒すこともできましょう」
「フム、そうか」
ドウムは渾身のパンチを放ち、それをエルガが肘と膝で挟むように防ぐが、ドウムのパンチの威力にエルガも傷ついている。
そして、エルガの蹴りを寸での所で防御したドウムだが、蹴りの勢いに負け、十メル以上も吹き飛んだ。
「惜しいな。それほどの実力があるとは……、どうだ? 俺に仕えぬか?」
エルガはドウムの顔を見据え、本気の顔で勧誘をする。
「へっ、言っただろ? 俺は大魔神、ソウ様の一番弟子だ! 二君に仕える気はねぇよ!」
「惜しい、それほどの才。ここで朽ちるにはあまりにも……。だがこれは尋常な勝負だ。恨むなよ」
「へっ、誰が恨むもんかよ!」
ドウムは口の中に溜まった血を吐き捨て、エルガに渾身の突きを放っていく。
「うぅむ、エルガとやらがこれほどの武人だとは……。誤算じゃったですの」
「あぁ、エルガがこれほどの武人でなければ、二対一ですぐに片づいたのだろうがな」
「そこなんですじゃ。実の所、ドウムもワシが来ていることには気付いておりましての。じゃが、あのエルガとは一対一で勝負したいと目で訴えておりました。無論、ワシも思いっきりやらせてやりたいと思いましての。死ぬ前に割って入ろうと思っておりましたが……」
「あぁ、ドウムはここで死ぬには惜しい男だ。最後は俺が仲裁に入ろう」
「助かりますじゃ」
ドウムの渾身のパンチは受け流される、と同時に体を掴まれ、一本背負いの体勢で投げられた。
二、三十メルほども投げられ、地面に背中から叩きつけられるが、ドウムは苦悶の表情を浮かべながらもまだ立ち上がった。
「ま、まだだっ! 俺はまだ闘えるっ!」
「その意気や良し! 来い! 決着をつけてやる!」
俺の目から見ても二人の実力差ははっきりとしていた。勝負らしくなっているのはレベルにそこまで差がないからだろう。だが、肝心の武術に差があった。
「戦場で生きてきたエルガの武術、本物だな」
「はいですじゃ、さすがは魔界一の武術家。あの者を倒すには理外の攻撃が必要でしょうな」
ドウムが打って出た。全ての魔力、体力、気力を拳に乗せた、最後の一撃だ。
それに呼応するようにエルガも拳に己の全てを注ぎ、打ち放つ。
ドガァァァァァッッッ!!!
空気は震え、大地は抉れ、周りの兵たちは伏せてその衝撃に耐えている。
爆風が過ぎ、様子を見ると、二人はお互いを相打つ状態で立っていた。
が、先に倒れ込んでいくのはドウムだった。
「ぐぅぅ……」
地面に倒れ込んだドウムはピクピクと体を痙攣させ、動けなくなってしまう。
「見事だった。ドウムよ、しかし、これも戦場の定め。死んでもらおう」
エルガが倒れたドウムに拳を振り上げる。
「待てっ!」
倒れているドウムにヒールとキュアーをかけ、俺はエルガの前に割って入った。
「お主は……、ドウムの師か?」
「あぁ、そうだ。ウチのドウムが世話になったな。すまんが、こいつに死なれちゃ困るんでね。これでも仕事熱心な門番なんだ」
「そうか、次は貴様が我の相手か?」
「あぁ、そうしてやりたいんだが、まずは……、長老、ドウムを安全な所へ頼む」
「はっ!」
長老はドウムを担ぎ、すぐにこの場を去って行った。
「それから……、ほら、これを飲みな!」
懐から瓶を取り出し、エルガに投げて渡す。
「中はポーションだ。安心して飲みな」
「ほぅ、あの潔い男の師だ。まさか毒は盛るまい」
エルガは一息で飲み干した。ドウムと闘った傷完全に回復し、闘気が溢れ出す。
「むぅ? これほどの薬とは……」
「オーギュストやワーケインは俺が倒した。だから手は抜いてくれるなよ?」
「なんだと? 六大将のあの二人を討ったのは貴様だというのか?」
エルガの目が驚きに見開く。
「あぁ、そうだ」
「そうか……、今日はついてる。強者と二度も闘えるとはな」
エルガの闘気が爆発するように立ちのぼる。
「ほぅ、大したものだ。それほどの闘気、そして戦場で鍛え抜かれた技。是非、我らがアルティメットハンターズに欲しい人材だ」
「ガッハッハッハ! 我に寝返れと言うのか! そんな戯れ言は拳を交えてから言え!」
エルガは足で地面を強烈に踏んだ。地面が割れ、地響きが鳴る。腰を落とし、左腕を前に、右腕を後ろに引き、構えをとった。
「行くぞっ!」
エルガは先ほどよりも明らかに速いスピードで俺に迫ってくるのであった。
33
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる