レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

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第6章 アナザージャパン編

第63話 妖獣発生

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「ちょっと、どういうこと? 説明してもらうからね!」

 墨田警察署の奥、取調室に通された俺を待っていたのは、お姉さんと二人きりの空間だ。

 んー、これが辛気くさい話じゃなかったら最高なんだけどな。

 目の前のお姉さんは目尻がさらに上がっている。

「えーと、何からお話しすればいいんでしょう?」

「人の話聞いてなかったの? あの常識外れの妖術のことよ!」

「妖術? ですか……」

 そう言われたものの、妖術というのを俺は知らない。俺が使っているのは異世界で覚えた魔法なのだ。

「いい? 妖術は使えたとしても一種類が普通なの。それをいくつもポンポンと使いまくって……、まさか野良妖術師にこんなのがいたなんてビックリよ!」

「え? 一種類? それだけなんですか?」

「はぁ~~、一種類でも目覚めたらそれを育てて実戦で使えるようになるまで五年はかかるのよ! だから、奴らも妖術師を集めるのは大変なはず……。今回、一網打尽に出来たのは大きいわ! って、今はその話じゃなくて、アナタの事よ!」

 バンっとデスクに平手を降ろし、お姉さんの顔がぐっと近づく。

 それとともに体勢が前のめりになり、その大きな胸の谷間が間近になった。

「ふむ、白ですか」

「え? ちょ、ちょっと何見てるのよ!」

 バンっと俺に平手を降ろし、お姉さんは顔を赤くして胸元を隠してしまった。うーん、残念。

 その時、緊急の出動命令が署全体を包んだ。

「緊急事態発生。江東区の湾岸、夢の島に第二級の妖獣が発生したもよう。今すぐ現場へ出動せよ。繰り返す……」

「た、大変だわ! 第二級って、もう災害じゃない!」

「妖獣? って一体何です?」

「ちょうどいいわ、アナタも来て!」

「え?」

 お姉さんが俺の腕を掴むと、グイッと引っ張られた。そのまま、俺の腕を脇にかかえ、パトカーに連れ込まれるのだった。



「時間がないから手短に言うわね。アナタを警察署の妖獣対策課に配属するわ。私と一緒に妖獣を倒すお仕事よ」

「あ、あの……、俺の意見は……」

「拒否は認められないわよ。もし嫌だと言えば、日本中の警察と自衛隊を敵に回すことになるわ。いいかしら?」

「いいかしら? って言うわりに強引なんですね」

「えぇ、仕方がないのよ。その代わり、給料も公務員らしからぬ歩合制でね。妖獣を倒せばそれだけ報酬が出るわ。一年も頑張れば、サラリーマンの生涯年収くらい稼げるわよ」

「お姉さんはどれくらい務めてるんですか?」

「私? 私はまだ、半年ってところ」

「半年? じゃあ……」

「えぇ、前職は雑誌のモデルやってたのよ。でもある日この力にめざめちゃって。いきなり警察が家に押しかけてくるんだもの! ビックリしたわよ」

「じゃあ、まだ新米って所なんですか?」

「えぇ。だけど、あなたとペアを組めば相当稼げそうだし、どう? 私と一緒にやってみない?」

「それって拒否権あるんですか?」

「当然ないわよ♪」

 にっこりと微笑むお姉さん。

「あ、そうだ。自己紹介がまだだったわね。私は如月きさらぎ いずみ よろしくね!」

「俺はソウっていいます。佐藤 壮。まさか、警察にお世話になるなんて想いもしませんでしたよ」

 あぁ、普通の仕事で出会いたかったな。なんだってこんなせわしない所で会ったんだろう。

「さ、そろそろ着くわよ。覚悟は決めておいて!」

「はい!」

 パトカーがズラリと並んだ所へ並ぶように急停止し、俺たちは外に出た。

 港に船がズラリと並んでいる所へ、さらにパトカーもズラリと並べ、それを盾に警察官達が身構えている。

 それどころか、自衛隊のヘリや攻撃機まで投入され、港は厳戒態勢だった。

 皆が固唾をのんで身構えていると、海に不自然な波が起こった。

 その波の発生地から巨大な頭部が現れる。

「な、なんだ、あれは!」

 警官が叫ぶ。

 その巨大な頭部は白く、蛇の形をしていた。

「あんな巨大な蛇、始めてみたなぁ」

 のん気につぶやくと、

「何言ってるのよ! 第二級なのよ! エネルギー量からみれば、災害級の強敵よ!」

 泉は体を震わせ、ジッと蛇から視線を外さない。

 そんな中、泉と俺の横に立ち止まる男がいた。

「やぁ、お嬢さん。君も倒しに来たのかい? もし良かったら僕とご一緒しないかい? 君にあの敵を倒した栄誉をプレゼントしてあげるよ」

 髪を七三に分けた高身長のイケメンだ。こんな所に高そうなスーツでやって来るなんて、よほど余裕なのか、ただのバカなのか。

「あいかわらず面倒くさい言い回しするのね。池田先輩。お生憎様だけど、私はこの男と組むことにしたの。これからは声をかけないで下さい」

 泉はキッパリと言い放った。

「どこのどいつだい? こんな男、見たことないよ。ま、入れ替わりの激しい仕事だ。すぐに入れ替わるよ」

 ムッカー! なんだこいつ! 初対面なのに嫌み言ってきやがって!

 泉が俺の前に手を出した。任せろということか?

「残念だけど、このソウは私が見てきた妖術師の中では一番強い男よ! そう簡単にやられはしないわ!」

「ふんっ、まぁいい。俺が先鋒で攻撃するからな。君はここで僕の強さを見ているがいい。ま、君の出番なんてないだろうけどね」

 くっ、一体なんなんだ? こいつ。

 池田はすぐに怪物目がけて走り出した。そして……、

「喰らえ、バケモノめ! 氷撃っ!」

 池田の周りにいくつもの氷の槍が現れた。そして、腕を振り下ろすと同時に発射され、大蛇に向かって飛んでいく。

 いくつもの氷柱が激突し、辺りには氷の粉塵が巻き起こる。

「どうだ! 僕の氷撃の威力は!」

 しかし、氷の粉塵の中から、さらに大型の氷柱がいくつも飛んできた。

「くっ、何だと!?」

 大型の氷柱はボートやパトカーに刺さっていき、爆発を巻き起こす。

「撤退だ! 一時撤退!」

 警察官達は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 が、池田はまだ残っていた。

「この僕が倒せないわけがないんだ! 行け! 氷撃! フルパワーだ!」

 先ほどよりも大きな氷柱を出し、攻撃する池田。

 だが……、

「キシャーーーーーーーー!!」

 大蛇は目を白く光らせ、口を大きく開けた。

 そして、さらに大きな氷柱をいくつも出し、攻撃してくるのだった。

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