レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野

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第9章 勇者RENの冒険

第130話 入場 1

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 暗い廊下の向こう側から明るい光が差し込んでくる。

 割れんばかりの歓声があがっている。俺は今、闘技場への花道へと入場した。

 大きなホールには多くの天使達が観客として席に着いていた。どれほどの数いるのか、全くわからない。それほどに大きな会場が埋め尽くされているのだ。恐らくだが、日本一有名なドーム4つ分はありそうなほどに広い。

「最初の代表者は、獣人族代表っ! REN!」

 花道を歩いているとリングアナが俺の紹介をした。白く光る人差し指を立て、拡声魔法で会場中に声が伝わっている。

 天井を見ると、白いスクリーンが8面ついており、俺の歩く姿が様々な方向から映し出されていた。

「さぁ、獣人族からの代表は勇者REN! 何と! 獣人族ではなく、彼は人間との情報が入っております。何でも親しかった代表者が急遽出場出来なくなった代わりに出場を決めたそうです。種族としては最弱と言われる人間ですが、このトーナメントで、果たしてどこまで通用するのか! 実況は私、リサと、解説は天使界の仙人ことローファン氏が来てくれました! さぁ、この異常事態、どう見ますか?」

「紹介に預かりましたローファンです。えー、天使界から地上を見て50000年。天使界ではレジェンド等と呼ばれておりますが、まだまだ現役の天使でやってます。さ、このRENですが、獣人族の神が認めた男ということですね。急遽、代表者が交代したこともあり、実はまだ情報が少なくてですね、今、私の部下に調べさせている途中です。情報が入り次第、お伝えしますのでご期待ください!」

 解説までご丁寧に用意されてるのか。全く、天使達ってのは暇なのか?

 俺の行き先に白い闘技場が現れた。その中央に立つと、四方から歓声が雨のように降り注いできた。

 果たして、俺を応援してくれる奴なんているのかわからんが、サービスくらいはしてやるか。

 俺は手を振りながら声援に答えるように礼をする。



「さぁ、次の代表者の入場です! オーク族代表! ブッピー!」

 ブッピー? なだかかわいい名前だな。

 そんなことを思っていたら、見えてきたのは大柄な黒いオークだった。

「さ、オーク族代表のブッピーの入場です! えー、彼はエルダーオークキングという称号持ち、さらにネームドの個体ということですね」

「はい、オークキングという種はどこに発生しても災害級の被害をもたらす、まさに厄災です。そのエルダー個体ということで年齢はおよそ5000歳。災害としての経験も豊富でとにかく壊すことには定評がありますね」

「えーと、ローファンさん。それってかなり天使族的にはマズくないですか?」

「リサはまだ若いからね。物事を造るのは創造だけではだめなんですよ。一旦、破壊することによって、より新しく、より強くまた世界は生まれ変わるのです! 決して天使達が手を抜いて世界を助けていないわけではありません」

「んー、なんだかよくわかりませんが、彼もまた世界に必要だということでしょう」

 ブッピーが入場してくる。身長は3メルを超える大柄な身体、そして、全身黒く硬そうな毛に覆われたブッピーは名前からは想像もつかないほどの存在感を放っていた。



「次の代表者は、ヴァンパイア族代表! ヴァンパイアロード、キュイジーヌ!」

 次は吸血鬼ヴァンパイアか、タキシードのような黒い服をピシッと着込んだ人が入場してきたな。

「さぁ、あの月夜城からヴァンパイアロードのキュイジーヌの参戦ですね! これは期待が高まりますね! ローファンさん!」

「えぇ、何と言っても、この月夜城という所ですが、まず、天使が辿り着いたことが歴史上、一度もありません! まさに神や天使の全く知らない世界というわけですね」

「ローファンさん、このキュイジーヌが暴れてしまったらどうなるんでしょう?」

「いやー、まぁ天使の半分はいなくなるでしょうね。それで追い出せればラッキーというところでしょう!」

「……あまり聞きたくない話でした」

 入場してきたのはタキシードを着てはいたが、胸が大きく張っており、女性だとわかった。顔つきも異様に整っており、長く伸ばした金髪が風に揺れ、光を浴びてキラキラと輝いている。

 妖しい女だ。こいつは俺も気を引き締め直さないとな。ザッツを救うまでは俺は負けられないんだ……。



「次の代表者は、砂漠から、ダークエルフ族、代表。マリーン!」

 白く長く輝く髪を揺らしながら入ってきたのはダークエルフの女だった。肩から長大な弓を提げ、歩いてくる。目尻の吊り上がった目はまさに狩人のごとく鋭い。だが、顔立ちが非常に整っており、驚くほどの美女だ。スレンダーではあるが、よく見れば、足は獣のような密度の高い筋肉である。

「さぁ、ゴンズー砂漠で生きるダークエルフ、またの名をデザートエルフと言います。このダークエルフの特徴はどういった所でしょうか? ローファンさん?」

「えぇ、まず、彼女達の住んでいる砂漠は生き物が少ないんですね。ですから遠くからあの弓で獲物を捉えるわけなんですが、異常なのはその発達した目と、正確に射る技術。そして土魔法を得意としています。目の視力はなんと30オーバー! 1キロ先の獲物を目で認識し、あの魔法弓で射るわけですね。砂漠一のハンターの実力、気になる所ですね」

「ローファンさん、因みに、天使達もメイン武器は弓ですが、我々と比べてどうなんでしょう?」

「あー、それ聞いちゃいます? はっきり言ってダークエルフの足下にも及びません。我々の弓は300メルが限界ですからね。しかもそこにある的に当てるなんてのは無理ですよ。ダークエルフの魔弓は1キロ先の獲物を狩るわけですから勝負にならないんですよね」

「……そうですか……」


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