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第9章 勇者RENの冒険
第129話 参戦
しおりを挟む俺は朝から教会の聖堂に一人立ち、神の遣いが来るのを待っていた。
しばらく瞑想をしながら待っていると、閉じた瞼でも分かるほどに目の前の景色が明るく光る。
「あなたがこの獣人の国を代表する戦士ですか」
音によって伝わる声ではなく、心に直接響いてくる声だった。
「はい。私が代表の戦士です」
後方で領主であるドルツや、娘のリンが見守っている中、光の中から人型の者が現れた。その背中には大きく白い翼がついており、まさに天使と言った見た目の少女が立っていた。
「私はアナタを迎えに来ました。さぁ、どうぞ。この光の中へお進み下さい」
俺はザッツが襲われた後のことを思い出しつつ、光の中へ歩を進めるのであった。
***
倒れていたザッツを館に運び込み、俺は全力で治療に当たった。だが、意識が朦朧としているザッツを治すことは出来なかった。
まさか、レベル4000オーバーのヒールもキュアーも効かないとは……。
何度かけてみても、上位魔法を試してみても結果は変わらなかった。
「REN様……、私にかかっているのは呪いだとあの賊は言っておりました……。魔法で治すことは出来ないとも……」
ザッツは震える声を絞り出し、俺に伝えてくる。
「待っていろ。俺が必ず治してやる」
俺が席を立とうとすると、ザッツは俺の腕を掴んだ。
「REN様。どうか、お嬢様を……お嬢様をお守り下さい……」
絞り出すように声を出すと、ザッツはまた眠りについた。
ザッツは常に真っ青な顔つきで、玉のような汗をかきつつ、うなされるように寝ている。
その姿が俺に決意をさせた。
領主であるドルツは、俺に全てを打ち明けてくれた。もちろん、俺に代表として出て欲しいと思ったからであろう。だが、そんな打算を抜きにしても、リンを代表にして戦わせるつもりなど、俺には毛頭なかった。
「俺が代表として戦います。そして、必ずやザッツにかけられた呪いを……」
「ありがとう……。頼む」
領主であるドルツは涙を隠そうともせずに泣いていた。それだけザッツとの絆は深いのだろう。
俺もザッツとは知り合って1週間も経っていないのだが、師として彼を鍛えたのは俺なのだ。もし、俺が彼を鍛えていなければ……、彼はこうして病床に伏せていなかったかもしれないのだ。
怒りに握りこぶしが震えてくる。
許せない。ザッツを呪った男も……、そして、こんな茶番を用意した神も。
俺は復讐を胸に誓い、代表の戦士として戦う事に決めたのだった。
***
扉の先は真っ白な世界だった。
「こ、ここは……、雲の上なのか?」
見渡す限りの白い世界。山のように盛り上がってる所も真っ白になっており、雲の塊だ。俺の立ってい所は平坦になっており、土の上に立っているようなフカフカな感じである。濃密に白い水蒸気に魔力がかかっており、立つことができるようになっているのだった。
「ふむ、ここで神の試練、ゴッズトーナメントが行われるのか」
「えぇ、ではさっそく神の神殿へご案内いたします。ついてきてください」
天使は抑揚の平坦な、感情の籠もっていない声で俺に告げてくる。
天使の後について歩いて行くと、やがて神殿が見えてきた。白い雲の上に立つ神殿も真っ白な色に染まっていた。神殿に近づくとその大きさに驚く。
高さはビルの5,6階建てに相当するだろう。荘厳な柱がいくつも立っており、近づいてみたがその材質はよく分からなかった。コンクリートでもなければ、レンガでもない。不思議な材質であった。
天使は俺が神殿を注視していても気にした風もない。黙って神殿の奥へと進んでいく。
そして、入り口から少し進むと大きな聖堂に出た。聖堂には幾人もの天使達が立って並んでおり、皆、壇の上を向いて目を閉じていた。
奥のほうには小さな3段ほどの階段を上がる壇があった。そして、その中心には白い顎髭を伸ばした白髪の老人が立っていた。この男には天使のような翼はなく、白い修道服を着ている。そして、頭には動物の耳らしきものがついていた。白い毛に覆われた大きな耳だった。
「よくぞ参られた。獣人の国の代表者よ」
その男の声は口を開くことなく、俺の心に直接語りかけられた。
「あぁ、アナタが神、というわけか?」
「左様です。この度のゴッズトーナメントへの参加をまずは感謝します」
男は祈るように手を一指互いに組み合わせ、目を瞑って俺に礼をした。
俺は神の丁寧な態度に戸惑った。この神のせいでザッツは呪いをかけられるハメになってしまったのだ。目の前にいる神が俺の味方なのか、敵なのか。その判断がまだつかないのだ。
「悩んでいらっしゃいますね、旅の人よ。どうか、警戒を解き、私の話を聞いて欲しいのです。その上で私が信用に足るのか判断してはくれないでしょうか?」
「うむ、そこまで言うのなら……」
どの道、俺には情報が少なすぎる。ここが天上界であり、神が複数いるのならば、何人かの神から情報を集めたかったのだ。
「まず、私はこのゴッズトーナメントの開催には反対の立場でした」
目の前の神から驚きの言葉が飛び出した。
「反対だと?」
「そうです。だが、反対派の神はごく少数でした。賛成はの意見を止めることが出来ず、貴方たちに迷惑をおかけしていることは充分に承知しています。だからこそ、アナタに勝って欲しいのです」
神は淡々と神界の事情を話し始めるのであった。
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