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雲の向こうはいつも青空
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しおりを挟むぎゅっと抱き締められれば、懐かしく香るフェロモンに頭がくらくらする。潤む瞳で見つめれば、僕に負けないぐらいの熱を孕んだ瞳に射抜かれる。
「キス、していい?」
「……うん」
ちょっぴり照れ臭くなりながら頷けば、何度も降ってくる口付け。次第に深くなるそれに、久しぶりの僕はいっぱいいっぱいで、声が漏れるのをどうにもできなかった。
唇を離せば、お互いに照れ笑い。まるで今から初めてを体験するみたい。ヒート中だというのにこんなにも心穏やかなのは、きっと翠の愛に包まれているから。
「髪、伸びたね」
「っ、」
「でも、髪色は変わんない」
翠によく似合う、大好きなホワイトブロンド。元々肩につくぐらいだった髪は、伸びてロングヘアになっている。手を伸ばしてさらさらの髪を撫でながらそう言うと、翠はぐしゃっと顔を歪めた。僕の手を捕まえた翠が指先に口付ける。
「切ったら、もう会えなくなると思って切れなかった」
「……え、」
「ずっと、この髪色にするって言ったでしょ。陽が一目で俺だって分かるって言ったのに、他の色にできるわけないじゃん」
確かにそんな話もしたけれど。そんな願掛けをするぐらい、僕のことを思ってくれていたんだ。世界中の人から羨望の視線を送られるアルファの王様なのに、ただの平凡なベータの何気ない一言に囚われて、その影をひたすら追い求めてしまうなんて。
心の底からこの男が愛おしいと叫んでいる。発情の熱がぶり返す。愛する目の前の男が欲しくて堪らない。
「陽がいないと駄目なんだよ。アルファとかアイドルとか、そんな立場なんて意味を持たなくなるぐらい、俺はただの無力な男に成り下がるんだ」
「……翠」
眉を下げて弱気にそう言う翠は、以前にも増して人間らしいと思う。あの頃の僕は自分とは釣り合わないって壁を作ってばかりだったけれど、同じだけの愛を抱えていると分かったらそんな壁も木っ端微塵に吹き飛んでしまった。
雲の上の存在は、僕と同じ。
恋に悩むひとりの男だ。
アルファだとかアイドルだとか、僕らの愛の前にはどうでもいい。そういうのを全部抜きにして、ただひたすらに翠のことが愛おしい。
「もっと触れてもいい? 陽を抱きたい」
「ッ、」
ストレートな物言いにドキンと胸が跳ねる。時に男前で、時々選択肢を間違えちゃって。壁を壊したからこそ、知る一面。世界中を虜にする男なのに、実はミスターパーフェクトとは言い難い。そんな翠だから、全部許して愛せるんだ。
アルファだから常に完璧じゃないといけないって、誰が決めたんだ。全てを曝け出して、弱気な姿も見せてくれる方が信頼されている気がして嬉しいに決まってる。
僕はどんな翠も受け止めるって、彼を愛することを諦めないって決めたんだ。
「翠、」
「ん?」
「好きだよ」
「うん、俺も好き」
「……僕が好きって、もっといっぱい言って」
愛してるという証明を、自らの口で。もう不安にならないぐらい、たくさん刻みつけてほしい。まだまだ足りないから。手を伸ばして、返事の代わりに贅沢な我儘を言えば、ガバッと押し倒される。
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