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雲の向こうはいつも青空
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ぼたぼたと大粒の涙が溢れてくる。情けない。こんな風に翠を責めたくなかったのに。悪者にしたいわけじゃなかったのに。ずっと溜め込んでいたものは止めどなく溢れてくる。
でも、しょうがないじゃないか。貴方はアイドルで、とびきり優秀なアルファ。何も持ち合わせていない、こんな僕なんかと同じ未来を描けるようなひとじゃないのだから。貴方と一緒になることを許されるはずがないって、そう思って当然だろう。世界から翠を奪うなんて、そんな覚悟、ただのベータは持ち合わせていないよ。
黙って僕の言葉を聞いていた翠が唇を噛み締めたまま、冷たくなってしまった手を取る。じんわりと翠の体温が伝わってきて、その優しい温もりにまた涙が零れた。
「ごめん」
「…………」
「ごめんね、陽」
つーっと翠の頬を流れていく一筋の涙。その涙の意味は何だろうか。震えた声で放たれる謝罪に胸の奥が軋む。僕は謝ってほしいわけじゃなかったのに。
「陽を好きだなんて、当たり前すぎたんだ」
「…………」
「言わなくても分かる、伝わってるだろうって……。そう、勝手に思い込んでいた俺が悪い」
「…………」
「陽を一人でこんなに苦しませてごめん」
翠だけが悪いわけじゃない。本当は僕だって聞けばよかったんだ。僕のこと、どう思ってるの? って。
だけど、臆病者は気持ちを聞くことが何よりも怖くて、翠が僕を好きじゃないって分かったら心が壊れると思ったから、勇気が出せなかったんだ。
今なら、まだ間に合うだろうか。握り締められた手に力を込める。恐る恐る口を開いて、確かめる。
「……ほんとう?」
「うん?」
「……僕のこと、好きってほんと?」
「っ、うん。愛してるよ。陽しかいらないぐらい、ずっと陽だけを想ってる」
必死な顔で、愛の言葉を紡ぐ翠に心が満たされる。やっと聞けた。それだけで十分。さっきとは意味の違う熱い涙が流れていく。二文字でよかったのに、最上級の愛を告げる言葉が嬉しくて堪らない。
「僕じゃない人と、番になってない?」
「俺の番は陽だけだよ」
ふわふわとした心地の中、めんどくさい彼女みたいに僕が確かめるのを、翠は落ち着いた声で答えていく。
「翠なら選び放題なのに、」
「陽じゃなきゃ駄目なんだ。ずっと傍にいてほしいのは、陽だけだから」
「……本当に、いいの?」
「陽がこんな駄目な俺を許してくれるなら、戻ってきてほしい。また一から始めさせてくれないかな」
「…………僕を、翠の唯一にしてくれる?」
「っ、もちろん。俺の全てをあげるから、俺だけの陽になってほしい」
「……うん、翠のものになりたい」
もう、あのマネージャーさんから何を言われたって平気。僕には翠の言葉というお守りがあるから。ごめんなさい、翠から離れてあげられなくて。そう思うけれど、運命には到底抗えそうになかった。
今はまだ翠を幸せにする自信はないけれど、ふたりで一緒に幸せになりたいと思う。
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