僕が死んだあと、あなたは悲しんでくれる?

いちみやりょう

文字の大きさ
12 / 43

11

しおりを挟む
「なんて、言った?」

笹原が聞き返すので、僕は繰り返した。

「だから、僕はあと半年くらいしか生きられないんだ。実際のところ、余命がそれってだけで、あと半年が保証されているわけでも、限定されているわけでもないんだけど」
「なんで……、なんでそんなに軽く言うんだよ」

笹原は悲壮な顔をしてそう呟いた。

「余命宣告されてからも半年経ってるし、その間にいろいろあったから。ずっと絶望しながら生きてきたから、慣れてるしね」
「そんなのに慣れないでくれよ」
「はは。うん、そうだね。まぁでも、今は死ぬのは怖くないんだ。待っててくれる人がいるし、それに、この世界に生きてたって証拠も残せたし。そう思えたのは、やっぱり笹原のおかげだから。伝えておきたかったんだ」
「待っててくれてる人って、千景君にマーキングしたアルファ?」
「うん。そうだよ」

にっこりと笑って答えると、笹原は複雑そうな顔で僕を見た。
けれど、その後何も言われることはなかった。

学校から帰ろうと、門に向かうと見覚えのある派手な車が1台止まっていた。

「千景。学校お疲れさま。迎えにきたわよ」
「母さん。随分久しぶりだね。どうしたの? いきなり。僕を迎えに来るなんて、らしくないよ」
「あら、そんなことないわよ。なんてったって、私はあなたの母親ですもの」

その笑顔が気持ち悪くて、僕は顔を歪めた。
母親は僕のその表情を良い意味に捉えたのか嬉しそうに、まるで感動の場面のように抱き寄せようとしてきた。
それを避けるとあからさまにムッとした顔をして、それを取り繕うようにまた笑顔になる。

母親の考えていることが手に取るようにわかった。

「母さん。新聞かニュースで僕を見たんだ?」
「なんのこと?」

とぼけるように言う母親に心底腹が立つ。
今目の前にいるのは、たった1人の息子が身を削って作ったものを、金としか見ることができない化け物だ。
こんな人が自分の母親だなんて腹が立つ。
こんな人の愛を欲しがってた自分が悔しい。

「母さん、無駄だよ。僕の稼いだお金は、必要な分以外は全額寄付してる。著作権に関しても僕の本を出してくれた出版社に買い取ってもらってるから、母さんが今更そんな態度で僕に接したところで、なんのおこぼれもないよ」
「何よそれ! なんでそんな勝手な事をするの!? あなたをここまで育てるために一体いくら使ったと思ってるの!!?」
「……小学校を卒業するまでの12年間のお金は、確かにあなた方が出したかもしれない。でもそれからは僕は自分で稼いだお金で生きてた。12歳までの費用はむしろあなた方から振るわれた暴力の慰謝料で相殺されるくらいだ」

母親の体がわなわなと震える。

「親が子に振るう暴力なんて、躾でしょう! 生意気言ってないで、早く寄付を取り消してきなさい!!」

耳をつんざくような叫び声にうんざりしながら僕は答えた。

「取り消しはできません。僕の寄付したお金はすでに色々なところで役に立っているはずですから」
「御託は良いから取り消しなさい!! クソガキ!! 親の言う事を聞け!!」

騒ぎまくる母親は、誰かが呼んだ警察が連行して行った。
髪を振り乱して、訳のわからない事を叫ぶ母親の姿を思い出し、僕はただ悲しくなった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った

こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。

オメガなのにムキムキに成長したんだが?

未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。 なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。 お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。 発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。 ※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。 同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

処理中です...