僕が死んだあと、あなたは悲しんでくれる?

いちみやりょう

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家に帰ると、久々に体は熱っぽく、ヒートになりかけていることに気がついた。

「ぁ……ふ、ん」

母親のことで悲しんでいる暇などなく、僕の体はただアルファを、フェルレントを欲する。
ふわりふわりとフェルレントの匂いが部屋に充満し始めて、そこにいる事を実感した。

「あ、フェルレント……んんっ、ぁあ」
「愛しい子。私の名を呼んでくれるなんて嬉しいな」
「あぁっ!! フェルレントっ、んんぁ、来てくれたっ……入れてぇ」
「随分とせっかちだね。君と話すのは久々で、私はまだ千景の体を堪能していないというのに」

ヌルリと二の腕を舐め上げられて、「ひぇ」と色気のない声が出た。

「ああ……、やはり千景は甘い。君が私を認識しない間も、何度舐めようと思ったことか」
「そんなっ、んんっぁ」

誰が聞いてもお巡りさん案件の変態一色の言動は、とんでもない美声によって、気持ち悪さを失うどころか、さらに生々しく響いてくる。
それも僕の腰には大打撃を与えた。

「も……はやくぅっ、んっフェル、ぁ」
「愛しい子、もう少しだけ我慢しておくれ」

フェルレントは僕のお願いを後回しにして、僕の体を舐めまわして僕は頭が沸騰しそうなほど体がうずいた。

ガチャ

「っ!?」

玄関のドアが開く音が聞こえた。
この家には両親は帰ってこないとタカを括って居たのに、もしかして母親が警察から解放された後戻ってきたのだろうか。
フェルレントはその音に気がついていないはずないのに、僕の体を全く離さない。

「フェルレント、ちょ、んんっ……ちょっ」

ピチャピチャと卑猥な水音が響き渡ってさらに羞恥が湧き上がる。

『千景、いるのか』
「と、さん?」

扉の向こうには父親がいるらしい。
僕は必死で、目の前の見ることのできないフェルレントに退いてもらおうと叩いた。

「開けるぞ」
「あ、まって」

ガチャとドアが開かれて、父親から見れば1人で乱れている僕に、驚いた顔をした。

「千景、お前……ふ、はは。そうか、自分で稼いでるってそう言うことか。オメガのフェロモンで誰彼構わず誘って金をせしめていたんだな」
「な、に……?」
「まぁ丁度いい。今丁度イラついていたんだ。俺の相手もしてくれよ」
「は、は? 父さん?」

頭が全然追い付かず父親の言ってる意味を理解しかねていると、父親が一歩足を踏み出した。

「妻も失い、警察沙汰になったことで会社でも散々な扱いだ……。なぁ、千景。責任とってくれるよな?」
「や、やだ! こないで、来ないでよ」

その時、父親の体が突然くの字形になり廊下の壁にバコッとぶつかって下に落ちた。

「え」
「え?」

父親も僕も困惑の声を上げると、フェルレントが笑った。

「私の番に手を出そうなど、命知らずにも程がある」
「ふぇ、フェルレントがやったの!?」
「なんだい。ダメだったのか?」
「ううん。助けてくれてありがとう」

見えないフェルレントに触れ、そう言うと、フェルレントは気をよくしたのか、先ほどまでの行為を再開しようとした。

「な、なんだ! お前誰と話している」

父親は這いつくばりながら僕を怯えた目で見て叫んだ。

「誰って、父さんにはフェルレントの声が聞こえないの?」
「お前は俺をバカにしているのか? お前と俺以外の声なんて聞こえないだろう!」
「そっか。僕だけにしか聞こえないんだ」

なんだか嬉しくてそう呟くと、フェルレントがギュッと抱きしめてきた。

「愛しい子、嬉しそうな顔をして……。本当に千景は愛らしい」
「ん」

頬を撫で、おそらくキスを落とされ声が漏れる。

「フェルレント、やめて……あの人に見られたくない」

そう頼むと、フェルレントは低く唸り声を上げた。

「おい……片付けろ」

フェルレントが低くそう言った瞬間、父親は見えない何かに引きずられ部屋を出て行った。

バタリと玄関のドアが閉まったのが聞こえた後は家の中に静寂が訪れた。
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