僕が死んだあと、あなたは悲しんでくれる?

いちみやりょう

文字の大きさ
21 / 43

19

しおりを挟む
俺はそれから自分自身が持っていた変なプライドと自信を全て失った。
自分が心の底から千景を愛していたことにも気がつかずに、傷つけることしかできなかったから。

千景と一緒に、いつか胸を張って仕事ができるようにと、目指した会社は出版社で、そのための大学にも合格していた。もうどれだけ頑張った所で千景に会えることなんてないと思うと、何に対してもやる気が出なかった。

「まだ落ち込んでるんだ?」
「和樹」

同じ大学に進んだ和樹に、そんなふうに馬鹿にされても俺は言い返すこともできなかった。

「和樹……。元気そうでよかったよ」
「そりゃあ元気だよ。僕は生まれてこの方風邪だって引いたことないし」

ニコニコと、大学生活をエンジョイしている雰囲気の和樹は、とても宣告された余命をすぎて生きている人間には見えない。

「……は?」
「あ、いや、嘘嘘。間違っちゃった」

和樹が自分の失言に気がついて、気まずげに目をそらした。

「もしかして、余命ってのも嘘だったのか」
「だ、だって、そう言ったら付き合ってくれると思ったんだもん。あの頃、青砥と付き合ってた千景は邪魔だったしさ、何とかして僕に振り向かせたかったんだ」

殊勝に話す様は、少し前の俺ならかわいそうに見えて、また騙されていたかもしれない。けれど、今の俺にはただ計算高い化けぎつねのようにしか見えなかった。

「お前……やっていいことと悪いことがあるのが分からないのか」
「もちろん分かってるよ。でも、僕がいくら適当なこと言ったって青砥がちゃんと断ってたら、君たちは付き合ったままだったんだから、悪いのは青砥でしょ?」

悪びれない様でそう言われ、グサグサと和樹の言葉が突き刺さる。
和樹の言う通りなのは間違いない。
俺がバカだったのが全て悪い。
けれど、目の前で開き直る和樹にイライラが抑えられなかった。

「……っ、くずやろう。いっときでもお前と付き合ってたなんて反吐が出る」
「それは僕だって同じだよ。君の評判がいいから付き合ったってのに、君にはまるでいいところなんてなかったんだから」

何も言い返すことはできなかった。
本当にそうだ。
俺は見かけだけ。
運良く容姿は人より良かった。人当たりも良くすれば自然と人は寄ってきた。
本当にそれだけだった。
けれど俺には何もいいところは無かったのに、千景は俺を好きだと言ってくれた。
俺といる時は楽しそうにしてくれた。

本当に何もかも、気がつくには遅すぎて、今更すぎて、辛かった。

大学4年間、俺はただ無気力に生きた。
勉強だけをして、根暗だとか気持ち悪いとか周りから言われても気にせずに過ごし、夢だった出版社に就職した。

ここまでずっと千景が最後に書いた本を読まずにきた。

俺に対する恨み辛みが、書いてあるんじゃないかって怖かった。

けれど、就職先が決まったのを機に、持て余した時間でそれをゆっくり読んでみることにした。

ぐっと引き込まれる世界観は、今までの作品と同じ。
けれど、今までの明るいのに、どこか物悲しい雰囲気は鳴りを潜め、明るく快活でハッピーで仕方ないというような内容だった。とても、俺のイメージする千景の晩年の作品とは思えないような作品だった。

しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った

こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。

オメガなのにムキムキに成長したんだが?

未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。 なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。 お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。 発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。 ※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。 同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

処理中です...